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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
一話『冬底の滝火』
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 ミラを床に横たえた。

 男はリーヴァレイスへと歩み寄る。

「全員下がってな」

「何すんの?」

「魔宮を解体する。凍岳域が拡大してるのも、コイツが地中から熱を奪ってるのが原因だ」

「そ、そっか」

 剣を床に突き立てた。

 男はその柄頭に手を乗せて瞑目する。

 ライアスは、ミラを抱えて距離を取った。

 ルークだけは、動かず彼の背中を見守る。

「傭兵さん。一つ、良いでしょうか?」

「何だい」

 男が振り向いた。

「貴方は何者ですか?」

「…………」

「魔兵器による魔宮なんて尋常ではありません。凍岳域の拡大だって、本来ならレギューム総括部が対処する大仕事です」

「……ああ」

「解体作業も含めた任務を、失礼ですが一傭兵に依頼するとは思えない。よほどレギュームの……世界の信頼が無くては務まりません」

「そりゃ、ごもっとも」

 ルークが目を眇める。

 そこには疑念ではなく確信があった。

 問を口にしたのは、胸中に残る一抹の疑念を解消するためである。

 レギュームの有する自然。

 それらは絶妙な均衡を保ち、それぞれが機能している。乱れれば、島の生命の存亡にすら関わる大事なのだ。

 総括部――レギュームとして世界と渡り合う機関が対応するはずだが、人手が足りないとしても傭兵一人に任せるわけがない。

 そして。

 リーヴァレイスの処理。

 そんな破格な依頼を、只人には荷が重すぎる。

 その違和感がルークを答えに導いた。

 男がくすり、と笑う。

「俺はしがない傭兵だった」

「……だった(・・・)?」

「世の中じゃ死人扱いなんでね、正体も何も無いのさ」

「……やっぱり」

 ルークがうなずいた。

 ライアスは話が分からず当惑した。

 何事か、二人の間だけで情報が共有されている。

「ちょっと待てよ」

「はい」

「つまり、その……誰なんだ、その傭兵」

 ルークが手で彼を示す。

「ミラさんと君の目的を思い出して」

「え……そりゃ、剣聖の亡霊に会うこと?」

「ほら、ここに」

 ライアスの視線が移動する。

 改めて、男を見た。

 目にも眩しい銀髪、片手に奇妙な拵えの剣、そして道中の修羅場を切り抜けた強烈な剣技。それらの情報を順に並べて――ライアスはあっと声を上げる。

 男は、その意中を察して苦笑する。

「じゃあ、アンタが――」

「始めるぞ」

 剣の柄頭を案じた。

 ふたたび目を瞑る。

 男の総身が白銀に染まった。神々しい魔力を帯びて、周囲を明々と照らす。

 それは、触れた剣全体にも伝播した。

 柄から切先まで銀光に満ちる。

「やるぞ――『レイン』」

 その声に剣が応える。

 魔宮全体が震動し、頭上から欠片が落ちた。リーヴァレイスの剣身までもが発光する。空間が蠕動するような感覚に襲われ、ルークたちはその場に膝を突いた。

 ライアスはふたたび驚愕する。

 どうして気づかなかったのか。

 銀髪と目にも留まらない剣速、自身よりも力の強く大きな相手の攻撃すら流麗に捌いてみせた姿は、まだ耳にも鮮やかなほど近くに誕生して語られている存在だ。

 何より、あの充溢する魔力。

 ライアスはミラの体を揺する。

「ミラ、ミラ!」

「ん…………」

「亡霊じゃなかった!亡霊じゃなかったぞ!」

「……んー……?」

 ふと。

 ミラが薄く瞼を開く。

 銀に輝く男の背を瞳で捉えた。

「あ……星、だあ……」

 手を伸ばす。

 その先が、光に包まれた。







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