小話「亜人種の革命」起
起・承・転・結の展開になります。
星狩り――隕石を斬った剣聖の偉業。
その活躍から八年後である。
世界が震撼する事件が起きた。
世界的な亜人種の人権確保を希求した防衛大臣リンフィアを筆頭とする亜人種革命派の要望を、レギュームが受理したのだった。
彼らの弛まぬ努力を認め、数多くの国も賛同している。
だが。
亜人種を虐げてきた文化。
彼らを奴隷として使役し、国力を支える労力としてきた国々から、苛烈な反感を買う事態となった。
その最中。
革命派のリンフィアを暗殺を企む者がいる。
そんな不穏な噂が流れた。
獣国の国境付近。
雨の下、とある平屋の中で事は起こっていた。
それは。
「護衛役、頼みましたよ」
「君は必ず守るよ」
「ええ、我々も死力を尽くします」
人目を忍んだ密会。
そこに選ばれた平屋の中で、獣国の革命派筆頭のリンフィアと、その護衛として雇われた男リクルとシュバルツが集っていた。
亜人種の人権認定。
その宣言を行う式典が催される。
開催地は帝国の首都の広場。
ただ、その道中に不穏な武装勢力の目撃情報などがあり、無視できないとして革命派の象徴にして、宣言式を直接執り行うリンフィアは大事を取って別行動に移る。
これにより襲撃の手を避ける。
その算段だった。
「懐かしい面子だね」
「前回とは真逆の旅程ですが」
「いや、同じだよ」
リンフィアがきっぱりと応える。
二人は小首を傾げた。
重なる点は殆ど無い。――面子でさえ、一人少ないというのに。
ふと。
シュバルツが目を見開く。
「まさか」
「ええ、そろそろですね」
リンフィアが笑みを深める。
そのとき。
平屋の戸が叩かれた。
「もし」
「…………!」
「この雨で難儀している」
「ほら」
「一晩だけ軒を借りられんだろうか」
リンフィアがすっと立ち上がる。
戸口まで駆け寄り、ゆっくりと戸を開いた。
平屋を訪ねた声の主の正体があらわになる。
リクルは開いた口が塞がらなかった。
シュバルツは沈黙している。
「た、タガネさん!?」
「ほう、なるほど」
「ほら、一緒でしょう?」
三者三様の反応に。
戸を叩いた声の主は飄然と笑う。
「よろしく」
剣聖タガネが、そこに立っていた。




