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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
七話「忘れ敵」中央
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 連合国南部に雪が降る。

 上空の極光が出現し、地上を七色に照らす。

 激突していた北軍と南軍は、手を止めて頭上の風景に息を呑んだ。星々(ほしぼし)の輝きがいつもより鮮明だった。

 数呼吸の間隔で。

 夜空を馳せる流星が(きら)めく。

 天頂にあった満月が極光に掻き消されていた。

 あたかも朔月(さくげつ)の夜ごとく星の光は強い。

 星空を見上げて。

 戦場から風以外の音が消えた。

 だからこそ、聞こえる。

「……地鳴り?」

 遠くから近づく地響き。

 断続的に発生し、より大きくなる震動に敵味方関係なく、その正体を探って周囲一帯を見回した。

 そして。

 誰かが南の方角を指し示した。

「お、おい……あれ!」

 たった一声に全視線が束ねられる。

 高い防壁の内側、南軍の街の上に流星が墜ちた。一条の線を描いて街に降り立ち、その一瞬の後に厖大な光と熱を炸裂させる。

 衝撃波が地殻を抉る。

 防壁が内側から爆ぜて、南の土地が灰燼(かいじん)に帰した。

 爆風に体を引き千切られた者たちが塵芥も同然に空へと巻き上げられ、夜空へ(まば)らに散りばめられた影として躍る。

 噴煙さながらに吹き上がる土埃。

 余震はまだ止まず、南軍の街の景観は土煙で遮蔽されて見えない。

 少し経って、地上に寸断された人体が降り注ぐ。生きている者も大地に叩きつけられて、潰れた果物のように血を散らす。

 助かった者も少なからずいた。

 それでも、わずかに余命が先延ばされただけ。

 その中の一人の兵士、地に伏せたまま面を上げた。

 そこに。

「な、何だアイツ……」

 前足を揃えて座る巨獣がいた。

 真紅の瞳が兵士に穏やかな眼差しを注ぐ。

 豊かな銀毛の毛先は極光のように七色に変遷する燐光を宿している。両側に羊のように巻いた角を掲げた頭は、猫とも犬ともつかない顔の形状をしていた。

 その背で魚類のようなヒレが波打つ。

 毛筆のように膨らんだ尾は、先端に向かうにつれて群青色が深まり、その中に光の粒を明滅させた不思議な模様をしていた。

 獣らしからぬ美貌。

 兵士の感想はその一言に尽きた。

「な、何て美しい……!」

 星空模様の尾で地面を撫でて。

 獣が口を開いた。

 吐息すら淡く七色に微光する。

「これが、ケティル――」

 兵士は眼前の獣への感嘆に溺れて。

 無造作に下ろされた前足の下敷きとなった。

 巨獣が北の空を見る。

 彼方には、朧に影を揺らす塔があった。

『グルルルルっ』

 紅の双眸が細められた。






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