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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
幕間
1070/1102

休題『剣爵領地関係者(番外編③)』



『三種の神技』


 本来は型に規則性など無い剣聖の技を倣い、剣術へと昇華した弟子マヤが、奥義として定めた技の呼称。

 それ以来、エヴァレス流剣術は剣爵家が必ず継承し、習得すべき剣術として伝えられることになる。実際には他の者も習えば使用は可能ではあるが、この三つの奥義だけは剣聖の魔力が無いと実行不可能だった。

 全ては強化『神速』の発動が前提だが、『神速』自体の習得がまた更に難易度を上げている。

 奥義以外にも『睦月』、『如月』、『弥生』、『卯月』、『皐月』、『水無月』、『文月』、『刃月』、『流月』、『死喪月』、『師走の陣』など十一種ある。


 奥義『逆夢』。

 強化『神速』発動中に行う攻撃の受け流しと反撃。

 当主によって特色が出る物で、ある者は混沌の攻撃を跳ね返し、ある者は魔法を掻き消す。


 奥義『神無突』

 強化『神速』状態で放つ突き技。

 主に脚部と肩に魔力を集中させた突きで、空間自体を刳り抜いて特殊な現象が起きることも屡々ある。

 そのため、何者にも直撃自体が命取り。


 奥義『百鬼夜行』

 強化『神速』状態で放つ剣による百撃。

 本来なら百回必要な動作が物理法則に因われない領域まで加速した状態で放たれたことで、ほとんど同時に放たれた結果という現実との矛盾を起こし、腕の一振りで百の斬撃が生じる。

 事実上、剣聖以外に不可能だった極地。

 イズナのみが不完全ながら再現できた。





――――――――――――――――――――――――――




『アマルレア・ヒューグサス』


 ヒューグサス家の末裔。

 タガネが領地へと連れ帰った第一例、最高の剣の一人で。


 傭兵時代のタガネと縁があったヒューグサス家の令嬢が出奔し、星狩り前に我が子を託す旨を手紙で言い遺していたため、数年がかりの調査が結実し、タガネに引き取られる。

 その後はマリアに弟子入りし、騎士として四年訓練を積んだ後に、マリアの剣爵近衛団団長への推薦を蹴って旅に出る。

 各地で『灯火の騎士』として数多くの善行、功績を成して人々から敬愛される存在となった。

 マダリとの決闘後は彼と意気投合し、その後に夫婦になって子供を設ける。騎士学校卒業後にヒューグサスの名は継いでおり、家名の無いマダリの婿入りという形となり、新たな『橋守の一族』としてヒューグサスの名を伝えていく。


 孫のジブリールに退屈なら剣爵家を訪ねるよう伝えてタガネを大いに困らせた張本人である。





  ×  ×  ×

 





『マダリ』


 義賊『火猿』の最後の棟梁。

 タガネが生涯強く信頼し、ベルソートも実力と人柄そのものを高く評価していた。

 元は野盗だったが、父の代で義賊へと方針転換した『火猿』と共に魔神教団の策謀によって魔獣の生贄にされそうになる。

 辛うじて難を逃れた後、マリア救出に訪れたタガネやベルソートと共に、生き残った仲間を集結させて共闘し、見事に勝利する。

 その後は『火猿』を継ぐ者として活動し、星狩り数年後に棟梁の座に就いた。

 後年はアマルレアと激闘を繰り広げた後に夫婦になり、以降も秘密裏に『火猿』として活動した。

 晩年に大討伐戦が決行されるも、全員を返り討ちにした挙げ句に月を背に敗走する者たちへ向けて山頂で踊った行為が伝説として語り継がれる。

 だが、自身の子にはそれを伝えず係らせなかったので、後に孫娘ジブリールの手によって『火猿』は全滅させられた。


 素で超人的な身体能力と弓の腕を有する。

 縄張に侵攻した帝国の双子の『弓帝』と兵士を一人で相手取って撃退し、大量発生した魔獣の群に対して囮になって三日三晩逃走して生還する実力から各国から警戒される。

 タガネが引き受けられない分のレギューム総括部の難題もこなすほどに作戦遂行力があった。 

 


 

 





 ×  ×  ×




『エルノート・アルティネ・エヲトラル・エウソラス』


 セルメヤス王国の初の女王。

 生きている間はベルソートが警戒していた人物で、第二の『大魔法使い』と密やかに呼ばれていた。


 古い血統の一つであるセルメヤス王家の落胤で、長く王都外れで革命軍と共に潜んで暮らしていたが、襲撃を受けた際に修行と称して旅に出される。

 旅の途中でタガネと出会い、互いに偽名のまま一年以上の旅路を共に過ごす。市井での生き方や価値観などに強い影響を与えられると同時に、父を知らない自身が親の姿と重ねて慕った。

 タガネと別れた後も旅を暫し続行し、星狩り関連で国を失った騎士や優秀な参謀、大陸を彷徨していた幻獣を従えて革命軍と共に国を奪還し、王位に就いた。

 仙女の騒乱にて、アヤメが協力要請のため謁見に現れた際に、その容姿と魔力、血縁の情報から親がタガネであると看破し、隠居生活中であることも見抜いて以降はマリアの難敵となる。

 他のような強引さは無いが、油断すると出し抜かれる。




 


 








小話「極める者」⑷が重複していると気付きました。

読んで頂いてる方に申し訳無いです。


ミカドの話を短期連載中ですが、自分でも中々露骨なざまぁ要素を注ぎ込んだ結果になっております、恐らく。

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