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後に戻ってきたリフ。
タガネは、出会った場所で待機していた。
その横顔は浮世離れした美しさがある。
しかし。
気品ではなく剣呑さの窺える面構え。
旅の者とは語っていたが、帯剣のさまを見るに傭兵なのだと暗にわかる。
不思議な雰囲気をまとう青年。
ふと、リフは小首を傾げた。
「あれ、もう一人いる」
タガネの隣に小さな影が佇む。
小さな体を鎧じみた厚着で固めた少女。
綿帽子の下から、水色の髪が揺れている。
先刻まで居なかったはず。
いや、小さすぎて見えなかったのかも。
そんなとき。
リフの気配を気取って。
「用事は済んだかい?」
「え、はい」
灰色の瞳に射すくめられる。
体で隠れていたが、二人は手を繋いでいた。
リフは彼のそばへ駆ける。
「妹、さん?」
「そんなところだ」
「ん」
表情の稀薄な顔がうなずく。
リフは屈み込んで目線を合わせた。
漸う見てみれば、無愛想だが愛らしい面差しである。
「お名前は何て言うの?」
「レイン」
「ボクはリフ、よろしくね」
レインはわずかに瞳を揺らし。
タガネの後ろへとそそくさ隠れてしまった。
リフは寂しげに笑う。
「それじゃ、案内頼めるかい」
「はい、こちらです」
タガネは一つの家屋へとみちびかれた。
雪の囲いができており、出入口とは言い難い傾斜のある雪の斜面を滑った。
先導者のリフが勢いよく下りたせいで、目の前が氷霧が立つ。
若干、タガネが顔を険しくする。
「気をつけて下さい」
「ああ」
レインを両腕に抱え。
リフに倣って斜面を滑った。
下に着いて、玄関まで回り込む。
リフが引き戸を開けて、中にいざなう。
雪を払い落とし、礼を言ってから。
タガネは、敷居を跨いだ。
そして入るやいなや、鼻腔をくすぐる血臭がする。
嗅ぎ慣れたものだが、悪臭に変わり無い。
タガネは周囲を視線で探って。
「これは……」
天井に目が釘付けになった。
そこに、吊るされた動物の肉があったのである。