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馴染みの剣鬼  作者: スタミナ0
六話「錆びた角」上門
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 後に戻ってきたリフ。

 タガネは、出会った場所で待機していた。

 その横顔は浮世離れした美しさがある。

 しかし。

 気品ではなく剣呑さの窺える面構え。

 旅の者とは語っていたが、帯剣のさまを見るに傭兵なのだと暗にわかる。

 不思議な雰囲気をまとう青年。

 ふと、リフは小首を傾げた。

「あれ、もう一人いる」

 タガネの隣に小さな影が佇む。

 小さな体を鎧じみた厚着で固めた少女。

 綿帽子(わたぼうし)の下から、水色の髪が揺れている。

 先刻(さっき)まで居なかったはず。

 いや、小さすぎて見えなかったのかも。

 そんなとき。

 リフの気配を気取って。

「用事は済んだかい?」

「え、はい」

 灰色の瞳に射すくめられる。

 体で隠れていたが、二人は手を繋いでいた。

 リフは彼のそばへ駆ける。

「妹、さん?」

「そんなところだ」

「ん」

 表情の稀薄(きはく)な顔がうなずく。

 リフは屈み込んで目線を合わせた。

 (ようよ)う見てみれば、無愛想だが愛らしい面差しである。

「お名前は何て言うの?」

「レイン」

「ボクはリフ、よろしくね」

 レインはわずかに瞳を揺らし。

 タガネの後ろへとそそくさ隠れてしまった。

 リフは寂しげに笑う。

「それじゃ、案内頼めるかい」

「はい、こちらです」

 タガネは一つの家屋へとみちびかれた。

 雪の囲いができており、出入口とは言い難い傾斜のある雪の斜面を滑った。

 先導者のリフが勢いよく下りたせいで、目の前が氷霧が立つ。

 若干、タガネが顔を険しくする。

「気をつけて下さい」

「ああ」

 レインを両腕に抱え。

 リフに(なら)って斜面を滑った。

 ()に着いて、玄関まで回り込む。

 リフが引き戸を開けて、中にいざなう。

 雪を払い落とし、礼を言ってから。

 タガネは、敷居を跨いだ。

 そして入るやいなや、鼻腔(びこう)をくすぐる血臭がする。

 嗅ぎ慣れたものだが、悪臭に変わり無い。

 タガネは周囲を視線で探って。

「これは……」

 天井に目が釘付けになった。

 そこに、吊るされた動物の肉があったのである。





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