休題「魔法使い(五部)」
【魔法の天敵】
魔法が通用しない相手は限られる。
一般的に共通するのは、魔素による運動――魔力とは全く異なる力の法則性を有する『混沌』が相手の場合、魔力は効かなくなる。
主に混沌のみで構成される幻獣、魔力ではない力で発動する固有魔法、勇者やその系譜が用いる混沌の能力などが例として挙げられる。
実際に魔法が現象として効果が発揮できるのは、この世のすべてが魔素を含んでおり、作用し合うからである。元から魔素と異質な混沌には反応できないので効果も無い。
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『トゥカリス』
・通り名
石繰り
・経緯
至宝の魔法使い。
元はある国の軍事施設で魔法を用いた開発を行っていた平民の一人だが、戦争が激化していく最中で固有魔法を発現した。さらにそこから着想を得て物質創造の魔法系統を編み出すこととなる。
万物が魔素を含有していることなどを解明し、その上で魔素同士の反応を用いた物質の変容・解体などを使い、新たな物質を創造する。未だにその名が魔法使いの間でだけ伝わっており、未だ伝説として各地に残る遺跡や遺産の類は彼の作成物で、一部の魔法使いに神格化されている。
・能力
『指導力』
師としての能力は低い。
弟子は幾人かおり、その全員が苦心しながらも技術を修得している。編み出した物質変換の魔法は弟子の精力的な活動で後世に伝わり、多大な影響を与えている。
『魔法』
古代魔法においては一流。
戦闘系統の魔法には才能がほとんど無かったが、魔法による創造物を自在に操る術があり、それで戦闘力を補っていた。
また、固有魔法によって自らを一つの物質として解釈・変容させることで不老不死にまでなっている。
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『アカル・ティシュトリヤ』
・通り名
最古の奇跡使い
最初の至宝
可能性の魔法使い
魔法文明の母
・経緯
原初の魔法使いにして最古の固有魔法の担い手。また、タガネの世界の歴史において最強の魔法使い。
創世紀にヴァスシエルと共に旅をしていたイオリが村で見出した身分もない少女だったが、異世界の魔法を元にした指導を受けたことで才能が開花するや、わずか二月でイオリを超える。
ヴァスシエルが女神の撃退に注力し、イオリが奥の目と対峙する状況で、それ以外の女神の使徒すべてを相手取って互角に渡り合った。
女神戦後は、その魔法の術を世に伝えた後に森の奥で静かに隠居し、想い人ヴァスシエルとの間にできた仮初の子に末代まで残る呪いを施しながら自らを星へと変える。
その星の欠片を用いて特殊魔法という『可能性』を地上に落とす。
魔法文明における神格。
およそ魔法使いの誰もが到達できないと知りながら、必ずそこを目指すとする極致。魔神戦線後には知る者が少なくなるが、高位の魔法使いになれば必然的にティシュトリヤの名を知ることになる。
・能力
『指導力』
魔法文明の興りとして、弟子は数え切れない。
後世にも類を見ない貢献。
『魔法』
魔法使いとしてあらゆる要素が最高値とされる。ベルソートの数倍の実力者であり、この世界で初めて混沌の領域に踏み込んだ人類の一人。
強すぎる魔力故に、感情だけで自然界を揺さぶる生きる魔法。
世界最古の固有魔法――【能】の魔法。
可能性の魔法と称される、触れた者の潜在能力を開花させたり、あるいは引き継ぐ、また別の形にする、など汎用性が高い。
己の能力さえも変幻自在に変えたりするのもあり、潜在している力に新たな形を与えて無限の可能性を与える、魔法使いにとって理想の魔法。
固有魔法に分類される同種でさえ、この魔法の前ではただの児戯に等しい。




