7.5
同時期。
ジルとタガネは合流していた。
互いに蒐集した情報を共有し、内容を検める。
数年前から相次いでいた異世界人の発見例だが、今調査においてはレギューム主導で行った事前よりも倍近い数がある。
ジルだけで九人の発見。
討伐に専心していたタガネからすれば、あのような敵がまた何人もいるとなると、これからの激務を予想させられた。
すべてが有害ではない。
適応する者もいる。
「問題は女神絡みだな」
「異世界人の平均年齢は?」
「ざっと十五、くらいか」
「十五年前、特に大きな変化はあったな」
「あれか」
「…………」
「お嬢が当主になった年だ」
「いや、アヤメが家督を継いだことじゃない」
「………?」
「リャクナの謀略で幾つか国が滅んだり、人の世が乱れた」
「それが影響してるって?」
タガネは首肯する。
哭く墓の唱えた一つの世界の在り方。
世界の滅亡は生物の種の最低数に起因する。
その世界を代表するに価する最も個体数の多い生命体が一種あり、その生命体に定められた個体数の最低限を損なうと、それ自体が世界滅亡に繋がる。
最低数を下回れば。
その時点で破壊神が招かれる。
女神世界において、特に動乱などで人類数の増減が激しくなった際には、破壊神が【固有魔法】を含む混沌の能力を授けて均衡を保たんとするほど個体数の如何は重要な時代の転換点となった。
すなわち。
「人類数の増減が影響する」
「影響って」
「要は世界に歪みが生じるのかもな」
最近では星狩り。
結果とすれば人類は大打撃を受けた。
タガネたちが解決したものの、結果として女神の使徒が乱入するようになっている。
女神が己との再接続を画策し、延いては現世界における要となるタガネの魂の奪取も並行していた。
これは現在も進行されている。
次いで仙女の騒動。
これも人類に大きな影響を及ぼしている。
その結果として、今回は異世界人の転生なのだというのがタガネの推論だ。
「ふうん」
「問題は、そこに女神が介入してるかだ」
「女神が?」
「連中の転生を女神が手伝ってんなら侵攻が目的になる。転生者の全員を自白させて、どうにか女神の勢力かを判別したいが」
「骨が折れるぜ」
「だな」
タガネが戦った魔王も然り。
異世界人の能力は予想の範囲外にある。
混沌の能力の使いようによっては自白させることも可能だが、可能な限り異世界人との間に禍根は残したくないことがレギューム側の本音だった。
無論、タガネも同様の判断である。
「俺は一応、領地に戻る」
「そうしとけ」
「うん?」
「マリアの姐さんと、孫の機嫌取りしねぇと世界の前に家庭崩壊するぞ」
「末恐ろしいな」
言われてぞっとする。
なるほど。
世界崩壊よりはマリアが重要である。
「それと、だな」
「なんだい」
「近い内に領地へ一人の武芸者が訪ねる」
「……………?」
「ソイツ、見込みがあるからよ…………良けりゃ、一戦だけでも付き合ってやってくれ」
「おまえさんの知己かい」
「ああ」
「…………マリアが安定してたら考えとくよ」
タガネは嘆息混じりに告げる。
仕事はひとまず完了した。
後は妻と孫の機嫌を取りつつ、今後の趨勢を見守る他ない。
世界に着々と変化は起きている。
果たして。
それが身辺にどのように影響するか。
「また忙しくなるかね」
「がはは!そんときゃもう一回星でも斬るか!」
「次はおまえさんに頼むよ」
「おう、任しとけ」
タガネとジルは逆方向へ。
最後にすれ違うお互いの拳を打ち合わせながら歩み去っていった。




