第八十二話 お宝ゲット
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尻もちを突いた俺の頭上に新たな剣を振り下ろされてくるのが見えた。
咄嗟に闇の剣を構え、金属人形の振り下ろした剣を受け止める。
金属のぶつかり合う澄んだ音が響く。
「フィナンシェ君、すぐに助けるから!」
ラディナさんが即座に弓を射ると、金属人形はバランスを崩して地面に倒れ込んでいた。
「ナイスや! 暴力女!」
「ラビィ、口に気を付けて! 矢は敵と味方を判別してくれないから!」
「ひぃ!」
足元でわたわたしていたラビィさんは隙を見て立ち上がると、別に近寄ってくる金属人形の足をすくいあげて転ばせてくれていた。
二人に援護され、俺も立ち上がると倒した金属人形の胴体にめり込んでいる光の剣を引き抜き、次々にせまり来る金属人形を前に剣を構え直した。
「二人ともありがとございます。助かりました!」
「まだまだいっぱいいるんやから油断は――」
そう言ったラビィさんの耳の毛が、金属人形の剣によって斬られてはらりと地面に落ちた。
「フィ、フィナンシェ! なんとかしてくれや! ワイの大事な耳の毛がぁあああ!!」
「は、はい! すぐに!」
俺は両手に構えた剣を金属人形に叩き込んでいく。
ダメージは少なそうだけど、確実に相手の動きは鈍くなっている。
手数で押すしかない。
両手の剣を撃ち込み、金属の身体を斬ると動きを止めて地面に倒れ込んだ。
ラビィさんを襲っていた金属人形に気を取られていたら、別の金属人形が襲ってくるのに対応が遅れた。
剣の刃は鎧が受け止めてくれていたが、強化してなかったらと思うと背筋から冷や汗が流れるのが止まらない。
「フィナンシェ君! こうなったら解体するわ!」
ラディナさんが弓を投げ捨てると、自らの革手袋を外して、金属人形に挑みかかっていった。
彼女の手に触れられた金属人形が淡い光に包まれて動きを止める。
俺は淡い光に包まれた金属人形を再構成することにした。
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リサイクルスキル
LV:38
経験値:2347/4740
対象物:☆☆魔導金属人形(分解品)
>魔導金属人形(普通):77%
>魔導金属人形(中品質):57%
>魔導金属人形(高品質):47%
>魔導金属人形(最高品質):37%
>魔導金属人形(伝説品質):27%
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レア度が高い。
でもこれ再構成したら襲ってくるんだろうか。
そるなると、伝説品質を狙って失敗させた方がいいかも。
俺は淡い光に包まれて動きを止めている金属人形を伝説品質で再構成することにした。
>魔導金属人形(伝説品質)に再構成に失敗しました。
再構成は失敗し、金属人形は黒い煙となってその場から姿を消していた。
「倒した! 倒したわよ! フィナンシェ君! リサイクルスキルが通じるわ!」
「みたいですね。でも、まだ一体いますし、伝説品質で成功して襲ってこられるとこっちが全滅する可能性も……」
「フィナンシェ! お、お前なんちゅう危ないことしとんのや! 伝説品質はアカン! やめーや!」
「じゃあ、次は普通品質でやってみます!」
ラディナさんが、攻撃してきた金属人形に手を触れ解体スキルを発動させる。
すぐさま俺がリサイクルスキルを発動させて再構成を行った。
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リサイクルスキル
LV:38
経験値:2347/4740
対象物:☆☆魔導金属人形(分解品)
>魔導金属人形(普通):77%
>魔導金属人形(中品質):57%
>魔導金属人形(高品質):47%
>魔導金属人形(最高品質):37%
>魔導金属人形(伝説品質):27%
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>魔導金属人形(普通)に再構成に成功しました。
>魔導金属人形(普通)
資産価値:十億ガルド
成功した……。
価値十億ガルドって……ヤバくないだろうか。
いやそんなことよりも今は相手がどうなったかの方が大事。
再構成の光が収まると、ホコリが積もっていた金属人形の身体はピカピカに光っていた。
そして赤い光が灯っていた目の色が青く変化していた。
「う、動くのか?」
止まっていた体が動き始めたため、剣に手をかけたが、金属人形は俺の前にくると剣を捧げて膝を突いていた。
「これって……」
「フィナンシェ君がご主人様ってことかな?」
「やろうな……状況から見て」
俺が捧げられた剣を受け取ると、金属人形は深く頭を下げる仕草をしていた。
「フィナンシェのリサイクルスキルで再構成されて、色々なものが初期化されてしもうたかもしれんな。受け取った剣を渡してみいや」
ラビィさんに促され、俺は捧げられた剣を金属人形の手に戻してやった。
剣を手にした金属人形は立ち上がると、俺を護衛するように前に立っていた。
「やっぱりこいつはフィナンシェを主人と認識したようや。よかったな」
「あ、はい。でも、この人形って十億ガルドの価値があるみたいなんですけど……」
「アホか、こいつはオークションに出せば一〇〇億を超える価値が出るわ! 魔導金属人形やぞ!」
一〇〇億……
そんなに!?
お宝ってレベルの金額を超えてるんですけど!?
俺は目の前で剣を携えてたたずむ金属人形の価値に動揺を感じていた。