第八十一話 機械人形
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天井から落ちてきたのは、銀色の鈍い光を反射する金属の身体を持つ人形たちであった。
地面に倒れ込んでいた銀色の金属人形たちは、油の切れた軋み音を出しながら立ち上がると、手にしていた剣を一斉に構える。
「魔導機械人形やと!? まだ、動くやつがおったんか!? フィナンシェ、こいつらはアカン。逃げるでぇ!」
チラリと入口の方を見たが、入っていたきた扉はすでに締まり、反対側の扉も今まさに閉じられていく最中だった。
「いや、もう遅いです。閉じ込められます。ラディナさんは俺の後ろに隠れて下さい!」
俺は剣を引き抜くと、ゆらゆらと立ち上がり剣を構えている魔導機械人形の前に立った。
相手は四体……。
ラビィさんは逃げろって言ったけど、たぶんここから出るには勝つしかないんだよね。
いけるかな……というか、いけなかったらここで全滅ってことだし、それだとラディナさんも俺もラビィさんも死ぬってことになる。
それだけはなんとしても阻止しないと。
俺は構えた二振りの剣を持つ手に更に力を込めた。
「ギギギ」
銀色の人形は大きな赤い目玉を明滅させると、手にしている剣を振り上げ、一気にこちらに向かい殺到していた。
「く、くるでぇ! こいつらはやたらと早い攻撃をしてくる! 首、持っていかれんなやっ!」
「き、気を付けます!」
「あたしの大事なフィナンシェ君の首をあげるわけにはいかないわよ」
矢を番えたラディナさんが、先頭で突っ込んでくる銀色の機械人形を先制で射貫いていく。
だが、矢は金属の表面をすべって横に逸れていった。
矢を受けた金属人形は一瞬だけ怯んだものの、すぐにまたこちらに向かって駆け出し始めた。
「そいつは固いんや。矢は通らへんでぇ!」
「でも、怯むならフィナンシェ君の援護になるわ」
そう言ったラディナさんは次の矢を放っていた。
また、顔面に矢を当てられた金属人形が怯んだため、俺は一気に駆け寄るとその胴体に向けて剣を振り抜いた。
斬れない!?
この剣でも無理とか!?
金属の身体に打ち込んだ光の剣は半ばまで埋まったところで止まっていた。
「フィナンシェ、剣から手を放せや!」
ラビィさんからの激が飛び、意識を目の前の剣から人形の方へ戻すと、赤い光を明滅させ自らの剣を振り抜こうとしているのが飛び込んできた。
咄嗟に埋まった光の剣から手を放し、闇の剣の方で斬撃を受け止める。
金属の同士がぶつかる澄んだ音が辺りに響き渡っていた。
「ふぅ、あぶない」
息をつく間もなく、ラディナさんの矢が甲高い音を響かせて新たに近寄ってきた金属人形を怯ませる。
「フィナンシェ君、一旦引いて」
「いや、いけます」
俺は胴体に光の剣を喰らったまま、動きが鈍った金属人形の首に向け、闇の剣を一閃した。
今度は細い場所だから斬れた。
胴体とか太いところは無理だけど、きちんと狙えば斬れないわけじゃない。
頭部を地面に落とした金属人形は、切り口から火花を大量に噴き上げると動かなくなって崩れ落ちていた。
「まずは一体、いけました――」
「あほ、油断するんやない!」
強敵だと言われていた金属人形を倒したことで嬉しくなって、ラビィさんの方に振り向くと足元に体当たりされて身体のバランスを崩していた。
その瞬間、新たに近寄っていた金属人形の剣が俺の首筋をかするような軌道で通過していた。