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第八十話 トラップ

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「ふぅ、何とか崩れる前に倒せましたね。危ないところでした」



 俺は剣に付いたジャイアントワームの体液を布でぬぐうと、短剣で戦っていたラビィさんの方を見る。



「最悪やー。なんでワイがこんな目に遭うんや」



 短剣で接近戦をこなしていたラビィさんの身体には、返り血ならぬ返り体液がべっとりと付いて汚れていた。



「きっと日頃の行いね。フィナンシェ君は日頃の行いがいいから。ほら、この通り綺麗なままよ」


「ちゃうわ! 剣の長さのせいや! フィナンシェと違い、ワイのは短剣やぞ」


「あー、はいはい。そうでしたねー。ほら、これで身体を綺麗にして。そのままみんなのところに戻ったら、変な顔されるわよ。すごい匂いしてるし」


「ぐぬぬっ! もとはと言えば暴力女がワイを狙うのがアカンのや! フィナンシェ、こういう女にはビシッと言うたらんとつけ上がるでぇ! そうなったら地獄やぞ!」



 弓をしまって近づいてきたラディナさんは、体液でべちょべちょになったラビィさんに自分のポーチから出した大きめの布を投げていた。


 お互い酷いことを言っているようだが、ラディナさんもラビィさんもお互い信頼しているからこその軽口に思えた。



「いやー。俺はラディナさんにはそんなこと言えないですよ。いつも助けてもらってばかりですし」


「あたしの方こそ、フィナンシェ君に助けられてるから……その色々とね」



 ラディナさんは顔を赤くして俺の方を見ていた。


 そんな顔されると、こっちも照れちゃうんだけどなぁ。



「所かまわず、遺跡の中でもイチャイチャしおってからに。まぁ、ええわ。それよりか通路の奥に部屋みたいな場所が見えるから行くでぇ」



 ラディナさんから受け取った布で、身体に付いた体液を拭い取ったラビィさんは見つめ合っていた俺たちを置いて先に歩き出していた。



「んもう! ラビィはせっかちね。せっかくフィナンシェ君とイチャイチャできると思ったのに!」


「ラディナさん、今は遺跡中ですし、帰ってからでも……俺はいいですから……」


「え!? いいの!? そ、それならすぐに探索を終わらせないとね! うん、早く終わらせよう。ラビィ! 罠がないかきちんと調べてね!」


「色ボケやのー! まぁ、ええわ。フィナンシェも固まっとる暇はないでぇ」



 急にやる気を見せて走り出したラディナさんと、ラビィさんを追って、俺も通路の奥の部屋へ駆け出した。



 部屋の中は天井が高く、人が百人ほど入っても十分に余裕がある広い空間になっていた。


「えらい広い部屋やな。その割に何もない気がするが」


「確かに広いだけで何もないですね。お宝どころか、日用品すらも落ちてない感じです」


「でも、天井に近い場所に何かあるみたいよ。ほら」



 ラディナさんがランタンの光を天井の方へ向けていた。


 半円ドーム型の天井になっており、壁に小窓というか、切れ込みのような部分がチラリと見えた。


 目を凝らしてよく見ると、その切れ込みの奥は座席らしき物が見えていた。



「ラビィさん、ラディナさん、あそこの切れ込みの奥は座席みたいになってますよ」


「座席やと? あんな高い位置にか?」


「フィナンシェ君の言う通り、座席があるわね。それも切れ込みの数からして席数は結構ありそう」


「この構造どっかで見た気がするんやが……どこやったかな……」


 ラビィさんは部屋の中にくまなく視線を送ると、そう一人呟くのが聞こえてきた。



 人里離れた山の奥に建つ一〇〇〇年も前の遺跡だし、何に使われてたかなんて誰も分からないよな。


 でも、遺跡が残ってるということは、ここに人がいたという証拠でもあるんだろう。



 古代の遺跡のよく分からない部屋の様子に、俺はワクワクしながら周囲を見て回っていた。


 そんな中、俺は部屋の壁に見慣れない突起があるのを見つけていた。


 触ったらまずいと思い、すぐにラビィさんを呼ぶ。



「ラビィさん、ここに何か突起みたいなのがあるんですけど見てもらえます?」


「なんやと? 絶対に触るんやないでぇ!」



 血相を変えたラビィさんが、トトトと俺の方へ向けて駆けてくる。


 とても慌てた感じで足元を照らさずに走ってきたラビィさんだったが、俺の目の前に来た時、足元の床がカチリという音を立てていた。



「!? ラ、ラビィさん!? なんか音がしましたけど!?」


「え? なんやと?」



 急減速して止まったラビィさんが俺の言葉を聞いて、恐る恐る自分の駆け抜けた場所をランタンで照らす。


 すると、床にはうっすらと出っ張った部分があり、そこに見事にラビィさんの足跡が残っていた。



「っ!? やってもーた!! ワイの一生の不覚やっ!? フィナンシェ、暴力女、すまん罠を踏んでもうた! 何か起きるぞ! 周囲に気を配れや」


「はぁ!? 罠を踏んだって!? もうー何やってんの!」



 ラディナさんもランタンを手にこちらへと駆け寄ってくる。


 そして、ラディナさんもラビィさんと同じく、出っ張った床を踏んでいた。



「馬鹿、だからワイが罠踏んだって言うたやろが!」


「え? ええっ! ここにあったの?」



 今度はガコンという音がしたかと思うと、岩のズレる音とともに天井に大きな穴が開いていた。


 そして、ボトボトと何かがその穴から落ちて来るのが見えた。


 

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