第七十九話 巨大ミミズ
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動くものの方へランタンを向けると、そこには巨大なミミズが何匹もうごめているのが見えた。
デッカイ……。
地下から掘ってこの遺跡に侵入してきたのかな。
ちょっと気味悪いけど倒せない相手ではないしな。
ランタンで照らされたうごめくものの姿を確認した俺に、ラビィさんが隠れるようにしがみついてきた。
「ひぃ! ワイはああいうウネウネしたやつがアカンのや。フィ、フィナンシェ頼むでぇ」
「ラビィも大きいミミズくらいでビビってたら辺境で開拓生活なんてできないわよ。ああいうのはとっとと退治するのに限る」
ラディナさんは背中から弓を取ると、すでに矢を番え終えており、先頭を這いずるジャイアントワームに向けて矢を放っていた。
放たれた矢は先頭を這いずっていたジャイアントワームに突き立ち、痛みを与えたらしく激しく身体をくねらせて暴れているのが見えた。
「命中です。さすがラディナさん。こんな薄暗い中でもちゃんと当ててる」
「これくらいなら外さないわよ。フィナンシェ君に作ってもらったこの弓のけっこういい精度が出るしね」
二の矢を番え終えていたラディナさんが、俺の方を向いてウィンクをしていた。
その弓を構えたラディナさんの姿の凛々しさに思わず呆けてしまう。
「暴力女はやっぱ暴力的やのー。速攻で撃ちおった」
「なんか言ったかしら? その頭にこの矢を突き立ててもいいんだけども」
「フィ、フィナンシェ。暴力女がワイを殺そうとしおる。助けてくれや」
弓を向けられたラビィさんは俺の背後に隠れるとフルフルと震えていた。
「やだなー。ラディナさんのカワイイ冗談ですから大丈夫ですって。そんなことするわけがないでしょう。心配のしすぎですよ」
「ラビィ、命拾いしたわね。フィナンシェ君がいなかったら脳天に矢が突き立ってわよ」
「フィ、フィナンシェ! あいつはヤル気満々やぞ。ワイは今確実に殺意を感じた」
「やだなー。そんなわけないですよ。考え過ぎですって。そんなこと言ってないで、俺はあいつら退治してきますからここで待っててくださいよ」
「フィナンシェ! ワイを置いていくんか!」
俺の足にしがみついて震えているラビィさんを引きはがすと、両腰の剣を引き抜き通路を進んでくるジャイアントワーム群れに向かって駆け出した。
「ラビィ、ここから大人しくフィナンシェ君の援護しましょうね。そう、手が滑らないようにしないと」
「ひぃ、フィナンシェ! ワイもそっち戦うでぇ!」
背後から必死の形相になったラビィさんが通路をランタンで照らしながら走ってきていた。
「ラビィさん、だったら明かりの方を頼みますね。ワームは俺が倒します」
「任された!」
追いついたラビィさんに明かりを任せると、俺は光の魔剣と闇の魔剣を構える。
属性付与で強化している剣だが、今までほどんと活躍させることができずにいたので、ここで威力のほどを確認することにした。
地面を這って近づいてくるジャイアントワームの身体に光の剣を振り下ろす。
ジャイアントワームの身体を紙のように切り裂いた剣の傷口が、淡い光を発してジュウジュウと焦げ臭いにおいを発している。
切れ味は抜群、ただ属性効果はそれなりっぽい感じだな。
エミリアさんも属性は相手によって効果は変化するって言ってたし。
光と闇はほどよくすべての属性に効果を発揮すると言っていたからある程度は追加ダメージが乗ってるみたいだ。
仲間を斬られてことでジャイアントワームたちは、興奮したように大きな身体を周囲の壁にぶつけて暴れはじめていた。
「やつら仲間をやられて興奮しとるぞ。通路は壊れんやろうけど天井はちーとマズいかもしれん」
ラビィさんのランタンが天井を映し出すと、そこは通路を形成している金属のように磨かれた壁や床ではなく、岩がむき出しになっているのが見えた。
よく見ると暴れているワームたちのせいで天井には微かにひび割れが生じていた。
暴れると上が崩れる可能性があるか。
ラビィさんの言う通り、早めに倒さないとマズそうだ。
「すぐに倒します」
俺は剣を両手に構え直すと、暴れているジャイアントワームたちを次々に斬り倒していった。