第七十七話 古代の遺跡
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ある程度進んでは、ラビィさんが解体再構成する木や岩を選び、俺たちが街道用の資材に変え、コレットが街道の図面を描いて、急斜面があればエミリアさんが魔法で削って下準備をしながらハッケイ山脈の奥地へ登っていた。
そして、ミノーツを出て二週間ほどが経っており、ベースキャンプ設置の予定地である場所まで到達していた。
「やっと着きましたね。後から来る冒険者たちが道を作って追いついてくるまでは、この辺に周囲の物資を集積しておきましょうか?」
「フィナンシェの能力は解体再構成できても、新しく建築はできへんからなぁ。家とかは建ててもらわなあかん」
ラビィさんが言った通り、俺とラディナさんの能力では新たな建築物は作り出せないのだ。
既存の建っている物であれば再構成できる。
けれど、ゼロからは作り出せない。
「ベースキャンプ用にある程度の資材を作って置いたら、早いところ古代遺跡の探索に乗り出した方がいいんじゃないの?」
「それもそうやな。ワイらは荷馬車があるから寝泊まりには苦労せえへんしな」
「異議なし。わたくしたちは遺跡探索に行くべきですわ」
「ぴよー」
「ヒナちゃんも早く探索したいって、コレットも早く行ってみたい」
「我が主の財政事情を考えると早めに探索をして頂けるとありがたいですな」
俺たちは資材だけ置いておいて、ベースキャンプの整備はお任せして最初の目的である古代遺跡の探索を進めておいた方がよさそうだな。
「じゃあ、木材と石材をある程度、解体したら目的地へ移動することにしようか」
「おっしゃー、もうひと頑張りするか」
ラビィさんは山の中腹にある少し広くなった場所であるベースキャンプ予定地を見回すと、邪魔になりそうな物に目印となる赤い紙を貼り付けていった。
これは、ここにくるまでに作業の効率を上げようと皆で話し合って決まったルールだ。
ラビィさんが解体指示役として解体する物に赤い紙を貼り、俺たちが解体する。
黄色の紙は急斜面の整地として定められており、エミリアさんが魔法で削る。
最後にコレットが資材数と種類を書いた緑の紙を貼って、下準備の完了という形を話し合って作り出し、解体漏れや斜面の造成忘れを防ぐことにしていたのだ。
手早く、資材の再構成と整地を終えた俺たちはさらに高い場所にある古代遺跡に向けて荷馬車を動かし始めた。
日暮れ前に目的地である古代遺跡の前に到着していた。
入口を守るように建てられた彫像が時の経過によって破損し、腕や足の一部が消えてなくなっているのが見えた。
「かなり古そうですね」
「そうやな。ハッケイ山脈自体が、人がほとんど入らない地域やろ。そんな場所にあった遺跡となれば、ゆうに一〇〇〇年近くは放置されてた可能性はあるで。彫像から見ても古代魔法文明の遺跡の匂いはプンプンしおる。もしかしたらお宝の山やったかもしれん」
「とりあえず、この遺跡にある物は、我が主の物なので高く売れるとそれだけフィナンシェ殿たちへの支払いも増やせるはずですが」
「だったら、この彫像から直して品質上げたるか。どうせなら、高価な物にしまくって整備したベースキャンプからミノーツに運べば、アメデアのロリー・バート殿の伝手で高く売れる先も見つけられるやろし。その方がクライン殿の主のためにもええと思うぞ」
「ラビィったら、もしかしてそれを狙って街道整備しようとか言ってたの?」
「まぁ、フィナンシェに任せておくとワイらは儲けられんからな。相棒として、パーティーに金を稼がせるのはワイの仕事や。それに街道づくりに参加する冒険者たちの日当も稼がなあかんやろ」
ラビィさんはやっぱり俺たちのことを考えてくれていた。
自分の名前が付くという名誉だけであの街道を作ろうと言ったわけじゃなく、クラインさんも俺たちも参加する冒険者たちも儲かる方法を考えてくれていたのだ。
「さすがラビィさんです。やっぱSランク冒険者目指すには色んな事を考えて行動しないとですね。勉強になります。では、すぐに彫像から直してみますね。ラディナさん、手伝ってくれますか」
「ああ、うん。もう、フィナンシェ君はラビィに甘いわね」
ラディナさんが手袋を外すと、壊れかけた彫像に触れる。
解体され淡い光を宿した彫像に俺が触れるとリサイクルスキルが発動していた。
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リサイクルスキル
LV:38
経験値:2345/4740
対象物:石の彫像(分解品)
>石の彫像(普通):100%
>石の彫像(中品質):100%
>石の彫像(高品質):100%
>石の彫像(最高品質):77%
>石の彫像(伝説品質):67%
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>石の彫像(高品質)に再構成に成功しました。
>石の彫像(高品質)
資産価値:一〇〇万ガルド
ってアレ? 古代の彫像じゃなかったぞ。
俺は表示されたのが石の彫像だったのを不思議に思ってラビィさんに尋ねることにした。
「ラビィさん、これタダの石の彫像でしたけど……」
「やろうな。古代魔法文明の品物はぶっ壊れたりせんからな。それでも直せば売り物になるやろ。ゼロが二つくらい減るが」
「ああ! そうでした古代の品物は壊れないんでしたね」
そう言えば、倉庫整理してた時に古代魔法文明の品物は壊れない不壊の魔法が付与されていると言われていたのを忘れていた。
外にあってもその効果は発揮するはずで、時間が経っても壊れないのが古代の遺物であるはずだった。
「でも、これは素晴らしい作品ですな。精巧な女神の像ですぞ。これは、いにしえの女神殿ですかな」
直った彫像は美しい女神と大型の獣が絡み合う素晴らしい出来の彫像だった。
お待たせしました。更新日がズレましたが、次回は月曜に戻ります。