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第七十二話 新たな依頼

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「すみません、ここに『奇跡の冒険者のフィナンシェさん』がいらっしゃると聞いたのですが……ご在宅でしょうか?」


 ラクサ村の子たちの家となった、元実家で送別の宴の片付けをしていた俺たちのもとに、紳士然とした白髪の老人が声をかけてきた。


 老人の顔は見覚えがなかったが、どうやら俺を探してこの家を訪ねたらしい。


「フィナンシェは俺ですけど? 何か用事でしょうか?」


 老人の視線が俺の頭上に注がれていく。


 そこには霊鳥であるヒナちゃんがいた。


「ピヨ?」


「おぉ、それが噂の霊鳥フェニックス様ですか……。どうやら、本物のフィナンシェ様のようだ」


 老人がウンウンと一人で何か納得していた。


 俺の識別は頭に霊鳥がいるか、いないかなのだろうか……。


 それはそれでなんかやだな。


「おっさん、フィナンシェになんかようか? ワイらは今取り込み中で忙しいんや」


 正体不明の老人に怪しさを感じたのか、ラビィさんが剣呑な雰囲気で話しかけた。


 その声音を聞いた老人は慌てて、頭を下げる。


「こ、これは失礼しました。ご不快な思いをされたのなら謝ります。平にご容赦を」


「あ、いえ。不快ではないですか……俺になにか用事ですか? ラビィさんも言ったとおり、今取り込み中でして……」


「ああぁ! すみません! お忙しいそうなところ申し訳ありませんが、我が主のご依頼を受けて頂けぬでしょうか?」


 紳士然とした老人がそう言うと、蜜蝋で封がされた羊皮紙を俺に差し出していた。


 俺に向けて差し出された羊皮紙をラビィさんがひったくる。


「今を時めくトップパーティーのワイらにじじい一人送り付けて依頼しようとは。どこのアホ貴族や……。んーこいつは知らん貴族やな。ワイはこっちに移ってきてざっと一通り貴族家の紋章を覚えたが、見覚えのない形やな。本当にオステンド王国の貴族か?」


 ラビィさんが羊皮紙の蜜蝋に押された印章の紋章を見て、老人をいぶかしむ視線を強めていた。


 ん? 偽物ってことかな?


 もしかして、俺らを騙してヒナちゃんを奪い取るつもりだろうか?


 俺は頭上に居たヒナちゃんを掴まえると、盗まれないように自分の前に抱き抱えた。


「ラビィ様が知らぬのも仕方ないかと。この紋章は現国王の弟君で、先ごろ新たにバトルメライを領地として与えられ独立されたアイギス様です」


「王弟やと? ああ、そんな話聞いたことあったな。オステント王国の国王には影の薄い王弟がおるとか」


 王弟……そういえば、去年国王様に子供が生まれたとかいう話もあったなぁ。


 みんなが王位継承順が変わったとかどうとか言ってたような気がする。


「そのアイギス王弟殿下がワイらになんのようや? 王族が冒険者なんぞに用はないやろ?」


 ラビィさんが羊皮紙を開けることもせずにそのまま老人に突き返していた。


 どうやら、ラビィさんは冒険者特有のきな臭さを感じ取って首を突っ込むのは止めた方がいいと思ったのだろう。


「実は――」


「ええ聞きとうないわ。帰ってくれ。フィナンシェもそう思うやろ?」


 ラビィさんが絶対に聞くなと言いたそうに話を遮っている。


 貴族、それも王族の話に安易に関わるなと言いたいようだ。


「え、ええまぁ……そう、ですかね……さすがに王族の方から依頼を受けるわけには……」


「そこをなんとか! このままでは我が主君は領地を失ってしまうのです……。ですから、なにとぞフィナンシェ様たちのお力をお借りしたく……」


 王弟の家臣である老人は必死で冒険者に過ぎない自分たちに頭を下げていた。


 普通なら、大貴族の家臣が冒険者に対しこんなことをしない。


 その必死な姿を見ていたら、このまま帰らせるのは気が引けてしまった。


「ラビィさん、話だけ聞いてみては……」


「フィナンシェ、お前が話を聞くと絶対に受ける羽目になるんやぞ!」


「いや、そういうわけじゃ……。俺も危ない依頼は受けませんから」


 ラビィさんが、俺のももをバシバシと叩いていた。


 これまでの実績からすれば、ラビィさんの言うとことに間違いはない。


 でも、俺も学習くらいはするので、二度も三度も同じ過ちはしないはずである。


 ラビィさんと押し問答をしている間、ラディナさんからも、エミリアさんもコレットからも視線を浴び続けた。


 みんなして俺のことを信用してない気がする。


 大丈夫、俺もアメデアとガーデンヒルズの件で成長してるから。


「で、お話は聞いていただけるのでしょうか?」


 話がまとまらないのを見た老人が、そっと依頼を聞いてもらえるのか尋ねてきた。


「いちおうお話だけは聞きます。それから受けるか受けないか判断いたしますので」


「あ、ありがとうございます!」


 老人は俺の手を握ると、安堵の顔を浮かべていた。


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