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第六十六話 伝説品質の霊鳥の卵

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「ミドリルぅうううううううっ!!!!」


 外に飛び出したミドリルが霊鳥の炎に焼かれ、肉片一つ残さずに消え失せたことで、それを見たザフィードが絶叫して膝から崩れ落ちていた。


 騙された相手とはいえ、もしかしたら息子を生き返らせてくれる可能性もあった人物が消えたことで、それまで張りつめていた糸が切れたようだ。


「あえあああええあ、この卵めぇえええええ!!!」


 言葉にならない声を出して、真っ赤な卵を床に叩きつけると、息子の遺体が置かれた祭壇の方へ這いずっていく。


 その姿はとてもこの街の領主だったとは思えないほどみじめな姿だった。


「マルドー、まづろぉおおおお」


 半分腐りかけた息子の死体に取り縋り、手を取り合ったところで、熱でもろくなっていた神殿の天井が崩れ落ち、領主親子の上にガレキとなって降り注いだ。


 見ていていたたまれない気持ちに陥った。


 死者である息子の死を受け入れられず、詐欺師の言葉に騙され、領民から金を毟り取っていた男の最後は憐れだった。


『私たちの卵! 卵がぁああ!!』


『お前ら、盗んだだけでなく卵をぉおおおお!!』


 声が脳内に響き、崩れ落ちた天井の方を見ると、霊鳥たちが割れた卵を見て興奮していた。


 このままだと、卵を割った犯人にされかねない勢いで怒り狂っている。


「フィナンシェ君、霊鳥が怒ってるみたいだけど……あの卵、まだリサイクルできると思う?」


「やってみるしか……」


 俺たちの目の前ではザフィードが床に叩きつけて割れた卵から内容物が漏れ出し転がっていた。


 やれるかどうかは分からないけど、この場はやってみるしかない。


「炎は俺が防ぐから、ラディナさん解体を頼む」


「おっけい。解体したらよろしくね」


 ラディナさんが卵に駆け寄ると、俺は彼女を守るように霊鳥の前に立ちはだかった。


『そこをどけ、卵泥棒』


『わたしたちの子供を殺した罪は贖わせる』


「待ってください。俺たちは卵を割った犯人じゃ――」


『うるさい、この街の連中は誰一人として生かしておかぬ』


 霊鳥は怒り狂い、炎を俺に向かって吐いてきた。


 だが、炎は俺に触れることなく掻き消えた。


『忌々しい』


「フィナンシェ君、解体終わったわ。リサイクルよろしく」


 ラディナさんの解体スキルによって淡い光に包まれた卵に俺の手が触れる。


 >大霊鳥の加護が発動しました。


 >霊長の卵の成功率は全て品質において100%となります。



 ―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:38

  経験値:1195/4740

  対象物:☆霊長の卵(分解品)


 >霊長の卵(普通):100%

 >霊長の卵(中品質):100%

 >霊長の卵(高品質):100%

 >霊長の卵(最高品質):100%

 >霊長の卵(伝説品質):100%

 ―――――――――――


「加護が発動してる!?」


「どうしたのフィナンシェ君?」


「大霊鳥の加護が発動して成功率が全部100%に……」


「と、とりあえず全部100%なら伝説品質で大丈夫じゃない? 卵が元に戻れば霊鳥たちも怒りを解いてくれるかもしれないし」


「そうだった。まずは霊鳥の怒りを解くのが先決だった」


 自分たちが切迫した状況だったのを思い出し、すぐに伝説品質で卵を再構成することにした。



 >霊鳥の卵(伝説品質)に再構成に成功しました。


 >霊鳥の卵(伝説品質)


  資産価値:鑑定不能



 資産価値に鑑定不能が出てる!?


 再構成を終えた卵は元の丸い形を取り戻し、真っ赤だった殻からは燃え上がる炎が吹き出し始めた。


「も、燃えてる!?」


「燃えてるね!?」


「伝説品質にしたせいかな?」


「かも……。でも、炎が呼吸してるみたいに動いてるし、ちゃんと生きてるみたいだよ……」


 俺たちの前で形を取り戻した霊鳥の卵は呼吸をするように炎を吹いたり吸い込んだりしていた。


『こ、これは……始祖様の……始原の炎』


『私たちの子が始祖様の生まれ変わりに選ばれたみたい……信じられない』


 卵が元通りになり、炎を吹いたり吸ったりし始めたことで、霊鳥たちの態度が変化していた。


『まさか、卵泥棒のお前らが始祖様の再誕を火種を運ぶ使者だったとは……始祖様の加護が付いてる時点でおかしいとは思っていたが』


『ともあれ、今は卵を私たちの炎で温めねば』


 霊鳥たちは怒りを解いたようで、天井から神殿内に入ってくると床に転がっている卵に自らの炎を吹き始めた。


 霊鳥たちの放つ炎はさっき上空で吐いたのとは違い、ほのかな暖かさになっていた。


「卵大丈夫ですか?」


 俺は恐る恐る卵を暖める霊鳥たちに話しかけた。


『大丈夫のようだ。使者殿には取り乱して迷惑をかけた。数百年ぶりに産まれた卵の行方が分からなくなり、我らもいささか気が立っていたのだ。許してほしい』


 霊鳥たちの気持ちを考えれば、子を探すために一生懸命だったのは分かる。


 だが、強力過ぎる力のおかげで街にまで被害が及びかけているのだ。


 そこだけは彼らに伝えておきたかった。


「こちらも霊鳥様の卵を持ち出した不届き者がいたので、お互い様と言いたいところですが、霊鳥様の力がいささか強大すぎてこのままでは街にまで延焼して焼け落ちてしまいます。なんとか、無礼を承知で申し上げますが何とかなりませんでしょうか……」


『……ご迷惑をおかけしました。すぐに火を食いつくして参ります』


 卵の母親と思われる雌の霊鳥が神殿から飛び立つと、燃えている炎を尻尾から吸い込み身にまとい始めた。


 おかげで街への延焼が迫っていた火勢は衰え、火は一気に消えていった。


 その様子を俺たちは神殿の窓から眺めていた。


 これで、街が焼けるのは避けられたようだ……。


 あとはラビィさんたちがきっちりとボヤの消火をしてくれるはずだ。


『本当にご迷惑をかけた。これより、我ら子に宿る始祖様に成り代わり謝罪申し上げる。この贖罪は我ら霊鳥のつがいが命尽きるまで、ハイガーデンより街を守ることで許して欲しい』


 フェニックスの寿命は長いと聞いているが……。


 街の人たちは霊鳥騒動で色々と辛い目に合っているのでどう思うだろうか。


 これは俺が勝手に決めていい話ではなさそうだ。


「申し訳ありません、その件は街の人によく聞いてからお返事させてもらいたい」


『承知した。卵を温める七日間だけはこの神殿を我らの巣とさせてもらうことだけは了承してほしい。始祖様がお産まれになれば、ハイガーデンに戻るなり、立ち去るなりするので』


「分かりました。その間に俺たちも街の人にどうするか決めてもらいます」


 雄の霊鳥からの懇願を受け、領主の作った神殿を彼らの巣として七日間提供することにした。


ガーデンヒルズ編もあと二話で完結かと。


第四章からは週一更新となりますが、今後ともRe:サイクルをよろしくお願いします/)`;ω;´)

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