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第六十五話 卵の行方

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 彼らの始祖である大霊鳥の加護を得ていた俺は、炎のブレスによるダメージを受けないでいた。


 だが、周りの建物はそうはいかなかった。


「ラディナさん、危ない!」


「きゃあ!」


 炎の息によって焼け落ちた屋敷の屋根が崩れ落ちてくる。


 俺はラディナさんを抱き抱えると、荒れ狂う霊鳥たちから身を守れる場所を探した。


 どこかに火が回らないところはないか……。


 あ、あそこの神殿なら石造りだし、火も回らなそうだぞ。


 燃え盛る屋敷の裏庭に神殿のような建物があるのが目に入った。


「あっちの神殿にいったん避難します。しっかりと俺に掴まってて」


「う、うん。ありがとフィナンシェ君」


 俺はラディナさんをしっかりと抱き抱えたまま、石造りの神殿に向かって駆けだした。



 神殿に入ると、中は色々な物が散乱していたが、火が回っておらず、奥の方で仮面を着けた男が身を潜ませていた。


「何者だ。この神殿に勝手に入るとは不届き者め。出ていけ、お前らがいるとあの鳥が寄ってくるであろうがっ!」


「すみません、ですが火にまかれないように、いっときここで休ませてもらえるとありがたいのですが……」


 仮面の男が俺たちに出ていけと詰め寄ってきた。


 この仮面の人もしかして、この人がヨハネさんが言ってた詐欺師のミドリルだろうか……。


 領主の屋敷にいるって言ってたし、変な仮面もつけてるし、やっぱそうだような。


「フィナンシェ君……あたしを降ろしてもらえるかしら?」


 抱き抱えていたラディナさんも、目の前の仮面の男がヨハネさんの言っていたミドリルではないかと思ったようだ。


「うん」


「お前ら、私の話を聞いてなかったのか! ここから立ち去れと言ったはずだ!」


 仮面の男は立ち去ろうとしない俺たちに苛立ちを隠さなかった。


 俺はラディナさんを後ろに下げると、腰の剣に手をかけた。


「なんだ! 小僧やるのか! 私は領主の命でこの神殿を預かる魔術師ミドリルだと知らぬのか」


 やはり目の前の男はこの街に災厄をもたらした元凶とも言える詐欺師のミドリルだった。


「貴方が偉大な蘇生魔術師のミドリル様でしたか。お会いできて光栄です」


 目の前の男が、領主ザフィードを騙し、街から色々な理由をつけて金を巻き上げていた元凶だと思うと怒りがこみあげていた。


 この人のせいで街は窮乏を強いられているんだよな。


「ですが、貴方の行った詐欺行為で街の人たちは苦しみを強いられ、今は霊鳥にまで襲われている。そのことについて言いたいことはありますか?」


 俺は腰の魔法剣を抜くと、ミドリルに突き付けた。


「ひぃいい! やめろ! 私は詐欺行為などやっていない。領主の死んだ子を復活させてやると言ったのだ。その儀式の直前でこのようなことになったのだ」


「本当に死んだ人を復活させられるのかしら?」


 ラディナさんも愛用の弓に矢を番えてミドリルに向けていた。


 死んだ人は魂を失い元には戻らない。


 それは、神様が人間に定めたルールだと教会で聞いた。


 そのルールを覆す力はどこにもないとも聞いている。


「私はやれるのだ。死者は肉体さえ残っていれば再び蘇る。嘘は一つも言ってない」


「では、早くやってくれ。頼む、ミドリル殿」


 神殿の奥の部屋から別の男が現れた。


 瞬きもせず、目がらんらんと輝き、とても正常な精神を持ち合わせた人には見えなかった。


「ザフィード殿!? ですが、このような状況で儀式など」


 仮面の男は新たに入ってきた男をザフィードと呼んだ。


 あの人がこの街の領主……どう見ても、もう正常な判断をできるようには見えないが……。


「お前は蘇生魔術師で息子を復活させると言ったではないか! ほら、ここに霊鳥の卵もある! 全ての準備は整っているはずだ。そのための費用も払ったはず! さぁ、早くわしの息子を復活させろ!」


「今は状況が……それに我が配下もあの炎に焼かれ多くが死んでしまっているので……」


 ミドリルに儀式の遂行を迫るザフィードは大きくて真っ赤な卵を脇に抱えていた。


『フィナンシェ君、あの卵ってもしかして……』


『霊鳥の卵ですかね?』


『そう思った?』


『ええ、やっぱり霊鳥たちが卵を盗まれて怒ってたのはあれのせいですよ』


 俺たちはザフィードが脇に抱えて持っている卵が、暴れまわっている霊鳥たちが探している物だと思った。


 あれを霊鳥たちに返さないと、街まで焼かれてしまう。


「ミドリル、さぁ、早くこれを使って息子をぉおおおっ!」


 すでに正気ではないザフィードが腰の剣を抜くと、ミドリルに斬りかかった。


「ひぃいいいっ! おやめください! やめろ、やめろぉおお! 騙されたお前が悪いんだろうが! このボンクラ領主がぁ! 死人は復活なんてしねぇえよ! バーカ! 金だけ毟り取れれば俺はお前には用はねぇ。じゃあな!」


 ミドリルは剣を振り回しているザフィードを蹴り倒すと、神殿の外へ向かって駆けだしていった。


 そして、外に出た途端、ミドリルの身体は霊鳥の吐いた炎によって肉片一つ残さずに掻き消えていた。

本日より十九時更新とさせてもらっております。


あと、このガーデンヒルズ編が終了後は週二回の更新を週一回に纏めさせていただきますことをご了承ください。


今後ともRe:サイクルをよろしくおねがいします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 建物から自分たちの卵の匂いがしているのに火で燃やすんですか? 建物崩れて下敷きになったら卵割れますよ? 多少強度があったとしても絶対割れないわけじゃないのにいきなり建物燃やさないでしょ…
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