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第六十四話 大霊鳥の加護

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「屋敷の火勢は強いぞ。皆の者、街に近い木を切り倒せ! ただし、他の人を巻き込まぬようにな!」


 ヨハネさんが怪我をおして、衛兵や街の人を指揮し、防火帯を作る準備を進めていた。


「フィナンシェ君、あたしも手伝うわ。みんな、あたしが前の方は解体するからどいて」


「ラディナさん俺も一緒に行きます」


「おっけー、火にまかれないように気を付けてね」


「それはラディナさんもですって」


 屋敷に繋がる道の奥へ駆けだそうとした俺たちに、背後から盛大に水がかけられた。


「フィナンシェ、ラディナ。それで多少は焦げても大丈夫やろ」


 振り向くとバケツを持ったラビィさんたちがいた。


「フィナンシェお兄ちゃん、ラディナお姉ちゃん気を付けてね」


 コレットもバケツ運びを手伝っていたようで、心配そうに俺たちを見ていた。


「ありがとうございます! ラビィさん。コレットも俺たちは大丈夫だから、そっちも気を付けてくれ」


「うん!」


「最悪、わたくしが盛大に水魔法で消火をするので安心していいわ」


 エミリアさんが胸を張って請け負ってくれているが、アメデアの件もあるし、なるべくならお世話にならない方がいい気がしていた。


 そんなことを思いながら、俺たちは屋敷の方へ続く道をひた走った。



 しばらく走ると、木に引火して街まで延焼しようとしている木の前にまで到着した。


 すぐにラディナさんが手袋を取って、解体スキルを発動させ、延焼を防ぐための防火帯を作り始める。


 俺も手にした魔法剣を抜くと、ラディナさんと一緒になって火のついた木を切り倒していく。


 だが、火勢はさらに勢いを増していた。


「くそ、火が勢いを増してきた」


 その時、俺の耳に何者かの声が聞こえてきた。


『私たちの子を返せ、どこに隠した』


『卵を返せ』


 空耳かと思い周囲を見る。


『大事な子供を返せ』


『返して。さもなくば街ごと焼き滅ぼす』


 声は屋敷の上空を、火を吐きながら旋回している霊鳥のつがいたちから聞こえてきていた。


「フィナンシェ君、声が聞こえたんだけど?」


 ラディナさんも俺と同じ声が聞こえたようだ。


 卵を返せとか言ってるけど……まさかとは思うけど、誰かが金に目が眩んで霊鳥の卵を盗み出したのか。


「卵を返せって言ってるけど……まさかよね?」


 彼女も俺と同じ感想を抱いたようだ。


 まさかとは思いたいが、霊鳥たちが暴れまわっている現状を見ると巣から盗み出されたと思った方が納得がいった。


「でも霊鳥が意味なく暴れることはないって思うし……それにもし仮に卵が見つかって返せば攻撃をやめてくれるかも」


 突如として暴れ出したと思われていた霊鳥だが、暴れている理由が子供を取り返すためだとすれば、手元に戻ってくるまで暴れつくすのをやめない気がしていた。


『どこだ、どこにある。この屋敷から卵の匂いはするぞ』


『もっと炎を吐いて屋敷を灰にしないと』


 屋敷の上空を旋回している霊鳥たちが、より一層炎の息を吐き出すようになった。


 このままだと、防火帯を作っても霊鳥たちが吐く炎の息で火の粉が街に及びかねない……。


 屋敷に行って卵を探した方が、彼らの怒りを解けるかもしれない。


 俺はチラリとラディナさんの方をみた。


 俺がどうしたいのか察した彼女は無言で頷いてくれた。


 でも、どうしてもラディナさんには謝っておきたかった。


「すみません! またラディナさんを危険に巻き込んでしまうかもしれないけど、俺は屋敷まで行きます!」


「言わなくてもいいのに。あたしはフィナンシェ君のそばにずっといるって決めたから大丈夫。さぁ、行こう。卵探しに」


 火勢が衰えない中、俺たちはあるかどうかも分からない霊鳥の卵を探しに領主の屋敷に向かって駆け出した。




「すごい炎……屋敷も半分以上は焼け落ちてるわね」


 両側の木が火で燃え上がる道を抜け、領主の館に到着していたが、現場思っていた以上の惨状が広がっていた。


「本当にこんな場所に卵があるのかなって思うけど、探すしかないよね」


 まだ燃えていない屋敷の中を探そうと歩き出した時、霊鳥の吐いた火の息が俺たちの方へ降り注いできた。


「ラディナさん! 危ない!」


「え? なに?」


 咄嗟にラディナさんを炎から守るように抱き抱えて、地面に押し倒す。


 その間も降り注いできた炎は俺たちの周囲に落ちてきた。


 まずい、これは当たるかもしれない。


 って、あれは直撃するコース!?


 地面に倒れ込みながらも、周囲に降り注いだ炎の軌道を見ていたが、どうやっても自分たちに直撃する炎の塊が見えた。


「フィナンシェ君、あたしは放っておいていいから避けて!!」


「そんなのはできませんよ! 盾で防ぎます」


 回避は間に合わないと見た俺は、盾を構えて落ちてくる炎から身を守ることにした。


 だが、炎は俺の盾に触れる前に掻き消えていた。


 ん? 何が起こった? 炎が消えたぞ。


「フィナンシェ君、何が起こったの? いきなり炎が消えたように見えたけど」


「わ、分からないです。盾で防いだわけじゃなさそうですが……」


『そこにいるのは人間か! わしらの子を返せ』


『大事なわたしたちの卵を返せ』


 炎を消したことで上空を旋回していた霊鳥たちが、俺たちの存在に気付いたようだ。


 二羽は俺たちが卵を盗んだ犯人だと思ったようで、急降下してくると口を開けて炎の息をまき散らしてきた。


「違う、俺たちは――」


 こちらの言葉に耳を傾けようとせず、霊鳥から吐き出された炎は俺たちを直撃した――


 が、しかし、炎は先ほどと同じように俺に触れることなく掻き消えていた。


『あの人間、炎をかき消しただと!? 我らが始祖様の加護をもっているというのか』


『そんな人間が卵を盗むとは許せない。卵を返して』


 霊鳥たちは炎が掻き消えたことで、あきらかに動揺を見せていた。


 始祖様の加護って? あ!? まさか、あの神像から出てきた羽根で付いた加護のことか!?


 俺は効果が分からなかった加護が、霊鳥の炎をかき消していたことを知った。


 けれど、霊鳥たちは俺のことを卵泥棒だと認識しているらしい。


「話せばわかるって。俺たちは卵泥棒じゃ――」


 威嚇のつもりか霊鳥は俺の話を聞かずに再び炎を吐いてきた。


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