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第四十六話 里帰り

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 グイン船長さんの操舵する沿岸用の小型船は、俺の生まれ故郷のミノーツの街の近くを流れる川を遡上してくれていた。


「船でこんなに川の奥までさかのぼってこられるんですね」


「ああ、俺の腕があればってことだがね。普通はこんな奥まではさかのぼってこないですが」


 そう言えば、ミノーツの街に長く住んでたけど、船なんて見たことなかったし。


 川幅もそんなに大きくないからなぁ。


「フィナンシェ殿、そろそろミノーツの街も見えてきましたぞ。俺らの船はここで係留しておきますからお気兼ねなくミノーツの街で羽を伸ばしてください。野郎ども、係留作業に入るぞ!」


「「「うぇーい!」」」


 グイン船長さんの号令が下ると、水夫の人たちが一斉に動き始め、船が瞬く間に係留されていった。


 続いて、アメデアまで乗って行った荷馬車を降ろす作業に入っていく。


 ラグランジュ号って、アメデアで見た小型船にはあまりついてないような装備がけっこう付いてて、見た目よりも高価な船なのかも。


 一旦落ちついたら専属船となってくれたお礼として、グイン船長さんに言ってから装備も高品質化させてもらおう。


 荷下ろし装置で地上に降ろされていく荷馬車を見ながら、グイン船長さんへのお礼を考えていた俺に降りる準備を終えたみんなが話かけてきた。


「フィナンシェ君、準備ができたわよ。ラクサ村のみんながお土産待っているから早いところミノーツの街に戻りましょう」


「優雅な船旅を満喫できたし、次の依頼は遠方でもグイン船長がおるで大丈夫やな」


「お船の旅は楽しかったー。グイン船長さんもありがとう。フィナンシェお兄ちゃんの生まれたミノーツの街も楽しみ」


「コレット、今日はいいお宿に泊まるから淑やかにね」


「はーい、エミリアママ」


「じゃあ、グイン船長さんちょっとミノーツの街に戻ってきますね。もし、なんかあったらミノーツの冒険者ギルドにいるアステリアさんかセーナって子に言ってもらえば俺にすぐ連絡が来ると思いますので」


「了解した。何か起きたら水夫を冒険者ギルドへ走らせる」


 俺たちはグイン船長さんに挨拶をすると、地上に降ろされた縄はしごを伝い降りて荷馬車に乗りミノーツの街へ戻ることにした。




 ラクサ村のみんなが住む俺の実家に戻る前、先に定期輸送隊のヨームさんから預かった依頼の完了証を提出するべく、冒険者ギルドに顔を出した。


 冒険者ギルドの扉を開けると、中にいた冒険者たちの視線が一斉に俺に集まってきた。


「フィ、フィナンシェだ。いや、フィナンシェさんだぞ」


「今回はアメデアで奴隷売買してた黒髭商会っていう海賊連中を一人で全員半殺しにしたうえ、船まで燃やしたらしい。ゴミ拾いのフィナンシェとか言ってた時に消されなくてマジでよかった」


「おい、声を潜めろ。こっちを見られて昔のことを思い出されたら寿命がなくなっちまうだろうが」


 知り合いの冒険者だった人たちが俺の姿を見て、即座に休憩室の方へと消えていった。


 なんかアメデアのことがもうミノーツでも話題になっているけど……噂が変なふうに伝わってる気がするんだけどなぁ。


 一人で半殺しになんてしてないし、船を燃やしたのはエミリアさんなんだけど。


 これって訂正した方がいいのか?


 冒険者たちの話がラビィさんたちの耳にも入っていたようで、俺の視線を受けたラビィさんは笑いながら首を振っていた。


「フィナンシェお兄ちゃんって有名人なんだね。みんながお兄ちゃんの噂をしてるよ」


「いや、俺はそんなに有名じゃないんだけど。有名さで言ったらコレットのお父さんとお母さんの方が有名なんだけど」


「ラビィパパとエミリアママの方が?」


 コレットがチラリと二人の顔を見ていた。


 そちらの二人はSランク冒険者で一人は大規模な爆発魔法とか得意な方、もう一人は知識と交渉術が素晴らしい方なんだよね。


 ラビィさんも、エミリアさんも自分たちの方が有名だと言われて心なしか威厳を醸し出しているように見えるけど。


「フィナンシェ君、よく戻ったね。いやいや、アメデアでの大活躍はヨームのやつから聞いてるよ。さすが、赤眼のラビィ殿が見込んだ男だ。定期輸送隊の護衛依頼でアメデアに行っただけなのに、そこで会った奴隷を助けるため、荒っぽいことで有名な黒髭商会の連中をアメデアから一掃するなんてやることがデカくていいな」


 コレットと話していたら俺の存在に気付いたギルドマスターのフランさんがカウンターから出てきていた。


「ち、違いますよ。なりゆきでそうなっただけですからっ! それと、俺だけじゃなくってみんなが助けてくれたからできたことですって!」


「またまた、フィナンシェ君はそうやって謙遜する癖を直した方がいいぞ」


 フランさんまで盛大に勘違いしてるしっ!


 ヨームさん見つけたら、情報をキチンと訂正しておいてもらわないと、どんどん俺がとんでもない人物扱いされそうだ。


「謙遜してないですよ。もうその話はいいですから、これヨームさんの依頼の完了証明書です。これで俺のパーティーは初依頼をきちんとこなしましたからね。確認お願いします」


 俺はヨームさんから受け取った依頼の完了証明書をフランさんに手渡した。


「いやあ、初依頼でこれだけのことをやり遂げてくれると、フィナンシェ君の冒険者ランクをFランクのままにしとくのも差し障りがあるかもしれないな。どうだいSランクとかに興味あるかい? ちょっと竜を一匹狩ってきてくれればすぐにでもSランクにできるんだがね」


 だから竜とか無理ですって……。


 今回もエミリアさんやラビィさん、それにラディナさんにも助けられてできたことだし。


「竜かぁ、もうちーとフィナンシェが硬くなって、ラディナが強い弓を持ったら翼竜くらいならいけるやろなぁ」


「そうですわね。わたくしの魔法で撃ち落としてから、硬くなったフィナンシェちゃんがカミカミされてる間に、ラディナちゃんが翼竜の眉間を撃ち抜けば余裕でいけますわね」


 いけませんからっ! 勝手に竜を狩る算段とかしないでください!


 フランさんも期待を込めた目でこっちを見ても、依頼を受けるつもりはまだありませんからね。


「ラビィパパ、エミリアママ、竜って強いの?」


「あー、強いで。魔物の中でも別格の強さや。あれを狩ると冒険者としての名声は大陸中に響き渡るんや」


「コレットも一匹狩ってみる? ママがこんがり焼いてあげるわよ」


 そこの家族連れの方たち、竜は遠足気分で狩る魔物じゃないですよ。


「フィナンシェ君が噛みつかれるのは困るから、一発で竜を仕留められるような弓を手に入れないといけないわね」


 ほら、みんながやる気見せるからラディナさんまで弓を手に入れて竜を仕留めるとか言い始めたじゃないですか。


「フランさん、その話はまた今度! 今日はこの辺で退散しますから! しばらく街には逗留するんでまた来ます! ほら、みんな帰るよ!」


 俺はこのままだと本当に竜を狩るハメになりそうだったのと、アステリアさんとセーナが受付窓口に居なかったことでとりあえず冒険者ギルドを退散することにした。



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