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第四十五話 行動の結果

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 数日後、黒髭商会の人身売買事件における衛兵隊の形式的な取り調べを受けていた俺は、ラディナさんと一緒に無罪放免ということで衛兵隊の詰所から外に出ていた。


「形式的な取り調べだったとはいえ、衛兵隊の詰所だとよく寝れなかったね。でも、フィナンシェ君と二人っきりだったからあたしとしては捕まって得した気分かも」


 それは俺もちょっと思ったかも。


 普通、男女を一緒の留置場に入れないんだろうけど。


 衛兵隊長さんが気を利かせてくれたのか、俺はラディナさんと一緒の留置場だったからなぁ。


 婚約してる身とはいえ、ラディナさんと一緒に寝起きするのは結構ドキドキするし、新鮮で楽しかったかも。


「いやー、すみません。ラディナさんを巻き込むつもりはなかったんだけど。あの市場で俺が買い取り話をした時、バイデンの話を聞いてたのはラディナさんしかいなかったし。ご迷惑をかけました」


 俺がラディナさんに謝っていると、背後から声をかけられた。


 振り向くとそこにはロリー・バートさんと奴隷から解放した獣人たちが一同に集まっていた。


「「「フィナンシェ様、ラディナ様、ご出所おめでとうございます!」」」


「フィナンシェ君……君はなんてすばらしいんだ。黒髭商会の連中を確実に潰すために自分の身すら犠牲にするとはな……」


 ロリー・バートさんも獣人たちも感極まっているのか目から大量の涙を流していた。


 助けるためとはいえ、奴隷を買ったのは事実だし、衛兵隊長さんにはきちんと申告をしておかないとって思っただけだし。


 それにあのままだとバイデンが法の抜け穴を利用して軽微な違反に終わる可能性もあったもんな。


「フィナンシェ君の証言で黒髭商会の連中の行ってた商売が有罪となり、あいつらは王国の法で裁かれることが確定した」


「そうですか……よかった。俺も証言した甲斐がありましたよ。これで奴隷売買はなくなりますよね?」


「ああ、そうなる」


「ありがとうございます。あと、彼らのことですが……」


「大丈夫だ。フィナンシェ君との約束は守って、全員がうちで働くことを希望したので採用したから安心してくれ」


 よかったぁ、助けたはいいけど仕事も家もなくこのアメデアの街に放り出すハメにならなくて……。


「フィナンシェ様……我らを奴隷から解放してくれただけでなく、仕事と家のお世話までしていただき感謝しきれません。この御恩は我ら犬人族として終生忘れず、子々孫々まで語り継ぎます」


 犬人族の人たちが頭を下げて感謝を示してくれてるけど、俺は彼らにちゃんと謝らないといけないよな。


 助けるためとはいえ、彼らを買い取ったことは人として褒められた行為じゃないし。


「ごめん、助けるための方便としてだったけど、君たちを買うという行為をしたことは謝罪させてもらいます。本当にすみませんでした」


「いやいや、フィナンシェ様頭を上げてください! そのようなことをされてはこちらが恐縮してしまいます。我らは救われたのですから謝罪は不要です!」


「フィナンシェ君……かっこいい。あたしの運命の人はやっぱりすごい人だわ」


 犬人族の人たちに奴隷として買ったことを謝っていると、俺のお尻が誰かに叩かれていた。  


「ド阿呆。なに勝手にリーダーが衛兵に捕まっとんねん。フィナンシェはほんまにクソ正直に生きとるの。まぁ、それがお前のええとこでもあるか。ワイも最近はお前の行動方針を学習したわ」


「あらー、そんなこと言ってラビィちゃんはフィナンシェちゃんが心配でしょうがなかったのよねー」


「ちゃうわボケー。ワイはパーティーの評判の心配をしとっただけやで。ほんまやで!」


「はいはいー。そういうことにしとくわね」


 いつもの如く、エミリアさんに胸に挟まれたまま抱っこされたラビィさんがバツの悪そうな顔をして照れてた。


 ラビィさんたちにも迷惑をかけちゃったな。


 冒険者は評判が第一ってラビィさんは常々俺に言い聞かせてくれてたから、今回の件で俺が衛兵隊に出頭したことで『奇跡の冒険者』の評判が悪くならないか心配してくれてるんだろう。


 はぁ、やっぱりもっとしっかりと社会の仕組みを勉強しないと、そのうちもっと大きな失敗をしそうだ。


「ラビィさん、エミリアさん、お二人にもご迷惑おかけしました。今後はしっかりと考えて――」


「まぁ、ええわ。お前の失敗は仲間であるワイら支えたる。安心してそのまま突っ走ればええ」


「そういうこと。それにね……フィナンシェちゃんはいい仕事をしたわ。さぁ、ご挨拶して」


 エミリアさんの背後に誰か隠れているみたいだな……。


 誰だろうか……。


 エミリアさんの背後から押し出されてきたのは、犬耳の幼女コレットだった。


 目に涙を溜めてウルウルしながら、綺麗な花束を持っている。


「フィナンシェお兄ちゃん!! ラディナお姉ちゃん!! ご出所おめでとうございます!! 今回はコレットたちを助けてくれてありがとうございましたっ!! こんなお礼しかできないけど受け取ってください!!」


「はい、よくできましたわ。さすがわたくしとラビィちゃんの養女なだけのことはあるわね」


 え? エミリアさんがいつの間にか子持ちになってるっ!!


 コレットが、ラビィさんとエミリアさんの養女っていったい何が起こったの!?


 意味がちょっと理解できないんですけど。


 隣にいるラディナさんも困惑した顔をしているし。


「え、えっと理解が追いつかないんだけど……コレットが何でラビィさんとエミリアさんの養女になってるのさ?」


「ワ、ワイは子供にした覚えはないで! エミリアが勝手に言っとんのや! ワイは独身を生涯貫き通すってきめとんのやぞ! 子持ちとかないわー」


「コレットね……もうお家もないし、お父さんもお母さんもいないって言ったら、エミリアさんがうちの子になりなさいって言ってくれたの。だから、コレットはラビィパパとエミリアママの子供になりました」


 そうか、コレットたちはどこかの島の戦争捕虜として黒髭商会に連れてこられたって言ってたはずだ。


 戦争中に両親を亡くして、こんなところまで連れてこられたうえ、一人でってなればそりゃあ心細いか。


 それにしてもエミリアさんって意外と面倒見がいいのかもしれないな。


「はい、よくできたわね。さすがわたくしとラビィちゃんの子だわ」


「えへへ、コレット、エミリアママに褒められちゃった」


「エミリアさん、刻々とラビィの外掘りを埋めてるわね。子供ができちゃったらラビィも観念するしかないものね」


「いややぁ。ワイは独身を謳歌するんやーむぐう」


 エミリアさんの胸の中でラビィさんがまたイヤイヤしていた。


 そんなに嫌がらなくても、お似合いの二人だと思うんだけどなぁ……。


 確かにちょっと魔法攻撃が強力すぎる気はするけども。


「ハハハ、ラビィ殿は嫌がってるがあれは照れ隠しだろうて。今日はフィナンシェ君たちの出所祝いに我が家で食事会を準備しておる。さぁ、行こうか」


「フィナンシェお兄ちゃん! コレットね、お兄ちゃんのために一生懸命にご飯の準備したんだ。だから、早く食べて欲しいよ」


「コレット! フィナンシェに手料理を食わせるのは父ちゃんは許さへんで! 全部、ワイが食ったるわい」


「ラビィパパの分は別に作ったから大丈夫だよー」


 結局、ラビィさんも娘ができて嬉しいんじゃないですか。


 ロリー・バートさんの言う通り、さっきのは照れ隠しだったんだな。


「フィナンシェ君、じゃあロリー・バートさんやコレットちゃんのお言葉に甘えてみんなで食事を食べるとしましょうか」


「そうですね。お腹も空いてきたことですしご飯食べますか」


 俺たちはコレットに手を引かれ、その日の夜はロリー・バートさんの邸宅で犬人族の人たちとともに食事を楽しんだ。


 こうして、アメデアの街で奴隷売買をしていた黒髭商会は一網打尽にされ、街で奴隷市が立つことはなくなった。


 おかげで住民たちから、俺は街の奴隷売買の連中をたった一人で壊滅させたすごい冒険者とかいう間違った情報が広がっているらしいと聞かされ、食事会の間ずっと色んな人に謝っていた。


本日の更新をもちまして第二章は完結となります。


第三章以降は毎日更新体制を改めさせてもらい、週二回、月曜日と木曜日12:00よりの更新とさせてもらうことにしました。


またカクヨム様で開催中のカクヨムコンにこの作品は参加させておりますので、カクヨムのアカウントある方は読者選考を応援して頂けると幸いです。


今後ともRe:サイクル!を応援のほどよろしくお願いいたします。

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