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第四話 剣の威力

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「あの、フィナンシェ君。あたし、しばらくお風呂入ってないから変な匂いとか……しない?」


 抱き着いていたラディナさんが自分の匂いを気にしていた。


 全く不快な匂いなどしない。


 むしろ、甘く感じる匂いがする。


「ラディナさんから変な匂いなんてしないよっ! それ言うなら、俺の方が気になるよ。ほら、今日はずっとゴミ拾いしてきたからさ……」


「フィナンシェ君、ゴミ拾いしてたんだ。すごい! えらいよね、若いのに。えらい、えらいよ」


 ラディナさんがそっと頭を撫でててくれた。


 人に褒められるなんて久しぶりだ……こんな風に俺を褒めてくれたのは、祖母くらいだったなぁ……。


 そういえば、ラディナさんはどこの人だろうか。


 街では見かけたことない顔だし、どこか別の場所からきたのかな。


 それに首輪も気になるし、聞いてみるか。


 ラディナさんの胸に埋もれていた顔を出す。


「そ、そう言えば、ラディナさんはミノーツの街の住民じゃないですよね? どこから来たんです?」


「あたし? あたしは北部の山間にあるラクサって村の出身よ。ここから一週間くらい北に向かったところ」


 聞いたことない名前の村だ。


「知らないでしょ? 山間の寒村だったから見ての通り生活は苦しかったけど、村のみんなで頑張って暮らしてたの。こう見えても開墾とか結構得意なのよ」


 着ている衣服と、日に焼けた肌が彼女の村の苦しい生活のすべてを物語っていた。


 でも、開墾とか、絶対に解体スキルでやってた気がするんだけど……。


 開墾が得意だというラディナさんに、そう言いたかったが飲み込んだ。


 そんなことよりも、この場所にいた理由を聞く方が先決だよね。


「でも、そんな北の村で暮らしてたラディナさんが、なんでこんなところでゴブリンに襲われてたんです?」


「住んでた村を襲われてね……。若い女は全員オークへの献上奴隷として連れてこられたわ。あたしは隙を見て解体スキルで檻を壊して逃げ出したの」


 俺の顔に彼女の涙がポタリと垂れた。


「え……オークへの献上奴隷って……」


「あたしを襲っていたゴブリンたちの親玉。この近くの森を縄張りにしてるみたいよ」


 さっきのゴブリンたちはラディナさんの村を襲ったゴブリン集団の一部であったらしい。


「そうでしたか……でも、ラディナさんが助かってよかった……」


「ほんと、フィナンシェ君のおかげよ。ありがとうね」


 身長が高いラディナさんがギュッと俺を抱きしめてくれてくれた。


 彼女の胸が顔を圧迫する。


 知り合ったばかりだけど、ラディナさんはやはり接触過剰気味だなと思った。


 そんな風に二人で抱き合っていると背後から音が聞こえた。


 ぐぎゃああぁあっ!


 音の主は先ほど逃げたゴブリンたちだ。


 どうやら仲間を引き連れて戻ってきたみたいだ。


「さっきのが仲間を連れてきたみたい……フィナンシェ君、どうしよう」


「ラディナさんは俺の後ろに! これでも冒険者だからゴブリンくらい――」


 現れたゴブリンたちの数は一五体。


 ソロ冒険者の俺では荷が勝ちすぎる相手の数である。


 けど、ラディナさんを置いて逃げるわけにはいかないと感じていた。


 最初に手に入れた眩しい輝きを放つ剣の方を構えると、俺は相手の出方を待った。

 

 ガキイィイギイ!!


 敵意を剥き出しにしたゴブリンたちが、一斉に俺へ向け駆け出し始めた。


「ラディナさん、俺が時間を稼ぐから街まで走って! このまままっすぐ向こうに走れば街に着くから!」


「で、でも……フィナンシェ君が」


「早く! 俺がここで時間を稼いでいる間、街で助けを呼んできて欲しいんだ! 頼む!」


「で、でも、フィナンシェ君は置いていけないわ!」


 ラディナさんと問答をしている間にゴブリンたちは、俺たちを囲んでしまった。


 すでに退路側にも回り込まってしまっている。


「遅かったか……ラディナさん。俺はあんまり強くないから守り切れなかったら、ごめん」


「だ、大丈夫! きっと二人なら何とかなるから! あたしも戦うし! フィナンシェ君が動きを止めてくれたら、あたしがゴブリンごと解体してみるから!」


「そうならないで済むよう、頑張ってみる」


 一五体のゴブリンを前に戦う覚悟を決めた。


 ギャギャアアァッ!


 こちらを威嚇し、剣を構えて近づいてきた奴に向け剣を薙ぎ払った。


 薙ぎ払った剣から、今まで感じたことのない手応えがあった。


 途端に近づいてきていたゴブリンの胴体が上下に分れ、血を噴き上げると崩れ落ちる。


 斬り口がめちゃくちゃ綺麗なままだ。


 それに、斬り分けられたゴブリンの身体がまだピクピクと動いてる。


「す、すごい切れ味……俺の腕じゃないよな……やっぱ最初の剣は、ただの剣じゃなかった」


「それって、最初の剣だよね……フィナンシェ君が初めてスキルが発動したって言ってたやつ……」


 剣の斬れ味に驚く俺たちに、仲間を斬られ激高したゴブリンが剣を振り下ろしてきた。


 キィン!


 ゴブリンが振り下ろしたサビた剣先は、俺の剣に触れると断ち切れてそのまま別の場所に飛んでいった。


 そして、がら空きになった胴を一気に薙ぎ払う。


「すげえ、この剣は剣ごと斬れる……これなら、俺の腕でも……やれるっ!」


 剣の性能がとんでもないものだと分かったことで、戦況は不利ではなくなった。


「ラディナさん、俺がこの剣で一気にゴブリンたちを倒します!」


「ちょ、ちょっとフィナンシェ君!」


 俺は剣を構え直すと、ゴブリンたちの集団に向けて剣を振るった。


 剣の才能はまったくない俺だが、手にした剣のおかげで触れるだけで次々とゴブリンが倒れていった。


 そして、最後の一体が地面に倒れた。


「ふぅー、なんとか倒せた」


「す、すごい。一人で全部倒しちゃったよ。フィナンシェ君!」


 ゴブリンを倒し終えたところで、様子を窺っていたラディナさんが背後から抱き着いてきた。


 背中に彼女の柔らかい膨らみが当たる。


「あ、あの! ラディナさん、そ、その背中に……」


「フィナンシェ君、カッコよかったわ。あたし、また一段と惚れちゃった。さすが、運命の人……はぁ、素敵」


 背後から抱き着いた彼女は、グイグイと大きな胸を押し付けてきた。


 お、女の人の胸ってやっぱ柔らかいなぁ……。


 でも、誰からも馬鹿にされてる俺に抱き着いている姿を、街の人に見られたらラディナさんが困るだろうな。


 そろそろ、離れてもらおう。


 俺は背後から抱き着いていたラディナさんの手を取ると、彼女に向き直る。


「ラ、ラディナさん! そう言えば、村の女の人も囚われてるって言ってましたよね?」


「う、うん。五人ほど一緒に囚われてて、一緒に逃げようって言ったけど残ってた子たちがいるわ」


「ラディナさん、その場所に案内できます?」


「え、ええ!? みんなを助けてくれるの!?」


「あ、はい。今の俺ならオークとも戦えるはずです。だから、みんなを助けるため案内を頼みます」


 ラディナさんが俺を見て少し考え込んだ。


 頼りない冒険者だという自覚は俺にもある。


 けど、この剣の威力であれば、たとえ俺みたいな底辺冒険者のソロ討伐が厳しいオークがいても勝算はあるはずだ。


 ラディナさんだけじゃなく、その女の人たちもゴブリンやオークの餌食になる前に助けないと。


「ありがとう、フィナンシェ君。やっぱり、君はあたしにとって運命を預けられる人ね。さぁ、檻はこっちよ」


 助けにいく決断をしたラディナさんは、檻のある場所へ向かい俺の手を引き駆け出した。


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