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第三十三話 大型構造物

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 魔物の脅威が去って、あらためて船員たちは船の損傷のチェックを始めていた。


「はぁ……これだけ損傷はアメデアの街から船大工を連れてこないと直せないぞ……。沿岸用の小型帆船とはいえ、こんな場所で修理となったら莫大な金が……」


「座礁したせいで、積んでた荷物も海水でほとんどダメになったようだ。」


「座礁時の傷くらいなら応急処置できそうですけど、ハサミ蟹に開けられた船腹の大穴が致命傷でしたね……」


「はぁ、マジか……こんなんじゃ、今月は赤字で給料もでねえぞ……」


 船員さんたちがすごく困っている感じだ……。


 リサイクルスキルの力で破損個所とか再構成できればいいんだけど……。


 力のことは知られたらマズいって言われてるしな。


 俺が助力を申し出れずにモジモジしていると、背後から声がした。


「どうやら、お困りのような。ワイにちょっといい提案があるんやけど、そちらの船長さんは聞く気あるか?」


「兎人族? 珍しい種族に出会ったな。こっちは大損害のおかげで資金繰りに困って藁にもすがりたい気分なんだ……。あんたが言う提案が本当にいい提案なら喜んで乗るぞ」


 一番大きなため息を吐いてた短髪の小柄な人が、あの船の船長だったのか。


 色々と船長の心労が重なってて、皺が他の人より多い気がする人だなぁ。


「実はな、そこにおるうちのリーダーなんやが、剣の腕はさっき見た通りだが、他にも特技があってな。船の修理もできるかもしれんのや」


 ラ、ラビィさん!? それって言っていいことなの!?


 俺には黙ってろって言ったよね!


 ラビィさんは眼帯を上げると、船員たちに赤い眼を見せていた。


「けどな、結構すごい技術なんで、他人に見せて技術を盗まれるってのを嫌っとるわけや。そこでや! あんたらが黙って目を瞑って船を任せてくれたら、もしかしたら直せるかもしれへんでぇ」


 うさんくさっ! うさんくさいよ、ラビィさん。


 いくらラビィさんの力を使っても、そんな話されて、簡単に信じられるわけが……。


 そっと、船員たちの姿を見ると、ギラギラした目で俺を睨むように見つめていた。


「そ、その話は本当か!! 目、目を閉じるだけでいいか!! それで船が直るかもしれないなら、俺は目を閉じるぞ!! みんなも閉じろ!!」


「「「お、おっす! 了解っス」」」


 船員さんたち、めちゃくちゃ乗り気になってるじゃないすか……。


 目が血走ってる人もいるし……。


 そんな船員の様子を見ていたラディナさんが俺に耳打ちをしてきた。


『フィ、フィナンシェ君。あたしたちの力で船って直せるのかな……』


『それに関しては俺もすごく興味があるんですよね……試してみたいですよね』


『フィナンシェ君もそう思ってた? やっぱり、あたしたちって……』


『……運命が引き寄せた仲ですからね。考えてることは同じっぽいです』


「フィナンシェ、船長たちの了解は得られたようやでー。いっちょやってんかー」


 ラビィさんが俺の尻を叩いてくる。


 相変わらず無茶苦茶な人だよな……ラビィさんって……。


 でも、おかげで船の修理に挑戦ができるってことだし、やっぱ頼りにはなるよな。


「分かりました。すぐにラディナさんと修理できるか確認してみますね。行こう、ラディナさん!」


「うん、行こうっか!」


「おーし、船員たちは今からフィナンシェが仕事始めるから、街道にいる定期輸送隊の連中と飯でも食うといてやー。話はつけてあるよってに」


 ラビィさんが、目を閉じていた船長始め、船員たちを連れて街道の方へ歩いて行ってくれた。


 人目を遠ざけてくれるってことだよね。


 リサイクルスキルが普通に発動するなら、すぐに直っちゃうけど、この場合、多少時間かけた方が直したっぽい気がするよな。


 俺はそんなことを思い浮かべながら、ラディナさんと一緒に座礁した船へ向かった。



 やっぱ船の横っ腹にでっかい穴が開いてるよな……。


 船倉内にもちゃぷちゃぷって言うくらい海水が入ってるし、修復して後はみんなに手伝ってもらって海に浮かべないといけないかも。


「フィナンシェ君、解体してみていい?」


「端っことかからいってみますか。リサイクルスキルがこういった大きな物にどう効果を発揮するか分かりませんからね」


「そっか……今までで一番大きい物は荷馬車くらいしかやったことないもんね。分かったわ、穴の部分の端っ子を解体してみるわ」


 そっとラディナさんが皮の手袋を外すと、破損個所の端から解体を始めた。


 っと……一定以上の大きさの物はすべてを解体するってわけじゃないみたいだ。


 船の一部が廃品化しているだけだよな……。


 ラディナさんの解体スキルによって解体されたのは、船腹の半分程度であった。


「全部はいけなかったわね。あとはフィナンシェ君のお仕事だよ」


「了解です。リサイクルできるかやってみます」


 ―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:31

  経験値:665/1680

  対象物:☆船腹外板(分解品)


 >船腹外板(普通):100%

 >船腹外板(中品質):100%

 >船腹外板(高品質):100%

 >船腹外板(最高品質):70%

 >船腹外板(伝説品質):60%

―――――――――――


 問題なく再構成はできそうだ。


 でも、全体の修復じゃなくって一部修復ってことだよな。


 まぁ、品質はできるだけよくしておいてあげた方が何かと都合がよいよね。


 >船腹外板(高品質)に再構成に成功しました。


 >船腹外板(高品質)


  資産価値:一万ガルド

 

  合成レシピ:木製外板×木タール


 再構成を終えた船腹外板が新品同様になっていた。


 だが、やはり船腹の一部しか破損は修復されていない。


「やっぱり全部は修復されなかったようね。他の部分も解体していくわ」


「はい、お願いします。ラディナさん!」


 俺たちは船腹に空いた穴を次々に再構成して塞いでいった。




 周囲全部を高品質化して再構成された船腹は見違えるほど綺麗になっている。


 上層部はぼろっちいけど、あんまり手を入れ過ぎるのも相手に悪いだろうし……ここら辺が限度かな。


「ふぅ、いちおう穴は塞がったようだね」


「結構、ぼろっちい船だったけど綺麗になったわ。解体スキルの有効範囲も大体把握できたし、大きな構造物はいくつかに分割して再構成しないといけないみたいね」


「ですね。あとは、みんなを呼んで船倉の海水を汲みだせば――」


「海水で思い出したんだけど、あたしの解体スキルって海水も解体できるみたい。水は解体できないのにね」


「え? 海水も解体できるんです?」


「ええ、ほらこれ見て」


 ラディナさんが、波打ち際に寄せて引く海水に触れると一部が光を帯びていた。


 確かに水に触れてもラディナさんの解体スキルは発動してなかったけど……。


 同じ液体の海水にはなんで反応してるんだろうか。


 あっ! でもあの色の光って、廃品合成できる色だよな……。


 海水から何が合成できるんだろうか。


「ラディナさん、海水が合成できるみたいですよ。何ができるかやってみます」


「え? ええ、でも海水ってしょっぱいって聞いてたけど合成したら何ができるのかしら」


 廃品化された海水を両手で触れると、合成できるようになった。


 >右手:海水(廃品) 左手:海水(廃品)


 >廃品合成可能品がセットされました。


 >この二つを廃品合成しますか?


 了承っと。


 ―――――――――――

 リサイクルスキル

  LV:31

  経験値:670/1680

  対象物:☆塩(分解品)


 >塩(普通):100%

 >塩(中品質):100%

 >塩(高品質):100%

 >塩(最高品質):70%

 >塩(伝説品質):60%

―――――――――――


 ふむ、海水を廃品合成すると塩が手に入るのか……。


 塩は調味料や保存料として重宝するってラディナさんも言ってたよな。


 わりとみんな欲しがる物が、海の水から作り出せるのか。


 >塩(高品質)に再構成に成功しました。


 >塩(高品質)


  資産価値:二〇〇〇ガルド

 

  合成レシピ:海水×海水


「ラディナさん、塩ができたみたいです。こんな真っ白な塩は俺も初めて見たけど……」


「え? それ、お塩なの? お塩ってもっと濁った色だった気がするけど……味見してみていいかしら?」


 ラディナさんが俺の両手に山盛りとなった塩に指をつけると、自らの口に運んでいった。


「しょ、しょっぱー。確かに塩ね……しかも、変な雑味もないおいしい塩だわ。ちょうどいい、フィナンシェ君の手に持っている分は料理用にもらうわ」


 ラディナさんが味を気に入ったようで、自分のポーチから空の小瓶を出すと塩を入れてくれた。


「海水から作れるとは思わなかったですねー。これでまた一つリサイクルできるものが解明されましたよ。そうだ! どうせなら船倉の海水も塩に変えて、あの船長さんたちにあげたらどうでしょうかね。結局、海水は抜かなきゃならないですし。お金にも困ってそうでしたし」


「さすが、フィナンシェ君。そう言うと思ったわ。じゃあ、空箱から集めないと結構な量ができると思うし」


「そうですね! 中身が流れて空になった木箱も結構ありそうですし、そこに合成した塩を詰めてあげれば手間も省けると思います」


 俺たちは急いで近くの空の木箱を集めると、船倉に降り内部に充満していた海水を廃品合成していった。


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