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第二十三話 ラビィの素性

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「おえぇえ、昨日の晩は飲み過ぎたわ。水くれ、水。あー、頭いったいわー。冒険者ギルド着いたらワイは膝枕してもらって休むでぇ」


「はい、ラビィさんお水。わたしがちゃんと膝枕して看病します!」


 村の女の子が二日酔いのラビィさんに水の入った革袋渡していた。


 昨夜は自宅でお祝いと称した夕食で、一人たらふく酒を飲んでいたラビィさんが二日酔いになっていた。


「ラビィさん、荷馬車が左右に揺れてますから! まっすぐ、まっすぐに走らせてください」


「おう、心配すんなや。こう見えてもワイは酔っ払ってもまっすぐ走れる男やからな」


 いやいや、左右に大きく揺れてますし!


 は、早く冒険者ギルドに着かないかな。


 左右に揺れる荷馬車を心配しながら、なんとか俺たちは冒険者ギルドの前に到着することができた。


「ふぅうう、なんとか事故なく到着できた」


「ワイは大丈夫やっちゅーに。酔うても絶対事故らへんでぇ。おえぇえ」


 絶対、その言葉は酒飲んで事故起こす人の言うセリフですって、ラビィさん。


「あ、あのラビィさんは寝ててもらっても大丈夫です。帰りまでには酒を抜いておいてくださいね」


「おぅ、そうさせてもらうわ。ほら、ワイは荷馬車の中で寝るで膝枕せい」


「はーい。わたしがラビィさんのお世話しておきまーす」


 ラクサ村の女の子が一人、ラビィさんのお世話係を買って出てくれた。


「ちゃんと酒抜いておくのよー。迎え酒とかしてたら、解体するわよラビィ」


「わあっとるわ。ほら、はよ働いてこいやー。おえぇえ」


「はい、じゃあ荷馬車はお願いしますね」


 俺たちはラビィさんたち二人に荷馬車を任せると、ギルドマスターのフランさんを探しに冒険者ギルドの中に入った。



「おい、あいつ『ゴミ拾い』のフィナンシェだろ? なんか、冒険者じゃ食っていけないから廃品回収業を始めたらしいぞ」


「ハハッ! 『ゴミ拾い』ばっかりしてるし、お似合いだろ」


「でもなんか、急に羽振りよくなったとか。高級宿に泊まったり、高級レストランで豪遊とか、借金の担保として取り上げられた家も買い戻したらしい」


「まじか……あいつ、フィガロに数百万ガルドの借金あるのにそんな金どこから出てきてるんだよ」


「片目の兎人族の冒険者とつるみだしてから、急に金回りがよくなったそうだ。くっそ貧乏で底辺冒険者のフィナンシェが金を調達できるわけないから、その兎人族のやつは金持ち冒険者なのかもしれんぞ」


「しかも、若い女たちを侍らせて来てやがる。フィナンシェの隣にいる女なんて、この辺でも滅多に見ない綺麗な女だぞ」


 冒険者ギルドに入ってきた俺たちを見た冒険者たちがヒソヒソ話をしていた。


 えっと、やっぱ結構話題になっちゃってるな……。


 結構、派手にお金使っていたし。


 ラディナさんのことも話題になっちゃってるよ。


「フィナンシェ君、みんな見せつけちゃおうよ。あたしはフィナンシェ君の女だし」


「あ、ちょっとラディナさん?」


 ニコニコと笑うラディナさんが俺の手に腕を絡めてきた。


 ざわつきの声が一層大きくなる。


 すると、背後から俺に声がかかった。


「ふん、私に借財を残した分際で麗しのラディナさんを自分の女のように連れ回すとは。しかも、自分のゴミ拾いを手伝わせているらしいじゃないか」


 この主は借金相手の金髪馬鹿こと、フィガロだった。


 パーティーの仲間たちと一緒に冒険者ギルドへ依頼を探しにきていたらしい。


 そんなフィガロは、ラディナさんに興味があるようで、さっきからチラチラとそちらを見ている。


「フィナンシェ君、全く君という男は……無神経すぎる男だ。ラディナさんとは釣り合わない。さぁ、ラディナさん、私とこれから食事に行きませ――」


「うるさい金髪馬鹿。あたしは、フィナンシェ君の婚約者でもう一緒のベッドで寝てるんだからねっ!」


「なっ!?」


 ざわつきが更に一段と大きくなった。


 ラ、ラディナさん!? 何を言って! 確かに事実ですけども、今ここで言わなくても。


「それに今からフィナンシェ君とのラブラブなお仕事が待っているんだから消えて」


「ラ、ラディナさん、私は貴方をそのゴミ野郎から救ってあげようと――」


「邪魔、邪魔。忙しいんだから話しかけないでよ。金髪馬鹿! さぁ、フィナンシェ君。ギルドマスターのフランさんに会いに行こう」


「金髪馬鹿、全く相手にされてない。ご愁傷様」


「ラディナさんは、フィナンシェ君にぞっこんだもんねぇ」


「空気読め、金髪馬鹿」


「残念イケメンはないわー」


 ラディナさんの冷たい態度と、ラクサ村の女の子たちの追加攻撃でフィガロが膝から崩れ落ちた。


 そんなフィガロを無視して、俺たちはギルドマスターのフランの待つ、カウンター席の方へ向かった。



「フィナンシェ君、面白い見世物を見せてもらったな。これで、面目を潰されたフィガロのやつは、ほとぼり冷ますためしばらくは真面目に冒険者稼業に精を出すだろうさ」


 カウンター席には黒髪を短く刈り込んで顔中に傷を持った男が話しかけてきた。


 相変わらずフランさんの顔面の圧はすごい。


「フランさん、お忙しいところお騒がせしてすみません。アレックさんからのお話って聞いていらっしゃいます?」


「ああ、アレックから聞いているぞ。フィナンシェ君が始めた廃品回収業のお手伝いをしてくれって頼み込んできてな。あいつがオレに泣きつくことなんてほとんどないから驚いているんだが、頼まれたからにはあいつの面子を立たせてやらんとな」


「ありがとうございます! 冒険者ギルドで本当にいらなくて困っている物を引き取らせてもらえばいいんです」


「本当にゴミみたいな物で問題ないのか?」


「はい! フランさんが処分に困っている物で大丈夫です」


 冒険者ギルドで不用品って出るのかは疑問だけどさ。


 本当にみんながいらない物でも、俺たちにとってはお宝になる品物なんでどんなゴミでも頂きたい。


「分かった。倉庫にしまってあって困る物を処分してもらうと思う。だが、その前に一つだけ確認したいんだが」


「はい、なんでしょう?」


「さっきの噂話の件だ。多くの冒険者から、フィナンシェ君の金回りが急に良くなったって聞いているんだが、何か犯罪行為はしてないだろうね? ギルドマスターとして犯罪に加担している者を見逃すわけにはいかないのだが……」


 えっと……ゴミとして捨てるものをスキルで再構成して、価値を高めて売っただけだし犯罪ではないよね。


 ちゃんと持ち主にも許可もらって処分品を引き取っているし。


「はい、犯罪行為なんてしてないです」


「では、なんで急に金回りが良くなったのかね?」


 困ったなぁ……スキルのことはラビィさんから話すなって口止めされているし。


 ……そっか! さっき冒険者が言ってた通りに、ラビィさんのお金ってことにしとけば問題ないよね。


「あ、はい。それは俺が新しく組んだSランク冒険者のラビィさんから頂いた支度金です。多すぎるって言ったんですけど、受け取ってくれと言われまして……。申し訳ないので、街を色々と案内してまして。新しく廃品回収業もラビィさんに勧められて始めたんです」


「ちょっと、フィナンシェ君?」


 俺はラディナさんに目で合図を送った。


「あ、そうだったわね。あの眼帯付けた兎人族のラビィが支度金としてお金くれたのよねぇ」


 さすがラディナさん、俺の意図をすぐに汲んでくれた。


 けれど、フランさんの視線が先ほどよりも厳しい物に変化しているのが見えた。


 え? もしかして、何かマズいことになってます?


 厳しい視線をしたフランさんが、俺の両肩に手を置いて顔を近づけてくる。


 顔面の圧が、圧が怖いです。


「その眼帯付けた兎人族の冒険者は本当にラビィって言うのか? 間違いないか?」


「あ、はい。正式の名前は確かエルンハルト・デルモンテ・ラバンダピノ・エクスポート・バンビーノ・フォン・ラビィって長い名前だと思いましたけど」


 ラビィさんの正式名称は必死におぼさせられたもんなぁ。


 この数日でしっかりと覚えちゃったよ。


 ラビィさんの正式名称を知ったフランさんの身体が震え始めていた。


「お、お前の組んだ相手は、世界最強の冒険者パーティー『栄光の剣ソード・オブ・グローリー』の実質的リーダーだった『赤眼のラビィ』か!?」


 えっと、ラビィさんは確かにSランク冒険者だったけど、そんな大層な名前のパーティーに所属していたなんて聞いたことないなぁ。


「その『赤眼のラビィ』って人かは分からないですけど、俺に支度金くれたのは、兎人族の眼帯付けたラビィってSランク冒険者さんです」


「兎人族じたい珍しい種族だし、しかも眼帯付きでSランク冒険者って条件が付くのは『赤眼のラビィ』しかいないはずだ。フィナンシェ君、君があの伝説の最強パーティーリーダーだったラビィの新たな相棒だって……こりゃあ、大ごとだ」


 ラビィさんって、もしかして超有名人?


 フランさんの声がギルド内にいた冒険者たちに届き、ざわつきから喧騒に変化していた。


「お、おい! フィナンシェが赤眼のラビィのパーティー入りだとよ。一緒にいたあの兎生物がそんなすげえ冒険者だって気が付かなかったぜ」


「落ち着け、本物の『赤眼のラビィ』なのか? 偽物だろ?」 


「あの巨大魔物討伐伝説を作った、冒険者パーティー『栄光の剣ソード・オブ・グローリー』の実質的リーダーだったやつだろ」


「眼帯で隠している赤い眼で見られたら即死するって言われてるヤバいやつだろ!」


 な、なんか俺の知らないラビィさんの気がしてならない。


 そんなにすごい冒険者だったのか。


 でも、なんかすごい騒ぎになっている気がする。


 これってまずいよね。


「フ、フランさん、そんなことより整理する倉庫に案内してください。ほら、行きましょう」


「ちょ、ちょっとフィナンシェ君。オレはすぐに赤眼のラビィがこの街にいると各地の冒険者ギルドに伝えねばならない。悪いが案内は付けるから倉庫内のいらない物の処分は任せたぞ」


 フランさんがカウンター席の受付嬢を一人呼ぶと、俺たちの案内を申しつけ、奥の部屋に消えていった。

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