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第一話 運命の出会い

誤字脱字ありましたらご指摘お願いします。

「よぉ、フィナンシェ。今日もゴミ漁りご苦労さん」


 俺の仕事は冒険者で、今はクエストを受けて街の清掃活動中だ。


 男の言葉を無視して無言で道路のゴミを拾っていく。


「これ、やるよ。遠慮せずに受け取れ。オレたちはこれから冒険に行ってもっとすごいお宝を手にするからな」


 通り過ぎていく冒険者が、俺の目の前に価値のほとんどないクズの魔結晶を捨てていた。


 淡く光を発した魔結晶が俺の前に転がってくる。


「可哀想なことするなよ。いくらあいつが使えないスキル持ちだからって、ゴミ同然の魔結晶を捨てるのは酷くねえか?」


「だってよ。『リサイクル』とか意味わかんねーポンコツスキルを与えられた、『ゴミ拾い』の二つ名を持つフィナンシェだぜ」


「だから、そういうことを大きな声で言うなって――」


「剣の腕も魔法の才もなく、スキルすら使えないで、冒険者をやってるやつだから言われても仕方ないだろ」


「確かにそうだが、言葉を……」


「何が楽しくて日がな一日ゴミ漁りしてるのか教えて欲しいぜ。オレだったら恥ずかしくてすでに死んでるぜ。ハハッ!」


 連れ立って歩いていた冒険者たちが、俺を馬鹿にして目の前から去っていった。


「……そんなこと、俺が一番教えて欲しいに決まっているだろ……」


 自嘲気味に呟きながらも、目の前に転がったクズの魔結晶を拾う。


 今の俺は幼い時から憧れの職業だった冒険者をしている。


 だが、冒険者となった俺がやっていることは、子供でもできるゴミ拾いでしかない。


 こんなはずじゃなかった……。


 憧れの冒険者となって、信頼できる仲間と色んな街に行ったり、魔物を倒したり、誰も見たこともない財宝を探していたはずなのに……。


 なんで、俺に与えられたスキルは『リサイクル』なんて使えないスキルだったんだよ。


 剣の才能を与えてくれる『剣聖』なんてなくてもいい。


 魔法の才能を与えてくれる『大魔導』なんて超レアなスキルが欲しいなんて望んだことはない。


 ただ、普通の一般的なスキルがもらえれば、良かったのに……。


 神が俺に与えた『リサイクル』というスキルは、神官すらもその存在を知らない全く未知のスキルなんだよ。


「はぁ……このスキルは発動すらしてくれないし……」


 俺はゴミ拾いで薄汚れた手を見て、自分に与えられたスキルにため息を吐いた。


 当初は未知のスキルという物珍しさから、この街の冒険者たちも『超レアスキルの保持者』と持ち上げてくれた。


 トップランクの冒険者パーティーからも加入の声がかかり、見習いとして入ったこともある。


 けれど、『リサイクル』スキルは授かってから一度も発動しなかった。


 ただの一度もだ。


 そのことが原因でパーティーを追放されると、俺の持つ『リサイクル』スキルは、発動しないただのゴミスキルだとの噂が一気に広がった。


 噂が街中に広まった後、俺をパーティーに入れてくれるところはなくなった。


 パーティーに入れないぼっちの俺がやれるのは、最低ランクのクエストである街の清掃活動なのだ。


 このクエストは、冒険者ギルドが怪我や歳をとり生活に困窮した冒険者への救済措置に近い。


 はっきりいって、こんなクエストは普通の健康な冒険者は誰も受けないのである。


 だけど、ぼっち冒険者で剣の腕も魔法の才もない俺は生活の糧を得るため受けていた。


 両親はクエスト中に行方不明、育ててくれた祖母も病気で他界し、俺には住む家も財産もなく借金しか残っていないどん底生活。


 まさに底辺冒険者と言われても否定すべき言葉は持ち合わせてない。


「俺だって……俺だって……スキルが使えたら……こんなことしてない」


 借金に喘ぎ、皆に馬鹿にされ最底辺の生活をしていることに満足はしていなかった。


 スキルさえ、スキルさえ普通だったら……こんなみじめな生活を送らないで済んだのに。


 スキルが使えず自分を卑下するようになり、人と目が合わせられなくなって、俺はいつの間にか下を向いての生活が身についてしまっていた。


「はぁ……とはいえ、発動しないスキルなんてゴミと同じだよな……はぁ……」


 解決の糸口すら見出せない生活にため息を吐きながら、ゴミ拾いを再開した。






 街中の清掃を終え、集めたゴミを捨てるため街外れの小高い丘にある巨木に来ていた。


 すると、巨木の方からゴブリンたちの唸り声が聞こえてきた。


 うがああぁああ!


「…………こ、来ないで! 来るなら……」


 声にした方に視線を向ける。


 ゴブリンの群れに追いつめられた女性が、巨木の根を背にして囲まれていた。


「今助けるから、そこを動かないで!」


 すぐに足元の小石を取ると、リーダー格らしいゴブリンに向け全力で投げる。


 大型の魔物は強くて、ぼっちの俺では倒せない。


 けど、最弱の魔物であるゴブリン三体程度なら倒せない相手ではなかった。


「俺が相手になる!」


 小石によってダメージを負ったリーダー格のゴブリンが剣をとり落とす。


 すぐに分が悪いと判断したのか、リーダー格のゴブリンは逃げ出していった。


 リーダーの逃走に仲間のゴブリンも慌ててその場を立ち去った。


「だ、大丈夫かい? 怪我とかない?」


 巨木の根で座りこんで震えていた女性に駆け寄り、声をかけ手を差し出した。


 き、綺麗な人だな――


 俺は思わず息を呑む。


 黒く長い髪に漆黒の瞳をした、自分より身長も年齢も上に見える美しい女性だった。


 よく見ると、日に焼けた健康そうな肌に泥と砂で汚れた衣服を着ていた。


 そして、首に革製の首輪を着ているところを見ると、どこかの逃亡奴隷なのかもしれない。


 ただ、衣服のみすぼらしさに比べ、両手の革の手袋がやたらと頑丈そうなのが気になった。


「あ、ありがとう。で、でも、その手であたしに触れないで!」


 差し出した手を見た彼女が、血相を変えて拒絶した。


 今の俺はここに来るまでに散々ゴミ拾いしてきたから、とても汚い身なりをしていた。


 なので、そんな汚い俺に触れられたくないとの意思表示だと受け取った。


 確かにこんな汚い俺に、誰も助けられたくないよな……。


 自分の格好を思い出ししょぼくれた気分になる。


「ご、ごめん。立ち上がるのに手を貸そうと思って……す、すぐに街の人呼んでくるから!」


「ち、違うの! そういう意味ではなくて――。あたしは触れた人を『解体』してしまうスキル持ちなの!」


「はぁ? はぁ……?」


「だから! 手に触られると解体スキルが発動するから触らないでって言ったのよ。気を悪くしたらごめん……」


 女性が必死になって、俺の勘違いを正そうとしていた。


「は!? 触れた人を『解体』!? 意味が良く分からないんだけど……」


「これを見れば分かるわ……」


 女性が足元に転がったサビた剣を取る。


 すると、両手にしていた革製の手袋を外し、素手で触った。


 その瞬間――サビた剣がばらばらの部品に変化して彼女の手の中に納まった。


「えっ!? ええっ!?」


「この通り、あたしが素手で触れると勝手に『解体』スキルが発動して、全ての物を解体してしまうの……」


 女性が元サビた剣だった部品を俺に見せていた。


 その様子を見せられて、脳裏に自分が神官たちにした質問が思いだされた。


 神官たちの話では、現在確認されたスキルは二〇〇ほどらしい。


 自分に与えられたスキルが未知の物であったため、神官たちの協議の場に何度も呼ばれ、すべてのスキルを照合されたのを覚えていた。


 だが、そんな俺でも目の前の女性のスキルは見たことも、聞いたこともないスキルだった。


「『解体』スキルなんて存在するんですね……」


「だから、万が一の事故が起きないよう君に『触れないで』って、きつい言葉が出ちゃったの。せっかく助けてくれたのに、あたしの言葉が足らず気を悪くさせてごめんね」


 女性は自ら立ち上がると、俺に深々と頭を下げた。


 その真摯な姿に、逆にこちらが悪いことをしたかのように感じてしまった。


「そ、そんなに謝らなくてもいいですよ! 頭を上げてください」


 深々と頭を下げていた彼女の謝罪を受け入れる。


 すると、彼女は顔を上げニッコリと俺に微笑みかけてきた。


 か、可愛い……。


 俺は魅力的な笑顔によって、興味を惹かれていた。


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