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表裏  作者: 神田
2/4

2

あれから一体どれだけの修羅場を潜り抜けて来たのだろうか。

いつしか彼らと共にいる事が誇りとなり、生きる糧となってきていた、そんな頃の事だったか。


もう敵本部は目前、道中何度も死にそうになり、何度も困難に行き当たった。

が、それでも俺達はなんとか戦い抜き、時には泥水を啜るような事もあったが生き抜いてきた。

皆お互いを信頼し、背中を任せ合い、同じ志を持って戦っていた、そう思っていたのだが。


「こんな時にこんな話をするべきじゃあないかもしれんが」

男、名前を言っていなかったな。

ビリー。

それが彼の名前だ。

彼が何か決心したような面持ちでふっ、と漏らしたその言葉。


「俺は英雄になりたかったんだ」

「誰もが崇め讃え、後世まで語り継がれる」

「そんな英雄になりたかったんだ」

そう言うとビリーは悲しそうに、しかし微笑みながら此方に銃を向けた。


「すまない、共に戦った戦友をこんな形で裏切ってしまって」

「お前らは勇敢に戦い、そして散っていった」

「その意思を継ぎ、俺は戦い抜き、平和を取り戻した」

「物語を完結させる為にお前らにはここで死んでもらう、すまない」


「ビリー、何故?」

悲しげに呟いたのはビリーの恋人、クリスだった。

クリスはあまり多くを語りたがらぬ寡黙な女だった。

戦災孤児で、彼女を引き取って育ててくれた夫妻を殺した軍への復讐の為、レジスタンスへと参加したようである。

そんな彼女を優しく受け入れたのはビリーだけであったようだ。


クリスがビリーを説得するもビリーは構えを解かない。

ビリーが銃を握る手に力を込める。

銃器の手入れは彼がしている為此方に武器は無い。

トリガーが引かれる。

刹那。

俺の眼前に何者かが立ち塞がる。

メアリーだ。


メアリーは27歳の兵士だ。

元々は軍の諜報部に所属していたらしい。

とても聡明で美しく、常に笑顔を絶やさぬ皆のムードメーカーであった。

彼女の夫は軍の機密部隊に属していたそうだ。

在らぬ疑いを掛けられ処刑されてしまったらしい。

彼女は夫の仇討ちの為、何故夫が殺されたのかを知る為にレジスタンスへと参加した。

そんな彼女が今、俺の眼前で横たわっている。


共に戦ってきた仲間を撃ち殺したというのにビリーは顔色一つ変えずに此方に銃を構え続けている。

「悪運が強いな、ジャック」

ビリーが微笑む。

どうするか、いや、考えたところで策など無い。

一か八か、突っ込むしか無い。

そう考え構えた時、クリスがビリーの隙を突きタックルをかました。

よろめくビリー、怒号を上げるクリス。

「今だ、やれ!」

クリスに感謝しつつ俺はビリーから銃を奪い取った。

「チェックメイト、だ」

冷徹にビリーを見下ろし、俺は冷たくそう告げた。

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