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落ちている。
ただただ落ちていく。
何を思うでも何をするでもなく、ただひたすらに底へと。
深く。
深く。
深く。
どれ程の時間そうしていただろうか。
気が付くと私はそこにいた。
けたたましく鳴り響くサイレンの音。
逃げ惑う女子供の集団、怒号を上げながら何かに向かって行く者達。
どうやらここは戦場のようだ。
よくよく自らの格好を確かめてみると成程、私は兵士としてこの場にいるらしい。
のんびりと装備のチェックをしていると突然頭をはたかれた。
「馬鹿野郎!何ボケっとしてやがる、死にてぇのか!」
なんともまぁでかい声で喋りやがる、何様なんだ此奴は…。
そう思いつつもここは戦場。
とりあえず「すまん」と一言だけ発し、続いて「君は?」そう聞いてみた。
「お互い生きるか死ぬかだ、名前なんぞどうでもいい」と彼は悲しそうに言った。
彼と共に敵を掃討しつつ導かれるままに連れていかれた先には女性二人がいた。
格好を見るにどうやら彼女達も兵士のようだ。
「無事で何より」「そっちもな」
たったそれだけの会話を済ませると彼らは近場の戦車が壊れてないかチェックをし始める。
ここから戦車で直接敵本部を叩きに行くつもりらしい。
「たった四人でそれは少しばかり無謀ではないか?」
そう言うと彼らは言った。
無謀でもなんでもやるしかない、と。
俺達がやらねば更に多くの犠牲者が出る。
それだけは何がなんでも阻止せねばならない、と。
やれやれ、なんともまぁ愚かな奴らだ。
死ぬと分かっていながら尚も果敢に挑もうとする。
その心が、想いが何故だかとても響いてしまった。
俺も馬鹿だよなぁ、そう思いながら此方も意志を告げる。
分かった、お前らが死にそうでも俺は置いていく。
それでもいいなら俺も行こう、と。
装備は不十分、燃料もギリギリである。
望みはほぼ無い、が、0という訳でも無い。
どうせ死ぬなら華々しく。
彼らと共に一か八かの賭けに出るのも悪くは無い。
そう自分に言い聞かせ、運転席へと走り込む。
何をぼさっとしてる、時期にここも攻め込まれる、さっさと行くぞ!
そう言うと彼らがようやく笑った。
「お前一人で何ができる」
それもそうだ、何故だか俺も笑いがこみ上げてきた。
目標は敵陣本部、例え千の兵が現れようと怯む事無かれ、風は我々に味方する!
皆口々に自国の祈りを口にする。
こうして俺達は敵陣本部を目指して出陣した。
あんな事になるとは露ほども知らずに。