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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第1章 はじめまして
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星の瞬く夜に

戻ってきた私の微妙な表情に玲奈が何かを感じ取ったようだ。


「奈美?どしたの?」


「玲奈。先輩。彼女………いた。」


今、会ってね。私、相手にされなくて。なんか、良くわかんない。


これ。どういう気持ちなんだろ。




ぽん、と、玲奈の手が肩に置かれる。


「結構、本気だったんだね。奈美。」


複雑な気持ちだけど、よく分からない。



大貴に突き放された時とは違う感じ。

自分のことが良く分からない。

何がショックなのかも分からない。


だって、桜木先輩とは、月曜日に初めて話して。それだけだったから。



ふわりと笑う先輩の顔が脳裏に浮かんだ。





「あ!!」

玲奈が突然、素っ頓狂な声をあげる。


「奈美。怒んないで聞いてね。私、思い出したわ。去年、先輩見かけた時、彼女も横にいたわ。結構キレイ目な感じの人。」


玲奈ーー!!!


あはは、ごめん!

あれは、奈美。勝ち目ないわ。


と、笑い飛ばす玲奈。



玲奈のおかげで、空気が少し軽くなった。


「いいもん、別に。恋じゃないもん。うん、きっと違うもん!」







玲奈と訪れた市で1番大きな図書館。



玲奈は、助産師になると中学生の頃から決めていて。ただ数学、物理が壊滅的に苦手であった。

文系科目と生物で受験の出来る大学があるとのことで、玲奈はそこを目指し頑張っている。


玲奈もまた、進む道をはっきりと持って努力している人だ。


図書館につくと、玲奈は助産師の資料を目指す。



私は、明日、桜木先輩に紹介された大学に見学に行こうと決めており、その前にまちづくりについて、知っておこうと図書館を訪れた。


プログラミングに興味を持ったきっかけは、中学校で習った情報科の授業だった。自作ホームページを作成する授業であった。


複雑なタブを使いこなし、ホームページが華やかになっていく様に感動した。


チラシなどのデザインをするのも好きだったので、ホームページをどのように彩るか考え、それを文字情報として打ち込む。それがインターネット上で思い描いた通り表示されるのが楽しくて夢中になった。


その後、自作ゲームなどの面白さにも惹かれた。


自分の思い通りに動くキャラクター。




しかし、これを生涯の仕事とするのか?



いまいち、答えが見つからなかった。




桜木先輩の人生相談を思い出す。




天文学に興味がありつつも、趣味と割り切った先輩。


もしかしたら、近いのかもしれない。

私にとってのプログラミングは、先輩の天文学?




そう思うと、目指すは建築?



その先について…………






物思いに耽りながら、書棚を眺めていると、まちづくりの本を見つけた。


適当に数冊手に取り、玲奈の横に座り本を広げた。





いくつもの実例を眺め、想像をする。


私ならばどうするだろうか。


どんな未来を想像して、どんな提案をするだろうか。


そこに暮らす人々が幸せだといい。


皆が笑って暮らせる街になるといい。



どんな施設を置こうか。


商業施設の規模は?

病院は?




楽しくなってきた。



ふいに思い出す。




歴史を活かしたまちづくり。





先輩の言葉。


そうだ。




街には、何千何万もの歴史がある。


そこにかつて暮らしていた人々の想い。


そこかしこに残る軌跡。



それを辿ってみえてくるもの。




なんて奥深いのだろう。




今、私たちがこうして暮らしているこの土地で遥か昔にあった出来事。



それら全てが繋がって今がある。






天文学。



果てしない空に瞬く星々。







ああ、私が知らない数々の出来事を何千年何万年もの間、空から眺めていた傍観者たち。



彼らにも触れてみたくなった。





自然と1粒の涙が頬を伝った。






桜木先輩。

あなたは、なんて素敵なものを見ているのですか。



私も、同じ景色がみたくなりました。







図書館を玲奈と出た時には、辺り一面が闇に包まれていた。


すっかり日が落ちていた。



毎日、繰り返される光景。


毎日、見ていたはずの夜空。



なぜだか、今日は星を眺めて見たくなった。




玲奈と別れ、私は街頭の少ない近所の公園に足を運んだ。


ベンチに座り、星空を眺めて想う。






なんて、綺麗なんだろう。






星空を眺めているうちに、先輩に彼女がいてショックを受けていたなんてこと、忘れていた。



明日の大学見学が楽しみで仕方ない。次第に心が晴れ晴れとしてきた。



顔に笑みが浮かぶ。





まちづくり。




いいかもしれない。



これは、桜木先輩に言われたからとかの不純な動機ではなく。


私が心から学びたいと思えたことだった。















月曜日。



相も変わらず定刻通りに進む電車。

今日は、余裕をもって家を出た私。



ガタンゴトン。

小気味よい電車の音が不思議と、歌を歌っているように感じる。


土曜。見学に訪れた大学で、私の決意は固まっていた。



私も、この大学を目指そう。

私は建築を学んで、それをまちづくりに活かしていきたい。



桜木先輩に報告したい気持ちで一杯だった。





その日の放課後。


澤谷先生の個人面談が行われた。




大学に見学に行ったこと。

そこで、まちづくりを本格的に学びたい気持ちが強くなったこと。


私の話を聞いていた澤谷先生がにこやかに頷いた。



「やりたいこと、見つかったみたいだな。志望校についてだが、お前なら目指せる。気を抜かずにしっかり勉強するようにな。」



私は先生に深くお辞儀をして、個人面談を終えた。





10月の中間テスト、今まで以上に頑張れそうだ。


気合いを入れて教室を出た。

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