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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第4章 卒業
25/32

感謝2

翌2月15日


今日は、周助くんとファミレスで勉強会。


学年末テストはすぐそこだ。


実力テストでは、学年1位をとることが出来なかった。


なんとか、この学年末テストでは頑張りたい。




そして、今日は周助くんに感謝の想いを伝えようと決めている。


昨日は、桜木先輩にチョコを渡して感謝を伝えた。


周助くんにも、たくさんお世話になっている。



ドキドキ


手に持つ紙袋をギュッと握る。

ただ、ありがとうを伝えたいだけなのに、こんなにも鼓動が早くなるなんて。


本当に好きな人が出来て、告白する時が来たら私の心臓は無事で居られるだろうか。




何となく、ぎこちなく、言葉少なになりがら、ファミレスへついた。


向かいあって座りながら、意を決して周助くんを見る。



「あ、あのね。周助くん。」


「今日は、勉強の前に少し伝えたいことがあって。」




いつもいつも、仲良くしてくれてありがとう。

周助くんは優しくて、私のこと察してくれるよね。

私、色々ごちゃごちゃ考えちゃって。

時々、周助くんに心配かけたりもしてると思う。


けど、周助くんがふんわり笑ってくれると、嬉しいし、心が軽くなるし。

とにかく、落ち着くの!


勉強一緒にするのも、凄く楽しくて。周助くんのおかげで学年1位も取れたし。


あと、クリスマスの。

腕時計も、嬉しかったの。


本当に本当に嬉しかった。



だから。



「感謝の気持ち、受け取ってください!」



チョコを差し出すと、昨日の先輩みたく笑いを堪えてる様子の周助くん。



「あはは。ありがとう。」


「そんな、一世一代の告白みたく言わなくってもいいじゃん。」

奈美がずっと緊張してるっぽかったから、何かと思ったら。


ビックリさせないでよー



「義理チョコってことだね?」


ふわりと笑った周助くんの言葉に、私は少し考える。



「義理………っていうほど、軽くないの。」


「え?」


「なんか、義理チョコって、とりあえず!みたいな感じじゃない?」


そうじゃなくて。

もっと真剣っていうか。

本気っていうか。


「一応、想いが詰まってるの!」


周助くんは、少し照れたように視線を外して考えてる。



「それは。俺は奈美の友達の中では、特別ってこと?」


「うん!特別だよ!」


うんうん頷いて返事をすると、周助くんはにこやかに笑った。


「はは。それはありがとう。」


俺も特別だよ?

そうじゃなかったら、クリスマスにそんなプレゼントなんてあげないからね?


2人して腕時計を見る。


刹那、クリスマスのドキドキが蘇ってきて、少し頬が上気した。








「男としては?」





周助くんの声音がトーンダウンして、ビクッとなった。




「えーーと。」



それについては、私もいまだによく分からないから困る。


私の中で好きの答えが出ないのだ。



「あからさまに困んないでよ。」

周助くんは、ふっと薄く笑みを浮かべる。


「奈美。少しでも、俺のこと意識したことない?そう、感じてくれてたら、俺は嬉しいけど。」


「えと。」

素直に答えるのは、とても気恥ずしかった。でも、周助くんの雰囲気が茶化してるわけじゃないって伝えてきてくれてるから。


「たま、にね。あれ?ってなるの。」


「うん。どんな風に?」


「分かんないよ。分かんないだけど、心臓がドキドキうるさい時があるの。」


「クリスマスの時みたいに?」


こくん。頷いた私を見て、周助くんはほっと息を吐いた。


「奈美。こっち向いて?」


目が合うと、周助くんの切なげな表情に胸がキュッて締め付けられる。


「今はまだ。友達でいいよ?」



けど、俺のこと、無理に友達だって思い込まないで欲しい。



「え?それは……」



「今の奈美には、まだこの先は言わない。」




「周助くん。」



「俺といて、ドキドキしちゃうなって時は、そのままドキドキしててよ。」



真剣に伝えられる想いに私は戸惑っていた。

これって。自惚れじゃないよね。

その先って…………。


顔がポカポカと火照って、何も言えなくなっていると、優しい手が髪を撫でていった。




「この話は、お終い。」


さ、勉強しようか。



ふわり。


笑った顔はいつもの顔。



ひとたび、勉強を初めてしまえば、いつも通り。




教え合いながら、時には集中して無言になりながら、息抜きに楽しい話をして笑いあって。


穏やかに時は流れる。



こうしている時間は心地いい。



だから、今はまだ。

考えたくなかった。



周助くんは、友達。



そう言い聞かせて保たれる距離感を、大事にしてたかった。



けれど、もう知らないふりをし続けられないのかもしれない。



この胸の高鳴りを、無視出来なくなりつつあった。





私の思考はまた、グルグルと迷宮入りをしていた。





桜木先輩。

周助くん。



同じように、ドキドキしてたりするのに、2人に抱く感情はどこか違う。


けれど、その答えを見つけることが出来ない。




どれだけ、心と対話していても、明確に答えを示してなどくれない。




先輩、私。

また、何か見落としてるの?

答えを阻むように、何か気持ちを押し殺してるの?








もうすぐ、先輩の卒業式。

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