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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第4章 卒業
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想い人

三学期に入って行われた実力テストでは、学年1位のキープは出来なかった。


やはり、範囲が広くなるとまだまだ力が及ばない所が多いようだ。


これからの1年間、頑張らなくては。




大貴と周助くんは、3年生の春にある大会で部活を引退することになるから、まだまだ部活を継続中だ。


つまり、学年末テストのテスト週間に入るまでは、周助くんとの勉強会もお預け。



3年生は、センター試験に向けて大詰めで、いつにも増してピリピリとした雰囲気が立ち込めていた。


クリスマスに電話をして以降、あけましておめでとうのメールを送った以外に先輩と接触していなかった。


そんな、センター試験を間近に控えた1月のある日。



「奈美ー」

佳代が珍しく自席で項垂れていた。


「どうしたの?」


佳代の顔を覗き込むと、ガバッと体を起こす。


「1ヶ月後、何の日?」


「え?バレンタインデー?」


思い当たるイベント名を述べると満足気に頷く佳代。


「そう!そのとおり!」


乙女にとって一大イベントではあるが、佳代から想い人がいるなど聞いたことがなく、頭の中は疑問符が埋めつくしていく。


「チョコ!チョコ!甘いチョコが食べたいのー」


そう口にした級友の言葉に納得した。佳代は甘いものが大好きだ。


「本命チョコなんざどうでもいいから、自分チョコ探しに行こうよー」


佳代の話によると、来週から有名パティシエも出典するチョコレートフェアが大手百貨店で開催されるらしい。


毎年、やっていることは知っていたが、訪れたこともなかったので、こんなに早くから開催しているなんて知らなかった。


「奈美は、本命の下見もあるだろうし、早めに行って損はないよー」


「い、いないから!本命なんて!」


佳代はふーんと言いながら、疑いの眼差しで私を睨めつける。


「天体観測ー。クリスマスー。随分楽しそうだったなー」


あわあわと焦り出す私を見て、可笑しそうに笑う佳代。


私はかくして、バレンタインの主戦場。チョコレートフェアに乗り込むこととなった。











「はぁ。疲れた。」


翌週。佳代との約束のとおり、バレンタインフェアに乗り込んだ私たち。


人波に揉まれながら、なんとか会場を見てまわり、僅かばかりの戦利品を私はGETした。


佳代は、グイグイと掻き分けて進み、何袋も手にぶら下げている。



何とか抜け出して、近くのカフェで一休み。


私は脱力していた。



「そんなんだから、1つしか買えないのよー」


佳代はご機嫌だ。



私は、以前より気になっていたパティスリーの新作チョコをなんとか1箱買っていた。


本命チョコなんて考えてなかったし、むしろ、中学の頃は、手作りした生チョコを大貴に渡していたから、こんな高級チョコなんて買ったこともない。


そもそも、8粒かそこらのチョコが1箱8,000円するとは何事だ。

1粒1,000円じゃないか。

と、ゲシュタルト崩壊を起こす頭を抱えていた。


「奈美は。本命誰に渡すの?」



「はい?」


人混みに疲れた頭に、ゲシュタルト崩壊は相当応えたようで、こめかみを抑えつつ、佳代の疑問に返事をした。


「これだけ、色々あって。今年、まさか誰にも渡さないわけないよね?」


痛む頭でさらに考えてみた。


「本命って、好きだから渡すんだよね?」


何を当たり前のことを。と、呆れ顔の佳代。


「先輩には、たくさん相談乗ってもらって感謝してるし、周助くんも、仲良くしてもらってるし。」


これ、もらっちゃったし。



腕時計をちらりと盗みみる。



「お礼はしたい気持ちは凄くあるけど。」


本命チョコじゃないもん。





「そう。」


つまらなさそうに返事を寄越した佳代は、ニコッと笑って告げた。


「いいんじゃない?何もそういう好きって気持ちでチョコあげなきゃいけない訳じゃないし。義理チョコとかあるじゃん?まあ、感謝の気持ちを伝えるチョコってことで。」


形はどうあれ、その人を想って渡すチョコなんだったらさ、『想い人』には、変わらないでしょ?




何らかの形で2人にはお礼をしたいと考えていた。


だから、そういう形で渡すチョコはありなのかもしれない。

何かしらのきっかけがなくては、お礼を述べる機会もそうそう訪れるわけではないし。



私は頷いた。



「私、2人にチョコ渡したい!」




コーヒーを飲みながら、やる気が湧いてきて、チョコレートフェアのパンフレットを改めて開いた。



「8,000円2箱は買えないよね。もう少しお手頃なのにしよー」


佳代と2人でパンフレットを覗き込んであれがいい、これがいいと盛り上がった。



「そういえば、佳代は?誰かあげる人いるの?」



「ふふ。秘密」


そう笑った佳代の表情は、少し大人びていた。



あれ?

もしかして、佳代、恋してる??








私と佳代は、バレンタイン前日の学校終わりにもう一度、乗り込むことを決意した。



先輩に送るチョコを考えながら、ふと考えた。



センター終わってるとはいえ、前期の日程近いし、やっぱり迷惑かな。






奈美ちゃんが、どうしても、どうしても俺に会いたい!って思ってくれたら、連絡して?



天体観測での先輩の言葉が思い出された。





文字を打ち込んでは消して、打ち込んでは消して。


バレンタイン前週になんとか、センター試験お疲れ様と、渡したいものがあると、メールを送ることが出来た。


バレンタインの日の放課後。

資料室で待ち合わせが決まった。






バレンタインデーは、テスト週間に入っていて、部活もないから。

周助くんとは、バレンタイン翌日。勉強会へ行くこととなった。

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