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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第4章 卒業
19/32

冬休み

天体観測翌日。



私が教室に入るなり、佳代にぐいぐい腕を引っ張られる。


席へ座ると、ひそひそ内緒話。


「どうだった?進展した?」


一体、誰の視線を気にしていると言うのか。

キョロキョロしながら、尋ねる佳代。


「進展って。だから、そういうのじゃないって言ったじゃん。」


そういうのではないと言いつつも、先輩が母に挨拶したり、先輩のおじいさんのお話を聞いたり、先輩と見つめあって動けなくなって、心臓が弾け飛ぶんじゃないかと心配になったりと、私の中では初体験だらけで、全くもって整理など出来ていない状況には変わりがなかった。


つぶさに私の表情を監視していた佳代は、ふーーんと疑いの眼差しを向けてくる。


ま、今後の展開を楽しみにしとくわ。


私が今は、話せる状況にないと悟ったのか、思いのほかあっさり引き下がってくれた。




今日の放課後は、随分とご無沙汰になってしまった玲奈との約束がある。


つもりに積もった話を玲奈と一緒に整理しようと思う。





佳代に解放された私は、一限の準備を始める。


カバンの中を覗き込むと、携帯がメールの受信を知らせていた。


新着メール1件。



桜木先輩からだ。



件名 おはよう


本文

風邪引いてない?

今日の朝はきちんと起きられたかな?



昨日は、すっかり遅くまで付き合わせてごめんね。

それから、奈美ちゃんのお母さんに、コーヒーごちそうさまって伝えておいてくれるかな?



また、連絡するね。



メールを読んで1人ニヤニヤ。



先輩の存在がまたひとつ、私の中で大きくなった。













放課後。

いつものケーキ屋。



玲奈と向かい合わせのテーブル。


どこから話したら良いのやら。


思案する私。



まずは、文化祭で周助くんと仲良くなった話。


真子が大貴と仲良くなって、私は幼馴染卒業を決意し、真子を応援すると決めた話。


最後に、先輩との天体観測の話。


「私が忙しくしてる間に色々あったんだね。」


玲奈は目を丸くする。



確かに。こうして思い出すと本当に色々あったなぁ。




内山くんは、今1番仲のいい友達。

井上くんは、幼馴染卒業して、普通の友達。



そして、先輩に対する気持ちが分からない。




そういうこと?



玲奈は優雅に紅茶を口元に運びながら、私の話をまとめた。


「そう!」


私、先輩のこと好きなんかな?



玲奈は首を竦めてみせる。


「さあ?」

私に聞かれても。



相変わらず、冷たいやつーー!!


と、玲奈に悪態をつく。


「あはは。」



「だってさ。私はあんたじゃないもん。知らないよ、私に聞かれても。」



正論なんですが。


項垂れる私に玲奈の言葉が降ってくる。


「私だったら、確実に惚れてるだろうけど。」


ニヤリと笑む玲奈の顔を眺めて考える。



「先輩は。尊いんだもん。」


ポソリと呟いた言葉に玲奈は怪訝な顔つきだ。


「どういうこと?」


「爽やかイケメンで高身長。頭もいい。性格もいい。」


完璧じゃん?


玲奈は首を縦に折って、同意を示す。


「それなのに、人懐っこい笑顔で笑うし。髪の毛クシャって撫でてくるのも、ずるい。急に天体観測誘って、でも。親へのフォローまで完璧。」


なにしろ、目標をしっかり持って。全力でそこに向かってる。

目をキラキラさせて、少年みたいに語るの。


そんなの、もう。



眩しすぎて直視できないじゃん?

隣にいて申し訳なるじゃん?


気軽に、会いたいとか話したいとか言えないじゃん?



「はぁ。尊い。神様かな??」



玲奈はここまで聞いて、両手を上げてお手上げポーズ。



「確かに、凄い人とは思うけど。同じ人間じゃん?何かしら欠点だってあるっしょ?親しみやすいポイントとか?」



「ない」



即答する私に、呆れ顔。



「奈美はさ。そういう先輩見ようとしてる?」



「だから、ないんだってば!」




はいはい。玲奈は簡単に引き下がった。




「つまり、先輩は憧れってこと?手の届かない高嶺の花ってとこ?」



しばし、考えて肯定した。



「そんな感じ!」





玲奈は、ほんと贅沢で羨ましわ。って、笑いながら少し遠い目をした。












2学期最終日。



いよいよ、冬休みに突入する。



終業式を終えて、クラスに戻ると級長が教壇に立った。


「みんな、聞いてくれ。」


視線が級長に集まる。



「冬休みが終わると、俺たちもいよいよセンター試験まで残り1年となる。」


戦いが始まる。



すでに、全力で取り組んでいる者もいるが、3学期からが本番と言えよう。



つまり、何が言いたいかと言うと。


来年は、クリスマスだの、年越しだの言ってられないだろう。



そこで、有志を集めてクリスマス会を開催しようと思う!


もちろん、彼女がいるとかいう奴はわざわざ宣言してくれるなよ?


勝手にそっちで盛り上がれ!



と、いうわけだ。



この話に乗るヤツは、このまま教室に残っていてくれ。



以上。




級長がご清聴ありがとうございました!と、頭を下げると、皆が拍手喝采。


よく言った!

さすが、級長!


と、盛り上がりを見せている。



女子5人で目配せ。

私たちは遠慮した方がいいかな?


男の子達だけで盛り上がりたいよね?


そう、頷きあっていると。




「級長!」


珍しく周助くんが手を上げた。



「ん?なんだ?」



「俺は。せっかくだから。この機会に。女子のサンタコスを希望します!」



周助くんの宣言に沸き立つクラス。



周助くんと目が合う。


「な?だから、予定があるなら別だけど。遠慮せずに来いよ?」


周助くんが笑う。



便乗して皆が言う。




そうだそうだ!


女子達も来てくれよ!


みんなで盛り上がろうぜ!





女子みんなで顔を見合わせて笑った。



「サンタコスは周助くんがやった方がいいと思いまーす!」



私が手を挙げて宣言すると、クラスはまたどっと湧く。


それいいな!





ひとしきり盛り上がると、澤谷先生が教室の扉をあける。




成績表が配られて、解散となった。








クリスマスに予定のある人達が、足早に教室を出ていくと、そこには20人程が残っていた。


奇しくも大半は、文化祭の時に女装ファッションショーの出演者であった。



話は盛り上がる。




せっかくだし、もう1回やるか?!




級長は再び宣言する。



「我々2年H組は、クリスマス会にて更なる結束を高める必要がある。よって、もう、分かるな?俺たちは、女装クリスマス会を開催する!」


おー!!


全員で拳を突き上げていると、また、級長が私たちを見てニヤリと笑う。


「女子には、衣装、メイク係を任命する!いいですか?」


了解でーす!





ガラガラ。


教室の扉があいて、澤谷先生が入ってきた。


「お前たち何やら盛り上がってるかと思ったら。」


場所は提供しなくていいか?



ニヤリと先生が笑う。






「教室、使っていいぞ?」


教室が歓喜の声で揺れた。



澤谷先生もクリスマス会への参加が決まり、私たちは、2学期を終えた。



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