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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第3章 遠ざかる2人
14/32

初めての勉強会

放課後。


真子と大貴のことで頭がぐるぐるしていると、にこにこ顔の周助くんと目が合った。


「奈美?また、百面相してるけど、大丈夫?」


とりあえず、行こうか?


あ、うん。




周助くんに促されて並んで教室を出る。




辿りついたファミレスで参考書を広げていると、周助くんにそっと手を握られた。


「奈美。ストップ」


顔をあげて目が合うと複雑な顔した周助くん。


「奈美はさ。顔に全部出るから、誤魔化さないで?」


今、何に悩まさてるの?

何をぐるぐる考えてるの?



勉強は話の後で。



そう言って、バタンと参考書を閉じられた。



「真子が。今日教室に来て。」


うん。来てたね。

優しい顔して聞いてくれる周助くん。


「あ、やっぱりいい!」


周助くんの雰囲気に飲まれてその先を話そうとして、思いとどまった。


だって、大貴と真子が仲良いことにもやもやしてるって言ったら、私が大貴のこと好きって言ってるのと同じだもん!


言えるわけない。


「奈美。遠慮しなくていいのに。」


「え?」


周助くんは、ひとつため息を零した。


「言いたくないなら、いいんだけど。」


俺は、奈美に笑ってて欲しいなって思ってるよ。


奈美が俺に話したくなったら、話してよ。





こくんと頷くと、優しく頭を撫でられる。



周助くんは、大貴や桜木先輩と違って。ふわっと触れるか触れないか分からないぐらい、優しく手を乗っけて。


髪の毛を優しく撫でていく。


桜木先輩は、髪をくしゃくしゃかき混ぜるし、大貴はぽんぽんってする。



3人とも撫で方は違うけど、手つきはすごく優しくて。



目が合うと3人の顔が順番に浮かんで恥ずかしくなる。




「奈美?勉強、集中できそ?」


あ、うん。大丈夫。

心配かけてごめん!


謝ると、ふっ。って短く周助くんが笑う。


「いつでも頼ってくれてどうぞ?」


「ありがとう!」



笑顔で返すと、周助くんは頷いて参考書を広げだした。










ふぅ。

周助くんとの勉強会を終えて帰宅。夜、寝る前にココアを片手にベランダに出て、星空を眺めていた。


もう、随分と冷え込むから長居は出来ない。



空を見上げて、勉強会のことを思い出す。



「充実、してたなぁ」


自分たちでも驚くぐらい、私と周助くんの分からないポイントが、お互いの得意な所と合致していて、お互いレクチャーしあっては、ほーと感嘆を漏らす。


一人で悩んで解決しなかった疑問がするすると解決していく。


周助くんも、私の解説を聞きながら表情が段々晴れていった。


だから、きっと。私と同じように感じてくれているかな?



最後に、また明後日も一緒に勉強しようと、約束した。



それぐらい、有意義だった。




ふぅ。


また、ため息が漏れる。






真子は、大貴を…………

この先は、言ってしまっては認めたくなくても、認めなくてはならなくなるから、言いたくない。



それに、文化祭の時、周助くんと写真撮って嬉しそうに笑ってたよね?

周助くんのこと、気になってたんじゃ?



くるっと、自室の方を向いて、机に飾られた周助くんとのチェキを見やる。





その横に並ぶ、クラス写真を見つめる。


少し詰まらなさそうな顔で写っている大貴。




はぁ。

また、ため息を零してココアを口に含むと、後ろからガラガラと大貴の自室のベランダが開く音がした。


大貴の自室の方を見ると、大貴が顔を出す。


「風邪、引くぞ?」


鼻、赤くなってる。


慌てて鼻をさすると、鼻の冷たさにも、触れた手の冷たさにもびっくりする。


ココアもすっかり冷え切っていた。



そんな私の様子を見ながら大貴が肩を揺らして笑っていた。


「あほ」


ぽつり、悪態を吐いた人の表情とは思えないぐらい、優しい顔。


視線が絡むと目が逸らせなくなって。



沈黙。


大貴がふいと、視線を逸らした。



「奈美。お前、周助のこと………」



言いかけて大貴は、口ごもる。


「なに?」



何でもない。




そっぽを向いた大貴の横顔を見ていても何も分からない。



真子のこと、聞きたいような聞きたくないような。



また、沈黙。



2人同時にお互いをみやって。目が合って2人で吹き出した。



「アホらし。」


大貴は、そう呟いた。




「大貴?」

もしかして、また私が悩んでると思って?


視線で問いかける。




「奈美が、そうやって笑ってるなら、いいや。」



「うん。」







私もね。そう思うんだ。

大貴の隣がたとえ私じゃなくても、大貴がそうやって、穏やかに笑える相手なら、いいの。


幸せでいて欲しいの。



だから、伝えないから、今はまだ。

その笑顔にときめく私を許してね。





「くしゅ」


くしゃみが出てしまった。



大貴は、くるっと踵を返して自室へ向かう。


「もう、部屋に入れ。テスト受けられなくなるぞ?」



それは困る!


そう言って慌てて自室へ飛び込んだ。


暖房が効いてポカポカする部屋に入ると、生き返ったように全身が温まる。



もう一度、大貴の自室を見やる。


もう、そこに大貴はいない。

カーテンも閉められて、大貴の姿も確認出来ない。




私もカーテンを閉めて、学習机に向き合う。


写真の中の大貴を見つめ、視線は自然と周助くんにうつった。



「頑張らないと。周助くんに負けていられない!」




参考書を広げて、勉強を再開する。








一息ついてから、ちらとカーテンを開けて、大貴の自室を見る。


電気が消えていた。


もう、寝たのかな?




ふぁー


あくびが漏れる。



私も、もう寝よう。





明日の用意を整えて、ベッドへ潜り込んだ。


桜木先輩、どうしてるかな?



文化祭以降、会っていない先輩のことがふと頭を過ぎる。





先輩、最後のテストだもんね。

1位とれるよね、先輩なら。







静かに先輩にエールを送って目を閉じた。








私、先輩のことどう思ってるのかな?


好き、なのかな?




大貴といると、最近はずっとドキドキ。

笑ってくれると嬉しいし。

触れられると、心臓がバクバクして煩い。

目が合うと、喋れなくなっちゃう。



周助くんは、落ち着く。

こんな仲良くなった男の子は、大貴以外初めてだから、分からないけど。

恋愛とかじゃなくて、ほっとできる場所。って感じ。

居心地が良くて安心。

時々、ドキってしちゃうけど、それは私が経験無さすぎるからかな?



桜木先輩は。

なんだろう。

どっちもな気がする。

大貴といると感じる落ち着かないソワソワしちゃうような、感じ。

ドキドキして、恥ずかしくなっちゃう。

でも、柔らかく微笑む先輩に安心するし。

人懐っこい笑顔で笑ってる先輩といると、私も笑顔になって楽しくて、居心地いい感じもある。




好きって何なのかな?


もう、分かんないや。


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