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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第3章 遠ざかる2人
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お誘い

文化祭が終わり、いつも通りの毎日が戻ってきた。


変わったことと言えば、私と周助くんが下の名前で呼び合うようになったこと。


真子が周助くんと大貴の連絡先を教えて欲しいって言ってきたことぐらいかな。


真子は、文化祭で周助くんが気になっていたみたいだし、大貴と周助くんは仲がいいから、大貴から情報収集するのかな?


2人に連絡先教えていいか確認したら、2人共別にいいけど。って、あっさり了承してくれた。


私と、大貴は以前よりかは気まずい雰囲気はなくなって。

クラスで周助くんや佳代と一緒に談笑したりする。


時折、昔みたいに柔らかい笑顔を向けてくれたり、頭をふいに撫でられるから、結局はドキっとさせられたりしちゃうんだけど。



大貴とは、このまま仲良くいられたらいいな。と、思う。

もう、自分から大貴に何か求めるのは、関係を壊しちゃいそうで出来そうもない。


いつか、自然と大貴をただの幼馴染と思えるようになるかな?



今は、毎日みんなと笑い合えることを幸せに感じる。





早いもので、文化祭から1ヶ月。

12月に突入していた。


期末テストがすぐそこまで迫ってきている。









「んーー。やっぱり英語と科学が捗らないー」


放課になって机に突っ伏す私。


「奈美さーん。それ、嫌味?」

鋭い眼光を向ける佳代。


「ほんと、そうだな。」


ふいに頭にチョップを食らわされた。

顔をあげると大貴と周助くんが立っている。


最近、よくこの4人で談笑している。


周助くんは柔らかく笑いながら、大貴にチョップされて痛がっている私の頭を優しく撫でる。


「まぁ、まぁ。でも、俺。物理と古典いまいち分かんなくてさ。奈美に教えて欲しいぐらいだよ。」


ふんわりと微笑まれる。


「うっ。それを言うなら私だって!周助くんに科学と英語教えて貰いたーい!」


頬をふくらませて周助くんを見つめていると、佳代が一言。


「なら、いっそのこと、一緒に勉強すりゃいいじゃん。」



2人で顔を見合わせる。



「あー。えっと、俺としてはめちゃくちゃ有難い話だけど」

周助くんが目を泳がせながら答える。


私は、その手があったか!と、佳代の手を握ってブンブン振っていた。


「佳代!天才!!」


周助くんが嫌じゃないなら、それ、私やってみたいー!


「う。そんな、キラキラした目で見んな。」


俺、上手く教えれるか分かんねぇよ?




「ああ。じゃあ。奈美、ほんとに1回一緒に勉強会する?」

周助くんの誘いに、弾けるように頷いた。


くるっと、佳代と大貴の方に向き直る。


「2人は?一緒にやる?」


私、パス。2人とやっても着いていけないから。


俺もパス。



「そっか。」


残念だなぁ。そう思ってると、周助くんと目が合った。


「奈美?やっぱやめとく?2人は嫌だよね。」


しゅんとした周助くんに慌てて告げる。


「あ、大丈夫!みんなと出来ないのが、少し残念なだけ!」






「また、後で連絡する!」


周助くんはにこにこと笑って、自席へ戻っていった。


大貴もそれにあわせて、自席へついた。




「なんだか、内山くんといい感じなわけ?」


佳代に見つめられる。



「そんなことないよ?友達だもん!」


にこっと笑って答えると、佳代は憐れみの視線を私に寄越す。





その日の夜。

周助くんから、勉強会について連絡が来た。


明日の放課後、ファミレスでご飯を食べながらすることに。


その後も、メールは途絶えなくて。



夜、眠るまで連絡を取り合っていた。




翌朝。

いつもの電車。


もう、随分と聞きなれた電車の音をBGMに、単語帳を開いて勉強をする。



教室につくと、いつになくにこにこと嬉しそうに笑ってる周助くんが、自席で問題集を解いていた。


何かいいことあったのかな?



不思議そうに眺めていると、教室の入口に真子が立っているのに気が付いた。


「真子?どうかした?」



真子に歩み寄り、周助くん呼ぼうか?

声をかけると、真子は言いにくそうに尋ねてきた。


「奈美、おはよー。えっと、井上くん、居ないみたいだね?」


「え?大貴?」


今日は、委員会の仕事があるから、ギリギリまで教室こないよ?



「あ、そうなんだ。」


大貴にどんな用?



真子はずいっと私の胸にプリントをおしあてた。


プリントを確認すると、理系だけに配られている数Ⅱ対策プリントだった。


そこには、確かに大貴の字で『井上大貴』と書かれていた。


まじまじと見つめている私に、真子は告げた。


「昨日、借りたの。今日、使うみたいだったから返しに来たんだけど。」


奈美、返しといてくれない?




うん。いいよ。


返事をしながら、心がザワつくのを感じていた。

なんだろ。この感じ。



そして、はっとする。


そういえば、真子。

周助くんが気になってるっぽい感じだった。


最近、私、周助くんと仲良くし過ぎてない?

無神経だったかな?



「あ、あのさ。真子。今日、周助くんと勉強会するんだけど、真子、くる?」


尋ねると、真子は不思議顔?


「それは、2人?」


うん。申し訳なく思いながら頷くと、真子は笑った。


「あはは。邪魔したりしないよ?」


あれ?

あれれ?


どういうこと?



と、いうか。真子は昨日大貴と会ってて、今日も会う予定だったんだよね?


あれ?

それって、まるで…………



「ねぇ、奈美。テスト終わったら、ケーキ食べに行こ?」


話したいことあるし。



真子の誘いに頷いて、自席についた。



次の放課。

大貴に真子から預かったプリントを渡すと、ああ、ありがと。と、素っ気ない返事。


「真子と仲良いの?」


「山口さん?ま、普通に」



何、その返事。



そりゃ、私。何も言う権利ないけど。

大貴にふられてるけど。



ふいに、大貴に頬を摘まれる。


「ブサイクになってるぞ。」



誰のせいでー



言葉をグッと飲み込んで、自席へ退避した。


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