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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
第2章 文化祭
10/32

お祭り前夜

私たち2年H組の文化祭準備はすこぶる順調に進んだ。


文化祭前最後の土曜日は、1日使って本番さながらのステージを組んで、最後の衣装メイクリハーサルをして、本番同様にショーのリハーサルをした。


制服組のダンスは息がぴったりで、完成度が高い。


ミニスカートの女装男子がターンを決める度、裏方の男子たちがふぅーとはやし立てる。


これは、男と分かっててもドキドキすんなー。


仕上がりはばっちりだ。




リハーサルを終えて、メイクオフタイム。

内山くんと談笑をしていた。


「斎藤さん。当日もこんな感じでよろしくね!」


「もちろん。ばっちり可愛くするね!」


2人でハイタッチを決めて笑いあった。



内山くんはふいに、真剣な顔で私を見た。


「あの、さ。斎藤さんは宣伝隊の時間空いてるんだよね?

俺、2日目の午後、3部までの間空いてるんだけど。集合時間まで俺に時間くれない?」


「え?」


なんと返事をしようか悩んでいると、内山くんは笑顔を見せた。


考えといて!



そういって、内山くんは走り去っていった。





私、内山くんに一緒に回ろうって誘われたの?


状況を理解するのに、たっぷり時間を要した。



んー。友人として私ともっと仲良くなりたいのかな?


勝手に勘違いしても良くないよね??



内山くん、ほんわかだし。喋ってて落ち着くし。



一緒にまわるのは、全然大丈夫だし。





佳代に聞いてみた。佳代はその時間、部活の子とまわるらしい。


行ってくれば?


佳代に言われて頷いた。










いよいよ、文化祭前日。


この日は1日文化祭準備のため、授業はなし。

教室の飾り付けをして、宣伝隊のためのチラシや看板を作った。


黒板にも飾り付けを施し、準備が整った。




澤谷先生が差し入れにアイスを買ってきてくれて、みんなでアイスを食べて決起集会をした。



級長がみんなの真ん中に立つ。


「明日は俺たちの晴れ舞台だ!去年を超える動員数を獲得するぞ!!気合を入れろーー!!目指せ、優秀賞!!」



おー!!!



みんなで拳を天に突き上げる。




どうか、文化祭が成功しますように。

天を仰いで祈りを捧げた。


顔を下げると、内山くんと目が合った。


私は内山くんに歩み寄る。



「内山くん。この前の話だけど。返事遅くなってごめん。いいよ!時間空いてるから、一緒にまわろ?」


内山くんはほっとした表情をして、はにかんだ。


「楽しみにしてる。」












その夜。自室のベランダに出て、星を眺めていた。


桜木先輩の天文学の話を聞いてから、時々こうして星を眺めるようになっていた。



ガラガラ。


隣の家のベランダが開いた。


大貴だ。




私の自室と大貴の自室は隣通しで、乗り越えようと思えば乗り越えられる。

昔、大貴がベランダから私の部屋に遊びに来ていたこともあった。


しかし、大貴はこうして夜にベランダに出る習慣がないため、今まで1度も鉢合わせたことがなかったのだ。



「よう。」

片手に炭酸飲料のペットボトルを持って、ベランダに出てきた。


「珍しいね。」

大貴が歩み寄ってきて距離が近づく。


私がしていたみたいに、空を見上げる。


「たまたま、外見たらお前が空見上げてた。」



「星、見てたの」

短くそう答えると、大貴は視線を私に戻した。


「そっか。」


私がベランダにいるのが分かって、外に出てきてくれたの?

喋ろうと思って?


大貴になんて言ったらいいか分からなくて、押し黙っていると大貴が沈黙を破った。





「奈美。周助と仲良いんだな。文化祭、一緒にまわることになったって嬉しそうに報告されたぞ。」


ああ、それが言いたかったのか。


「うん。内山くんに誘われて。」



「あいつ。いいやつだぞ。優しいし。」


大貴は再び空を見上げた。


盗み見た大貴の横顔から、大貴の心情は全く分からない。



「分かってるよ。 あんなに、ほんわかした男友達は初めてだから、大事にしたいもん」


「ふーん。友達として?」


大貴は、また、私を真っ直ぐみる。


私も真っ直ぐ大貴をみた。


「うん。友達だもん。」


「ああ、そか。奈美、今3年の先輩と仲良くしてるのか」



大貴は合点がいったとばかりに、相槌を打ち、ペットボトルに口をつける。


「先輩は、違うよ。彼女いるし。」



「あっそ。」



大貴は私に誰か他に好きな人がいて欲しいのかな?



私、大貴のこと本当に好きで。


今でも、まだ想いは消えてないんだよ。



大貴を見つめていると、大貴がかすかに笑顔を見せた。



「ま、幼馴染だし。付き合い長いから、お前のことは良く分かってるつもりだよ。

だから、好きな男のことで悩んでるなら話してみろよ?いいアドバイス出来ると思うぜ?」



「違うよ!悩んでたんじゃなくて、ただ空を眺めてたの!最近、星見るのが趣味なの。」


そう言うと、あっそ。と返事をしてこっちを見ないまま、おやすみ、と一言寄越して自室へ下がっていく大貴。





大貴。

変わんないな。


きっと、私が一人思い悩んで空を眺めてると思って、心配して声かけてくれたんだよね。


そういう不器用な優しさ、好きだな。





それで、私が泣きそうな顔してると、頭をくしゃっと撫でてくれて困った顔して笑うの。


何回もその大貴の優しさに救われてきた。


また、頭撫でて欲しいな。




私は、自室のベットへ潜り込みながら、大貴との思い出を噛みしめて眠りについた。

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