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春、きらり  作者: 如月 蝶妃
プロローグ
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プロローグ

高校2年生9月。2学期も始まったばかりのある日のこと。

なにも変わり映えのしない、特筆すべきこともない午後の出来事であった。


移動教室のため、級友と廊下を歩いていた時のこと。


唯一日常を逸脱している点をあげるならば、歩いていた廊下が、2年生の私達が普段避けて通る、3年生の使う廊下だったことぐらいだ。

そんなありふれた日常の光景。


………?!!

「あっ?!すいません!!!」

ふいに誰かとぶつかりそうになった。

私は慌てて頭を下げる。3年生ばかりが使う廊下。つまり、私が謝っているのは3年生ということだ。

深々と頭を下げ、運がない…と、自分にもついているだろう、守護霊だかなんだかの力の弱さを呪いながら、顔をあげた。


その瞬間。


体に電気が走るってこういうことを言うのであろう。足先から髪先までビリリとした衝撃が体中を走り抜けた。

その場から動くことも。言葉を発することも。そう。息をすることさえ、出来なかった。


「奈~~美。奈美ってば!!」

私、斉藤奈美が我に返ったのは、顔の前で必死に呼びかける級友、大倉佳代の姿を認識した時だった。

はっとして辺りを見渡す私を佳代はとても不思議そうに眺めている。

そこには、もう誰もいなかった。私が謝っていた先輩も。


「ねぇ、佳代。」

突然、満面の笑みを浮かべ、私はこう続けた。

「今の人、めっちゃタイプ!」

そう。私は、生まれて初めて、一目惚れをした。

恐ろしく女子力の低い私にだって、恋焦がれる男子ぐらいいる。

しかし、こんな衝撃があるなど信じていなかった。

恋なんて所詮、虚像なのだと。人間が作り出したおままごとの一つなのだと。

愛だのなんだと綺麗事を並べて、自分を美化するための口実なんだと。


その頃の私は、この出会いをきっかけに日々が変わっていくなんて知らない。

それは、つまらない金曜日の午後だった。


名前も知らない先輩。

この人との出会いを表現するとしたら『運命』それしかない。

当時の私の辞書には存在しない単語。たった一度の青い春。


突然、訪れた甘酸っぱい日々。


これは、ほんの序章に過ぎなかった。









そうだ、こう呼ぼう。





よくある小説のプロローグ。

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