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魔法使いの「願い事6つだけ」   作者: 汐田 瀬羽音
第1章:カシオペイア編
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第4話:紅の魔女

カランカランと訪問者を告げる扉の音が鳴り響く

「邪魔するよ。」


声の主の方へ視線を向けると

そこには、ローブともドレスともとれるような赤い布を身に纏った女性が入口に立っていた


「ほぉ~?スミカ、あんた、私がしばらく来ないうちにいつのまにデキてたんだ~い?」


スミカは呆れたように一息吐き出したあとにめんどくさそうに答える

「弟子よ」


「弟子ぃ~!?」女性はスミカにすかさずより耳打ち気味に詰め寄った

「あんた、まさか異世界旅行がてら子供拐ってきて生け贄にしようってんじゃないわよね?」


「あなたといっしょにしないでっ!クレナ、この子は正真正銘、私の弟子よ。その証拠にほら」

と私の頭上を指差す


「ふ~ん。まだ色はないようねぇ~。どお~ぉ?大魔法使い、紅の魔女と呼ばれた私のもとで働く気はないかしらあ?」


「だい…魔法使い…!」

目を輝かせる私にすかさずスミカは釘をさす


「自称よ」


私はその声にガックシきた。


「それで?今日はどうしたの?新しい魔術の実験?」


「今日は下見がてらこっちにね。あ~でもやっぱついでだから、闇鈴の実とケチケチ草をもらえるかしら?」


「闇鈴の実なんてそんな貴重なもの何個も置いてないわよ?」


「あー1個あればいいんだわ。あともしあればブギの実も少し」


「ブギなんてそこら中にあるじゃない」


「いいのよ、わりとすぐ必要なもんなの」


友達感覚の2人のやりとりを見ているとかなり気が知れた仲なのだと思って聞いてしまった。


「クレナさんはスミカのお友だちなんですか?」


それを聞いてクレナとスミカは目を丸くして声をだして笑いだした。

「はははは、アンタにはこの小娘と私がそんな関係に見えるかい」


「…は、はい」

選択を間違えてしまった気も一瞬したが正直な返答をする。


「まあ…そうさね…古い付き合いには変わりないね。」


クレナの肯定とも否定ともとれる返答よりも、その前にスミカを小娘呼ばわりしたことが気になった。


「クレナさんは…その、おいくつなんですか?」


その瞬間、クレナの人差し指が私の口をシーッとするような形で遮った。


「魔女に歳を聞くのは無粋だよ。まさかスミカにも聞いてんじゃないだろうね?」


私はすぐさま首を横に振ってみせる。


優しいスミカはやれやれといった表情で

「あんたが思ってるくらいの歳だよ。さっきも言ったけどあいにく、ここには時を計る物はないんでね。」


つまりは歳の勘定は行ってないということだ。


ただ確かなことは見た目はクレナよりスミカの方が歳上に見えるが、クレナの方がずっと長く生きているということだった。


スミカを小娘呼ばわりするくらいだ、私なんかは赤ん坊だろう。


「さてと、欲しいものは手に入れたし、お代はここに置いとくよ。」



退店が近いのを察して私はすかさず口をひらく

「クレナさん!先ほどは失礼しました!私まだここに来て1日…いや2日目で、これから頑張りますのでまた来てください!」


お辞儀をする私にクレナが近づいて

そっと私の首に何か提げていった


「触媒だよ、見習いとはいえ魔術師なんだ。それくらいはいいだろ?」


たぶんその言葉は私に向けてではなく、師匠であるスミカに向けたものだろう。


私がお辞儀から頭をあげようとした頃には退店を知らせる鐘の音が聞こえたので、反射的にお辞儀の姿勢を保つ形となって一瞬しかクレナの後ろ姿を見ることは出来なかった。


でもその時、かすかにクレナの口元が怪しげに笑っていたような気がした。


その理由を私が知ることになるのは、ずっとずっと先の話だった。


嵐のように現れて波のようにスッと引いていった1人と1匹。どちらも私とはかけ離れた存在。


この先、どんなお客さんが来るのだろうと私の心はゆらゆらと楽しげに揺れていた。


もちろん不安もあるけれど、今の私にはスミカがいる。


「さっ、騒がしい客は帰ったし 品物の整理手伝っとくれ!まだまだ覚えてもらうことはたくさんあるんだ!」


スミカのよく響く声がドームに広がった。


私も期待に応えるように返事をしてスミカの方へ向かう。


今はそれに身を委ねることにした。


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