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死にたい人の生きる旅  作者: えいびい
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死にたい

今日おばあちゃんが亡くなった。

生命活動を停止した。こときれた。仏になった。神の身元にいった。天に命を返した。

どんな表現だっていい。ともかくも彼女は今日死んだ。


僕は今日という日を強調したい。


本当に言葉のまま彼女は

今日という日を死ぬ日に選んだのだ。




人形となった彼女の躯をみて、ただただうらやましく思った。







01、死にたい





雪交じりの砂利を踏みしめながら

僕は中学校に行くまでの道を忘れてかけていたんだなと思った。

この道を最後に通ったのはもう桜の花が散り、 

花弁が排水溝にゴミとしてたまっていた、もう春の終わる頃だった。


僕は、公立○○中学二年三組 室伏 そをた は、いじめられていた。


隠され、捨てられ、壊され、落書きされ、僕の所有物はすべて彼らのおもちゃであった。

それでも持ち物に関することはまだましな方だった。

先に成長期を迎えた彼らは、まだ体が大きくなっていない僕を、

ひたすらこずき、殴り、蹴り上げ、考えうる暴力を振るった。

怪我をすると学内にある医療用のロボットが駆けつけ、けがの治療を瞬時に行い打撲も切り傷も擦り傷も

すぐに治療される。僕がけがをした理由をロボットが尋ねる。

「どうして怪我をされたのですか?」

答えるのは決まって僕ではなく、彼らであった。

「こいつどんくさいから 勝手に転んだんだよ」

口裏をみんなで合わせれば医療用ロボットは簡単にだませた。

医療ロボットは外傷は治せても、人間のココロなど理解しえなかった。


まだ保健室の先生というものがいた時代であったなら、

このいじめは誰か大人に知ってもらえたかもしれない。

しかし、2000年と100年を過ぎロボットなくては生活困難になるこの社会では

残念ながら僕の悲鳴は誰にも届かなかった。


上を見上げた。空はどんよりと重い雲におおわれていた。

涙がこみあげてきた。


もう二度と行かないと思っていた学校に、僕は今、向かっていた



                                                              

教室に入ると、僕は透明人間になった。

多分クラスメイトはじろじろ見ているだろうが、僕は誰にも見えないし聞こえない。

おそらく自分の机であろう場所に鞄を置いた。


「へえ 学校やめたと思っていたのに来たんだ」


ぶんぶんうるさい虫が寄ってくる。

むしは、むしする。なんてことはできない。


「……」

「ちゃんとしゃべれよ そをたくん。 久しぶりに来たんだから楽しくやろうぜ。」


鞄を取り上げられ、中身を地面にばらまかれる。

どうせこういうことになるとは思っていたので、大したものは入れてこなかった。

こんなことをやって楽しいのだろう虫のやることは僕には到底理解できない。

でも、何一つ返せない自信のみじめさに対して涙で目が潤んできた。

けれど、長く伸びてしまった前髪とふちの厚い眼鏡のおかげで彼らには

僕のみじめさはみえなかったようだ。


床にぶちまけられたノートを拾いながら、朝のチャイムをきいた。

ホームルームが終わると担任の先生から呼び出しされた。


「実際に人と接するのも悪くないだろ?」

と担任の先生に事務的に言われた。名前は覚えていない。数学か社会の先生だったはずだ。

「そうですね」

「自宅での学習はうまくいっているようだね。成績を見る限り」

昨今自宅でも十分な教育を受けることができるため、学校に通わなくても、

学校卒業相当の資格は得られる。が、

「対人関係の重要性は学ぶ必要はあるな。君の場合」

必要日数は必ず学校には足を運ばなければならない。

「がんばってくれ。君自身のためにも」

そういうと立体映像に映っていた担任の先生は消えた。


僕は人間関係を学ぶため学校に通う必要があるが、

先生は立体映像を通して生徒を管理する仕事をしている。

だから僕みたいな落ちこぼれはいてほしくないのだろうなと思う。





僕は誰にも見つからないように屋上にいった。

前に一人の生徒が飛び降り自殺を図ったというのに

セキュリティを頑丈にするとかいったことはしなかったらしい。

外の風が心地よかった。


もちろんその自殺を図ったという生徒は僕である。


一回目ここに来た時は自殺することをとてもためらっていた。

同じ場所を何度も何度もウロウロし挙句、警備ロボットに見つかり、

あわてて飛び降りたらセーフティーネットにひっかかり

命を取り留めてしまった。

なんともまぬけなことをしたと思う。

だがそのおかげで精神治療のために長い間学校に通わずにすんだ。


セーフティーネットにアクセスし解除した。

これでぼくは見晴らしのいいこの場所から、

飛び降りることができる。

ここから飛び降りたら、、、






僕は屋上にある柵をを乗り越えようと思って、

手をかけた。


ガタツ!


突然柵が折れた。柵は長年の風雨にさらされ錆びだらけで

もろかったらしい。柵にかかっていた体重を支えきれず、

そのまま空中に身を投げ出した。


「うああああ!!」


風を身にまとう。自分を支えるものはない。

どんどん速度は上がっていく。地面がだんだん近づいていく。

もうあと少しでぼくの意識はこの世からなくなる。










視界が真っ白になった。












ボフウッ!!




僕は救命マットの上に落ちただけだった。

どうやらセーフティーネットの解除に気づき、警備ロボットが駆けつけたらしい。

あの世にいって意識が真っ白になったというわけではなかった。


またしても失敗だった。


僕は泣きたかったが涙は出なかった。

それは多分雪が降ってきたからかもしれない。



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