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その者。のちに… 第二部 作者:ナハァト

新婚旅行編

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別章 執事、目的を思い出す

 ………………。
 ………………。
 ………………むぅ。きませんね。
 絶対、追って来ると思ったのですが……。

「ワズはまだか? フロイド」

 苛立った声が耳に届きます。
 そちらの方へと視線を向けますと、そこには、完全武装したレーガン様が居ました。
 私とティアンが、イルムシュタッドから戻った場所は、城塞都市リニックです。
 戻った私は、即座にレーガン様へ報告に向かい、ワズ様がこれから現れるかもしれない可能性を説きました。
 すると、レーガン様は素早い行動で完全武装し、冒険者ギルドの前でワズ様を待ち構えます。
 ですが、ワズ様が現れた気配は一向に訪れません。
 ………………やはりこれは、私の行動が読まれた可能性がありますね。

「どうやら、ワズ様は来られないようです」
「そのようですね」

 隣に立つティアンがそう言います。
 私の行動を読むとは、ワズ様も成長しているようですね。
 ですが、これは喜ばしい事です。
 主の成長を感じられるとは、執事として至福の時を与えられました。
 ですが、主人として、ワズ様にはまだまだ成長して貰わなければいけません。
 ……次は、どのような手を取ろうかと、思考を巡らせます。
 しかし、出来ればここで、レーガン様のわだかまりを解いて差し上げたかったのですが、こうなってしまっては致し方ないですね。
 私は、チラッとティアンに視線を送ります。
 ティアンはそれだけで全てを理解してくれて、この場から一旦姿を消しました。

「ワズはまだかぁ~! 可愛いルーラのために、その身を捧げろ~!」
「落ち着きましょう、レーガン様。何やら、悪役のようになっていますよ?」
「ルーラのためなら、悪役なんてなんぼのもんじゃい!」

 完全に自分を見失っています。
 レーガン様を宥めつつ、何とか時間を稼いでいますと、ティアンが戻ってきました。

「ティアンお姉ちゃんに連れてこられてみれば、お父さん! こんなところで何やっているの! ちゃんとお仕事しなさい!」

 ルーラ様と共に。
 途端に、レーガン様が狼狽え出します。

「ル、ルーラ! い、いや、これはだな……そ、そう! 仕事なんだ! 娘に悪い虫がつかないようにする、お父さんの仕事なんだ!」
「そんな仕事ありません! きちんと領主様の仕事をしないと、晩御飯抜きだからね!」
「そ、それだけは………………わかった。仕事に戻る」

 ルーラ様に怒られ、肩を落として、とぼとぼと仕事に向かうレーガン様。
 その背中には、哀愁が漂っていました。
 この光景を見ていた周囲の人達……特に男性の方々は、涙は見せないと目元を拭い、頑張れ! と、小さく拳を握って見送っています。
 何か通じるモノがあったのでしょうか?

「フロイドお兄ちゃん、ティアンお姉ちゃん。お父さんがお仕事サボっているって教えてくれてありがとう」
「いえいえ、気にしなくても構いませんよ。当初の予定と違っていましたが、結末はそう違っていませんから」
「そうですね。ルーラ様の登場は予定通りでしたので。それが少々早まっただけですから」
「?」

 私とティアンの言っている事の意味がわからないと、ルーラ様が首を傾げます。
 どうか、そのままで育って下さい。
 そして私とティアンは、ルーラ様に別れの挨拶を告げ、「転移」で移動しました。

     ◇

 温泉街オーセンまで「転移」で移動し、温泉に惹かれつつも、そこから次へと向かいます。
 次なる目的地は、大陸北西に位置する獣人国。
 ………………。
 ………………そういえば、何か目的があったような気がします。
 はて? 何だったでしょうか?
 ………………まぁ、その内思い出すでしょう。
 なので、ティアンと共に獣人国へと向かいました。
 特に何の問題も起こらず、獣人国の王都へと辿り着きます。
 ですが、辿り着いた時間が遅く、既に陽は沈んでいました。

「遅くなってしまいましたね」
「宿が取れると良いのですが」

 王都の中へと入り、まずは宿を探します。
 夜も更けてきましたし、出来れば食堂も兼ねていれば出歩かなくて済むのですが。
 そうして宿を探していると、前方からこちらに向けて歩いてくる男性四人組が現れました。
 その足取りはフラフラとしており、ある程度まで近付けば、四人の顔が真っ赤になっている事がわかります。
 かなり泥酔しているのが、見てわかりました。
 すると、こちらの視線に気付いたのかどうかはわかりませんが、向こうもこちらへと視線を向けてきます。

「ひゅ~、めっちゃ綺麗な女が居るぜ!」
「でも、何で執事とメイド?」
「そんなの気にても仕方ないだろ? 現に居るんだからさ」
「だったらさ、次は綺麗なメイドさんに酌して貰おうぜ?」
「「「良いね~!」」」

 そう言って、酔っ払いの四人がこちらに絡んできます。
 正確には、私ではなくティアンに。

「疾くと逝ね」

 ティアンが冷たい目を浮かべながら、そう言います。
 魔王としての気配も、少し漏れていました。
 こらこら、こんなところで漏らしてはいけませんよ。
 ですが、さすがは酔っ払いとでも言うべきでしょうか?
 ティアンの不機嫌な表情に、全く気付いていません。

「何言ってんのか、全くわっかんねぇけど、とりあえず良いって事だよな? なら、ちょっと付き合ってよ! もちろん、酌だけで終わる気はねぇけど~」

 四人の内の一人が、ティアンを掴もうと無遠慮に手を差し出してきましたので、ていっ! と、その手を叩き落とします。

「触れる許可を出した覚えはございませんよ」
「フロイド様!」

 私がそう言うと、四人は不機嫌な表情を浮かべ、ティアンはキラキラと目を輝かせます。

「何でテメェの許可が必要なんだよ!」

 四人がいきなり襲いかかってきました。
 やれやれ、やはり酔っ払いというのは性質が悪いですね。
 ティアンを私の後ろへと回し、襲いかかってくる四人の攻撃を、軽く捌いていきます。
 やはり、彼等はわかっていませんね。
 私があそこで止めないと、ティアンによって見るも無残な姿へと成り果てていたというのに……。
 さて、落としどころはどこでしょうかと考えていますと、四人の攻撃がピタッと止まりました。

「……おや? どうかしましたか? もう諦めたというのであれば、どうぞそのままお帰り下さい」

 そう言いましたが、四人は帰るつもりはないようで、その場から動こうとしません。
 不思議に思っていると、四人は懐から袋を取り出し、そこの中に手を突っ込みました。

「へへへ……調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
「こっちには、コレがあるんだからな」
「コレがある限り、誰だって俺達には勝てねぇ!」
「大人しくメイドを寄越しておけば良かったものをよ!」

 四人が袋の中から取り出したのは、掌に収まるぐらい小さな丸い瓶でした。
 私の夜目が狂っていなければ、瓶の中には赤黒い液体が一口分程入っています。
 それを見た瞬間、私はそれから禍々しいモノを感じました。
 ……嫌な気配がしますね。
 その液体を、四人が一斉に含みます。
 すると、四人の体格が少し膨張したように見えました。

「「「「死ねや~!」」」」

 再び襲いかかってきます。
 ですが、先程までとは別格の動きで、明らかに強さが増していました。
 たとえるなら、成り立ての冒険者が、一気にBランク冒険者のような動きをするようなモノ。
 しかし、この感じ……覚えがあります。
 そこで思い出しました。
 王都マーンボンドで貴族の屋敷に潜入した際に出会った、見た目に反した強さを持っていた者の事を。
 つまり、先程飲んでいた液体が、「試作強化薬」と呼ばれている危険な薬の可能性があります。
 これは……思わぬところで手掛かりを得る事が出来ましたね。
 となると、あとはやるべき事をやるだけです。

「確保です、ティアン」
「かしこまりました!」

 即座に四人を確保するために動きます。
 まぁ、いくら薬で強くなったといっても、Bランク冒険者レベルでは、私達の敵ではありません。
 瞬く間に捕らえ、無力化します。
 証拠の品である薬も、袋の中にまだ数瓶入っていました。

「これからどうされますか?」

 一仕事やり終えたような、晴れやかな表情を浮かべるティアンが、四人を縛り上げながら尋ねてきます。
 少しだけ考えたあと、私は答えました。

「宿は後回しですね。まずは、この四人を連れて城へと向かい、早々に事情説明を行った方が良いでしょう。休むのが少し遅れますが、大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です」
「では、向かいましょう」

 そして、私とティアンは、縛り上げた四人を引き摺りながら、城へと向かいました。
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