【超短編】女にモテまくる薬(モテない男と謎のセールスマン1)
星新一風のものを書いてみました。
おんぼろアパートのおれの部屋を、一人の見知らぬ男が訪ねてきた。
「こちらはモテない男さんのお宅でしょうか」
ずいぶん失礼な言い方に、おれはムッとして答えた。
「たしかに僕はモテない男ですが、いったい何の用ですか」
「そう怒らないでください。今日はあなたにぴったりの商品をお持ちしました」
男はそう言うと、おもむろに鞄から一本の薬瓶を取り出した。
「これは女にモテまくる薬といいまして、飲めば特殊なフェロモンを発散し、
文字通り女にモテまくるようになります。松竹梅の三種類ございまして、
一ヶ月分で松は百万円、竹は十万円、梅は千円ですが、いかがですか」
「松竹梅の違いは何ですか」とおれは尋ねた。
「まあ、質の違いとでもいいますか、ははは」男は妙な笑い方をした。
おれは梅を買った。松や竹を買う金の余裕などなかったのだ。
薬を飲むとすぐに、今年七十になる管理人のばあさんがやってきた。
「炊き込みご飯たくさんつくったから、持ってきたよ。一緒に食べよう」
すると今度は、近所に住む管理人の友人のばあさんがやってきて、
「あらシゲさん、若い男を独り占めしようったって、そうはいかないよ」
一時間もしないうちに、おれの部屋にはばあさんが六人集まってきた。
こうして薬の効果が切れるまでの一ヶ月間、おれの部屋には毎日、
六十歳以上の女性たちが集まってくるようになったのであった。
結局、私にはやはりモテない男の情けない話が一番書きやすいようです。