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ないものねだりがつむぐもの。

作者: みなみ

あ~あ、ふられちゃったなぁ…


しょんぼりうつむいて家路を急ぐ。

先ほど告白したが見事玉砕した。私はいい子で友達にはなれるけど恋人は無理なんだって。

身長が低い上にふとましい体。スレンダーが美人の条件のこの国では私は立派な不細工だ。

顔は普通に可愛いのにねぇとよく言われる残念仕様。

恋したその日から、頑張ったんだ。ダイエット。

食事制限もしたし、運動もしたし…仕事中はちゃんと食べなきゃ倒れるからまぁ食べたけど間食も控えたし。

大好きなチョコレートだってもう一年食べてない。

目標の10㎏には届かなかったけど、それでも6㎏は痩せたのだ。

精一杯のおしゃれをして、挑んだ告白は見事玉砕。

悲しい。

でも、そういうものなのかも。

思いを通わせられるのはきっと世界の半分で、そうでない人はもう半分。

だからきっと失恋の歌やお話は共感をよんだり涙を誘うんだ。



『俺はスレンダー美人が好きだからさぁ』



玉砕した後、気まずくなるのが嫌で『あはは、そうですよね~でも言えて良かったです!ありがとうございます!ではでは!』と明るく去ったはいいけど苦しくて座りこんだ物陰で、彼の声を聞いた。

たまたま近くに居た(と言っても話が聞こえない距離)友人らしき人に、どうしたー?告白されたー。マジかスゲーな!のやり取りの後の言葉。

明るくていい子じゃん?と返した顔も知らぬご友人を鼻で笑って彼は言った。



『タヌキが可愛くても女として見れないだろ。』



その一言で夢も覚めました。

動物園で見るタヌキには顔立ちが似てると言われ可愛がられたりしますが…

多分その人が言うタヌキは酒屋の前にあるラリった酔っ払い顔で酒瓶もってデカイ腹プラス下半身を露出した置物タヌキであると言葉のはしはしから感じた。


あ~あ、そんな人に恋したのか。


別な意味で泣けてくる。

でも頑張ったね、私。


もしスレンダーだったら…

もし後身長が10㎝高かったら…

もしお洒落だったら…

もしもっと気が利いたら…


もし…とないものねだりをするだけで何もしなかった私がここまで努力できたのはその恋のお陰で。

悔しいけれど彼が居たから。

そこは感謝をしなくてはいけないと思う。


だからとりあえず、今日はそんな自分を労ってチョコレートとお酒ととにかく好きなものをやけ食いしようと憎きタヌキの居る店へと入っていったのであった。














一人カウンター席でやけ食いしていればふと、二つ隣の席でお葬式か!と言わんばかりにうなだれだ女性が居た。

スレンダーの美人。

こんなに綺麗な人なのに、こんなにも辛そうにするなんて。

なんだかかわいそうな気分と自分の不幸っプリには敵わねーぜ?的なよく分からない自信をみなぎらせ私は何故かその人に特攻かけた。

多分酔ってなきゃできなかったと思う。




彼女は私と同じように失恋していた。

彼女は背が高くて美人で羨ましかったけれども、恋した相手はその背の高さを理由にふったとの事。

外見や身分にとらわれず分け隔てない所が好ましかったのに、彼女が一番に気にするところをついて振られたのがとてもショックだったそうな。


ワカルワカル!私達は意気投合し、二人で呑み、私の家で宅のみという二次会に突入した。

互いに怒濤の勢いで思いの丈をぶちまける。



「私達、足して割れば丁度いいのにね。」


「ほんとにね。」



たくさん飲んでたくさん泣いて、愚痴って泥のように眠った後私達は笑顔で手を振った。


ないものねだりをしても恋は返ってこないけど、その分大事な友達にも出会えたから。

新しい恋はまだできそうにないけれど、失恋が紡いだ出会いを糧にまた明日も頑張ろうって思えたから。

だから今日も私は笑顔をのせて働きに出るのだった。


失恋には次の恋とも言うけれど、また恋する前の少しの小休止はいるんじゃないのかな…と。

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