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掌編小説集6 (251話~300話)

断崖

作者: 蹴沢缶九郎

「誰か…助けて…」


高くそそり立つ崖の中腹、僅か1メートルほどの足場に男がいる。


三日前、男は一人で登山に来ていた。崖沿いの道を歩いていると、景色がよく見える場所にさしかかり、風景を写真に収めようと身を乗り出した瞬間、崖から足を踏み外し、この足場に滑落したのだ。

幸い怪我はなかったが、見上げても登れそうにはない断崖、見下ろせば足がすくむ絶壁。どう考えても自力で助かるには難しそうだった。


「おーい、助けてくれー!! 誰かー!!」


男は声を張り上げ助けを呼ぶが、どこからも返事はない。


「誰かー!! 助けてくださーい!!」


男の助けを求める声は辺りに虚しく響き渡り、それに応える者はいなかった。

だが、男は力の限り叫び続けた。


「助けてー!! 誰かー!!」 「助けてくださーい!!」


三日が経ち、相変わらず男の声に気づく者は現れない。男の声もかすれ、喉は痛み、体力も限界に近づいていた。

しかし、男が助かる為に唯一残された道は、誰かが気づくまで叫び続ける事なのだ。


「誰か…助けて…」





神の使いが山の神に尋ねた。


「神様、彼を助けなくていいのですか?」


その問いに、山の神は当然のように言った。


「奴はこの山に高速道路を通す計画の責任者だ。放っておけばよい」

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― 新着の感想 ―
[一言] クールな山の神がいいです。高速道路が通るだけでなく、工事のための周辺の自然環境にも影響でますしね。
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