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土生敦仁02

 教室の窓際、後ろから2番目。誰にも気付かれずに、僕の定位置に着けたと思っていたのだが、二限目の休み時間にはもうバレていた。後ろから2番目というのはプライバシーの管理、保護にそれほど有効的な場所ではないのかも知れない。

 てゆーか、裕司。お前、授業中に何度も後ろを振り返ってんじゃないよ。

「朝、居なかったから休みだと思ってた」

「悪かったな」

「肩、どうしたんだよ?」

「え?」

 言われて、自分が自分の肩を触っている事に気付いた。髪と、首と肩。払ってるとか、揉んでいるという訳ではなくて、ただ触っているだけ。どうしたと問われて、僕は、ハテ、どうしたんだっけと眉をひそめて見せた。

「まぁ、いいや」

「いいのかよ」

「これでも心配したんだぜ」

「すまんかった」

「お前がこのまま居なくなってしまったらどうしようかと。このまま二度と会えなくなってしまったらどうしようかと」

 ま、まさか。

「お前、俺の事好きなのか?」

「は?」

「申し訳ないが、俺には心に決めたひとかいるんだ。お前の気持ちには応えられない」

「は?」

「勿論、俺は、お前とは今まで通り友人として付き合って行きたい。もし、お前が……」

「待て」

 僕は、裕司の告白に誠心誠意向き合おうとしたが、彼はそれを遮った。

「……それが嫌だというなら、だな」

「落ち着け」

 お前がな。

「だから」

「お前、あの話を知らんのか」

 耳をぐいっと引っ張られたので、僕は口を閉じらざるを得なくなった。……いや、ほら。黙ったじゃん。イタい、イタいっす。裕司さん、耳を放してください。マジ、取れる。千切れる。

「C組の火浦、見付からんらしいぞ」

「誰、それ?」

「火浦良佑だよ」

 首を傾げる。いや、傾げざるを得なかった。耳と肩が接し、ギリギリと裕司の指を締め付ける。彼の眉が跳ね上がり、僕は眉をしかめた。我々は、束の間睨み合った。……と、そこでやっと裕司は手を放した。

 あー、何かちょっと分かったような気がする。

「学校来てないやつだっけ?」

「朝、学校に向かってそれっきり。行方不明になったんだってよ」

「家出? 若いねぇ」

「三人目だぜ?」

「俺たちは、他人や大人たちには分からない苦しみや過ちをいっぱい抱えてるんだよ」

 裕司は、胡散臭そうに僕を眺めた。そして、何かを思い付いたかのように、目をパチクリさせ、何かを思い出したかのように、こう言った。


「そういや、お前の心に決めたひとって、誰だ?」

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