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書き忘れていましたが、かなり前に書いたものなので、かなり文章的におかしいものなどありますが、話の流れがおかしいとか、こっちのほうがいいんじゃないかとか、そういう指摘をしてもらえれば助かります。
定期テストで少し更新が遅れましたが、あと少しで終わりますので、最後まで見ていただけるのであれば、よろしくお願いします。
目が覚めると、カーテンの合間からもれる薄い光が目の中に入ってきました。一瞬どこだか認識できなかったのですが、昨夜のことをすぐに思い出せました。
救急車で運ばれた誠は何とか一命を取り留めたものの、意識は回復しませんでした。何日も病室で看病していたのですが、誠の目は閉ざされたままで、さすがに疲労に耐えかねた私は、すぐ近くのホテルに泊まったのでした。誠二さんはゴールデンウィーク明けに重要な仕事があると言って帰ってしまいました。仕事をやってもらわなければ生活が成り立たないのはわかっているのですが、こういう状況でひとりになるのは寂しいものです。
結局、精神的な疲労と肉体的な疲労の両方が襲ってきて、部屋に入った途端に寝入ってしまったのでした。
ふいに、カバンから飛び出して床に落ちている携帯電話が鳴りました。ベットから身を乗り出し、手を伸ばして通話ボタンを押しました。
「誠、どうだ?」
誠二さんでした。その声を聞いた途端、胸の奥から何か熱いものがこみ上げてきました。ついに我慢できなくて、涙がいつの間にか頬をつたっていました。
「もう……、なっ何で……こ、こっ、こんなことに……」
「そうか……。わかった」
誠二さんはそれだけ言うと電話を切ってしまいました。
誠さんのそっけない対応に、私は呆然としてしまいました。頼りになる、甘えられる場所があるから私は思いっきり泣けた。それなのに、その相手は冷たく去っていってしまったのです。
同時に怒りがこみ上げてきて、とにかく暴れたくなりました。ベッドを思いっきり叩いたり、枕を壁に投げつけたり、カバンを蹴ったり。
そのうち、視界に携帯が入りました。そこで悟りました。
あの未来探偵とか言うやつらがわるい。
夢中で床に落ちている携帯を拾い、力のこもった指で発信履歴を見返しました。
「はい……。未来探偵ですが……」
静かに、陰気な声で話し掛けてきました。
「あなた達、何様なの!」
迷惑になるなんてまったく考えていませんでした。とにかく自分が溜め込んでいるこの怒りをぶつけたかった、それだけでした。
「息子が、息子の意識がもどらないのよ!」
「ああ……。お気の毒なことに、以前申し上げた通りです……。それで何か……?」
淡々とした口調がまた私の怒りを誘いました。
「何かじゃないわよ!こんなになるなら阻止してくれてもいいんじゃないの!」
「何を言っているんですか……。そんなことは契約にありません……」
「何言ってんのよ!それくらいしてくれないの?あなた達、人間として本当に最悪ね。あんな小さい子をこんな目にあわせておいて!」
相手は静かに、しっかりとした声で言います。
「私達は未来を見て、それをお客様にお伝えするだけにすぎません。変えることはできませんよ」
何も言い返せませんでした。
「もしまたご利用になるのであらば、その時はどうぞ……」
そう言って切られました。受話器から終話を意味する電子音が聞こえてきます。
すべて私のいいわけでした。全て事故の責任を人に押し付けて、「私は何も悪くない」と言い張る。まったく、最悪最低の人間です。
笑ってしまいました。
私はなんて馬鹿なんだろう。
緩んだ口元で塩っ辛い涙を感じました。
誠が転院してきたのはすぐでした。一通り家事が終わったら病院へ行き、夜に仕事から帰ってきた誠二さんと一緒に帰るという毎日が続いたのです。
子供がいないと本当に家の中が静かになりました。いつも「うるさい」と叱っていたのに、今はそのうるさいと思う感情さえもが愛しく感じられました。
誠二さんはあれからすっかり元気をなくしてしまい、まったくと言っていいほど食が進んでおらず、日に日にやせこけていく姿はとても痛々しいものを感じました。
「最近ちょっとふとったんじゃない?」
一緒にお茶をしていた友人に言われました。
「そうかな」
「うん。食べすぎ?」
最近なにかとストレスが溜まっているのか、少々普段よりも食べ過ぎているのかもしれないとは、薄々自覚はしていました。そういえば、事故以来よくお菓子を食べるようになったのは事実です。
「誠くんはぜーったい大丈夫だって。ちゃんとご主人にも言わなきゃだめよ」
察してくれた友人は優しく言ってくれました。
「うん」
ありがとう。長年つきあってるからか、恥ずかしくてそのたった一言が出ませんでした。
そんなやり取りがあったからかもしれません。病院へ行く前にへそくりを財布に詰め込みました。今日は夕食は外で食べよう。私のおごりで。元気が出てきました。妻として、あの人をしっかり支えなければなりません。辛いのはお互い様です。でも、いつまでもこのような生活を続けるわけにもいきません。
「がんばらなくっちゃ、ね」
ひとり呟くのはどこか寂しさを感じられました。
でも、近くには誠二さんがいてくれるんだ。だからここまでがんばってこれたんだ。そう自分を叱りつけました。