02 気持ちがあれば、大抵なんとかなるもの
この二話目は一度消して書き直しました。
正直、もう少しだけテンポ良く進むべきなのですが、私の力不足です。
一週間遅れとなりましたが、見ていただければ幸いです。
「はぁ、はぁ、はぁ」
結論だけ言うと、結局扉は現れなかった。
その上休みを挟まず、かれこれ三時間程探し続けた為に、少年は心も身体も疲れきっていた。その場に倒れ込むと両手両足を投げ出して草の上に寝転んだ、所謂大の字になる。そのまま木々によって丸く切り取られた空を見ながら小さく呟く。
「つーか、これから俺どうなるんだ?」
少年自身としては目覚める前まで眠っていたことも考慮して、『全部夢でした!テヘペロ♪』というオチが望ましいのだが、リアルにかなりの時間を体感してしまっている為、この状況ではそれも望めそうにない。先行きは極めて不安なものばかりがちらついていた。
「いや、のび太くんだって無人島で十年生きていけたんだ、俺だってやりようでなんとかなるはずだ。」
この少年、思い切りだけはよいようだった。だが、生き延びれた理由が秘密道具にあることを少年は理解しているのだろうか?
それから数分間かけて、今後の大まかな予定を組み立てる。組み上がると、バッと起き上がり周りを見渡し、
「よし、こっちだな」
適当に当たりをつけるとそのまま森の中へと歩を進めていった。
おい、帰り道分かってるんだろうな?
「ふふ、相変わらず彼は面白いですね。」
ところ変わってこちらはローブの男。ひとりきりになってしまったあの空間で椅子に座ってお茶を飲んでいる。テーブルにはティーポットにケーキなど、ちょっとしたお茶会が開ける程のセットが並んでいた。
…アールグレイか、今度一緒に飲もうじゃないか。
「それは構いませんが、私はミルクを入れる派ですよ?」
そこに固執するほど俺は理解がないつもりはない。
「それは失礼しました」
地の文に話しかけるのは何処の世界でも普通なのだろうか?
とにかくローブの男は少年の行動を楽しんでいるらしかった。テーブルに置かれたティーポットから注がれる紅茶はこれで12杯目になる。
…明らかに許容量越えてないか?
「魔法は便利ですからねぇ」
左様か。
そうして紅茶を啜っていた男だったが、ふと何かを思い付いたらしく目の前の床にに魔術式反応陣、詰まるところの魔方陣を展開し始めた。山吹色に光るそれは、男の語りかけるような、それでいて奏でるような言葉の流れに沿って輝きを増していく。
「…我が作りし彼の者の形をなした人形に大いなる意思を与えんことを」
―――顕れよ
魔方陣から放たれる光が最大になり、男の口から最後の言葉が紡ぎ出される。すると周囲の空気が陣に沿って回転を始めた。秒数を重ねるごとにその回転数はどんどん上がっていき、10秒もする頃にはちょっとした竜巻のような様相を見せていた。そしてさらに10数秒経つと、次第に緩やかな回転へと変わっていく。この頃になって、竜巻の中心に何か大きなものが在ることが分かる。
「まあ、ヒント出すのも私の役目ですしねぇ。代理を立ててはいけない事もないでしょう」
何やら言い訳がましい独り言を呟いた男は、満足そうに竜巻から出てきたそれを見て笑っていた。
「お、泉見っけ。これで飲み水とかはいけそうだな。」
森の中へ進んでいくこと10分程。直径が2メートル程有りそうな泉を見つけていた。安全か否かの心配が有るものの、飲まないよりはましというポジティブシンキングの下にこれは飲めると判断された。
「後はこの果物っぽい奴らだが…」
そういう少年の足下には赤・黄・緑の物体が大小ふたつずつ転がっていた。ここにたどり着く途中に見つけたものである。赤色のは細かな実の集まりみたいなもので、匂いなどはしない。黄色の方は胡瓜を直線的にしたものに似ていて、少し甘い香りがした。そして緑だが、
「これ…ピーマンだよな?」
色といい、形といい、仄かに漂う青臭さといい、
どう見てもピーマンです。本当にありがとうございました。
「おまえなぁ、食べるの俺なんだぞ?」
ソウデスネ。
しかし背に腹は代えられず、意を決した少年は赤色の実を手に取った。本人的には一番これが心配なさそうだったからだ。房から2~3個もぎり、いざ!
「いただきます…」
パクッ……クチャクチャ
思っていたより甘く、しかし水気が少なかった。丁度、干し葡萄を食べている感じだ。匂いがないと思っていたのは、元々そういう品種らしく、口の中にも香りは広がらなかった。
「まあ、可もなく不可もなくってことか…次だな」
黄色い胡瓜を手に取り、先の方をかじる。
「グフッ、ゲホッゲホッペッ」
かじった瞬間、口の中で強烈な痺れを感じ慌てて吐き出す。少し飲み込んでしまったが、大体は吐き出すことが出来た。どうやら食べた者を痺れさせる成分があるらしい。今もまだ舌が痙攣している。手足にもその感覚がやってきた。
「はきあおほいやはへふああ」
近くにあった木に寄りかかって、少年は自分の運の無さに苦悩していた。
読んで頂き、ありがとうございました。