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逢いたかったよ

作者: シキカン
掲載日:2026/07/13


トントントントン…

壁の向こうで心地よい振動を感じる。

一定のリズムで誰かが優しく叩いているようだ。


ドクドクドク…

足元からも振動がする。

ずっと聞いていた、僕が一番安心する音。


チャプチャプと浮かんで気持ちいい。

ここは暗くて狭くて光もないけれど、温かく包まれているようで居心地がいい。

たまに壁の向こうから誰かの声が聞こえる。

その声は優しく、僕の大好きな声。


急に何か強い力で押し出され始めた。

僕はびっくりして戸惑って、気づくと頭一つ分くらいしか入らない、すごく細い道に入っていた。

痛い痛い痛い痛い。

苦しい…。息が…。

その道はどんどん狭まっている。

怖い。怖いよ…。

誰か…。壁の向こうの優しい人…。助けて…。


するとその道の先に小さな光が見えてきた。

その光はどんどん開けて、最後に光に包まれ、と同時に僕は広い世界に出ていた。


「オギャー!オギャー!」

「おめでとうございます!」

「ありがとう!ありがとう!」


たくさんの人が僕の周りを囲んで喜んでくれている。

すると僕はそこに居る女性の一人に抱えられ、ベッドで寝ている女の人のところに連れて行かれた。

その人は大きく息をつき、安心したように微笑みながら、僕を優しく抱きかかえた。

「…よかった。会いたかったよ。」


その声は暗く狭いところでずっと聞いていた、この世で1番大好きな声。

嬉しくて、僕も精一杯想いを伝えた。


「オギャー!オギャー!」

(僕も会いたかったよ。)

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