逢いたかったよ
トントントントン…
壁の向こうで心地よい振動を感じる。
一定のリズムで誰かが優しく叩いているようだ。
ドクドクドク…
足元からも振動がする。
ずっと聞いていた、僕が一番安心する音。
チャプチャプと浮かんで気持ちいい。
ここは暗くて狭くて光もないけれど、温かく包まれているようで居心地がいい。
たまに壁の向こうから誰かの声が聞こえる。
その声は優しく、僕の大好きな声。
急に何か強い力で押し出され始めた。
僕はびっくりして戸惑って、気づくと頭一つ分くらいしか入らない、すごく細い道に入っていた。
痛い痛い痛い痛い。
苦しい…。息が…。
その道はどんどん狭まっている。
怖い。怖いよ…。
誰か…。壁の向こうの優しい人…。助けて…。
するとその道の先に小さな光が見えてきた。
その光はどんどん開けて、最後に光に包まれ、と同時に僕は広い世界に出ていた。
「オギャー!オギャー!」
「おめでとうございます!」
「ありがとう!ありがとう!」
たくさんの人が僕の周りを囲んで喜んでくれている。
すると僕はそこに居る女性の一人に抱えられ、ベッドで寝ている女の人のところに連れて行かれた。
その人は大きく息をつき、安心したように微笑みながら、僕を優しく抱きかかえた。
「…よかった。会いたかったよ。」
その声は暗く狭いところでずっと聞いていた、この世で1番大好きな声。
嬉しくて、僕も精一杯想いを伝えた。
「オギャー!オギャー!」
(僕も会いたかったよ。)




