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魔力ゼロのオメガ研究者、論理魔法で最強AIを作り出す。~追放先で開発したゴーレムがスパダリすぎて、実家が壊滅しました~  作者: 水凪しおん


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第11話「断罪の舞踏会」

 会場は騒然となった。

 ライオネルは顔を真っ赤にし、腰の剣に手をかけようとしたが、周囲の衛兵たちが動けないでいる。オルトの威圧感に完全に制圧されていたからだ。


「貴様……! 父上、こいつらを殺してください! 公爵家への反逆です!」

「待て、ライオネル」


 父ゲオルグが片手で兄を制した。さすがに老獪な古狸だけあって、状況を冷静に見ているようだ。彼はオルトではなく、俺を睨みつけた。


「カイル。そのゴーレム……ただの人形ではないな。どこで手に入れた? 古代の遺物アーティファクトか?」

「いいえ。私が設計し、私が作りました」

「嘘をつくな! 魔力のないお前に何ができる!」


 父の怒声に、俺は肩をすくめた。


「魔力はエネルギーに過ぎません。重要なのは、それを制御する『論理』です。父上たちは魔力を持つことに胡坐をかき、その効率的な運用を怠ってきました」

「屁理屈を……!」


 そこで、人垣を割って一人の老人が現れた。

 白髪に長い髭、豪華なローブを纏ったその人物は、宮廷魔導師長のヴァルターだった。この国で最も魔法に精通した権威だ。

 彼は興味深そうにオルトを見つめ、震える声で言った。


「信じられん……このゴーレム、完全に自律しておる。しかも、その魔力回路の複雑さは、我々の理解を遥かに超えている。……本当に、君がこれを作ったのかね?」

「はい、魔導師長。ソースコード……設計図もお見せできますよ」


 俺の言葉に、会場の空気が変わった。権威ある魔導師長の反応を見て、周囲の貴族たちが「無能なオメガ」という評価を改め始めたのだ。


「ふん、たまたま上手くいった玩具だろう」


 ライオネルが負け惜しみのように吐き捨てる。

 その時、オルトが優雅に一礼し、俺に手を差し伸べた。


「カイル、音楽が始まりました。一曲、いかがですか? 雑音を聞くよりも、踊る方が有意義です」


 挑発的なまでの無視。

 俺は父と兄を一瞥し、ふっと笑ってオルトの手を取った。


「ああ、喜んで」


 俺たちはホールの中央へ進み出た。

 ワルツの調べに合わせて、オルトが俺の体をリードする。

 彼の動きは完璧だった。

 ステップの一つ一つが正確無比で、それでいて優雅。俺の未熟なダンスを完全にカバーし、まるで俺自身がダンスの名手であるかのように錯覚させる。

 回転するたびに、ミッドナイトブルーの裾が翻り、オルトの黒い燕尾服と美しいコントラストを描く。

 もはや誰も、俺たちから目を離せなかった。

 そこにあるのは、「主人と従者」という枠を超えた、魂レベルで結びついた二人の世界だった。


「見せつけてやりましょう、カイル。あなたが誰のものか」


 オルトが耳元で囁く。

 彼はわざとらしく俺の腰を強く引き寄せ、顔を近づける。吐息がかかる距離。

 周囲の令嬢たちが悲鳴のような溜息を漏らすのが聞こえた。


「やりすぎだ、オルト」

「いいえ、足りません。本当は今すぐここから連れ去って、誰にも見せたくない」


 彼の瞳は、甘く危険な光を放っていた。

 曲が終わると、会場からは割れんばかりの拍手が巻き起こった。

 さっきまでの侮蔑の視線は消え、羨望と称賛の眼差しが注がれる。

 父とライオネルは、苦虫を噛み潰したような顔で立ち尽くしていた。


 ダンスの後、多くの貴族たちが俺たちに群がってきた。

 彼らの目的は、野菜の取引や、ゴーレム技術への投資の話だ。

 俺はオルトを傍らに控えさせ、的確にビジネスの話を進めた。

 エルステッド公爵家の威光など借りずとも、俺個人としての価値を、この場ではっきりと証明してみせたのだ。

 だが、宴もたけなわという頃、再び不穏な影が忍び寄る。

 父が衛兵たちを引き連れて、俺たちの前に立ちはだかったのだ。


「茶番は終わりだ、カイル。そのゴーレムを置いていけ。それはエルステッド家の資産で作られたものだ。没収する」

「……本気で言っているのですか?」

「逆らうなら、反逆罪で投獄する。ここには王都警備隊の精鋭がいるのだぞ」


 父は強硬手段に出た。権力でねじ伏せる、彼らしいやり方だ。

 警備隊が剣を抜き、俺たちを取り囲む。

 会場が再び凍りつく。

 しかし、俺は動じなかった。

 むしろ、待っていたと言わんばかりに眼鏡を押し上げた。


「法的根拠がありませんね。私は既に廃嫡されています。それに、オルトの所有権は、彼自身の意思によって定義されています」

「道具に意思などあるか!」


 父が叫んだ瞬間。

 オルトが、静かに一歩前に出た。

 その全身から、青白い光があふれ出す。

 魔力ではない。「論理」が具現化した光だ。


「訂正を要求する。私は道具ではない。カイル・フォン・エルステッドの伴侶パートナーだ」


 その宣言は、雷鳴のように広間に轟いた。

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