陥落
【告白成功から一週間後 浅野のマンション:19:00】
部屋には暖色のスタンドライトが一灯だけ灯り、柔らかな音楽が流れていた。浅野はソファに横向きに座り、甘える大型犬のように彩靜の柔らかい掌と首筋に顔を埋め、自分を無条件に安心させるシャンプーの淡い香りを深く吸い込んでいた。
「彩靜……すごくいい匂いだ。」浅野は独り言のように呟き、彼女の手首を指先で優しく摩って、その穏やかな脈動を感じていた。
彩靜は顔を真っ赤にしていた。付き合い始めてしばらく経つが、浅野のこの迷いのない親密さには、未だに心臓が止まりそうになる。彼の胸にそのまま寄りかかろうかと思った、その時――。
ブーッ、ブーッ!
ローテーブルに置かれたスマホが激しく振動した。画面に表示された「暗号化番号」を見た瞬間、彩靜の瞳には一瞬で冷徹な理性が戻った。
「ご、ごめん。電話に出るね。」
彼女はベランダへ向かい、声を潜めて応答した。「こちら『青』。……了解。10分以内にポイントへ到着する。」
電話を切ってリビングに戻った彩靜は、呆然とし、名残惜しそうな顔をしている浅野を見て、強い罪悪感に襲われた。
「ごめんね、浅野君……行かなきゃ。バイト先で急に人手が必要になっちゃって。」
自分でも最悪な言い訳だと思った。夜の7時に突然呼び出されるカフェの店員なんてどこにいるだろうか? だが、浅野を前にして、彼女はそんな拙い嘘を吐くしかなかった。
浅野は少し驚いた後、この上なく残念そうで、どこか拗ねたような表情を見せた。だが、彼はそれでも優しく頷き、深くは追及しなかった。
「……わかったよ。仕事なら仕方ないね。気をつけて。駅まで送ろうか?」
「う、ううん、大丈夫!」浅野の誠実で疑いを知らない顔を見て、彩靜の罪悪感は溢れ出しそうになった。彼女は奥歯を噛み締め、玄関を出る直前、重大な補償を申し出るように振り返って早口で言った。
「お詫びに……今度は、私の家に来て!」
浅野がその「衝撃的」な誘いに反応する間もなく、彩靜は風のようにマンションを飛び出していった。玄関に残された浅野の脳は、再びフリーズ状態に陥っていた。
【5分後:街の影の中】
彩靜は全速力で走りながら、手慣れた動作でバッグからタクティカル・イヤホンを取り出し装着した。
「青、座標位置に到着したか?」零の声が耳に響く。
「あと3分。」彩靜の声は氷のように冷たく、先ほど浅野に見せていた羞恥心は微塵もなかった。「ターゲットは確認した?」
「確認中だ。だがお前の心拍数は依然として高いな。情緒冷却が必要か?」
「必要ない。」彩靜は唇を噛んだ。脳裏には先ほどの浅野の残念そうな顔が焼き付いていた。「速戦即決。さっさと片付けて……家に帰るわ。」
【浅野の部屋】
浅野は依然として呆然と立ち尽くし、脳内で彩靜の「今度は私の家に来て」という言葉を何度もリピートしていた。
(家に来て……彩靜の家に……。)
(そ、それって家族に会うってこと? それとも、まさか……。)
彼は単純に顔を赤くし、次回の訪問時に持っていくべき手土産を想像し始めていた。
都心の超一等地に建つ高級マンション。外観は控えめだが、どこか人を寄せ付けない贅沢な空気を漂わせている。浅野はエントランスの前で、重厚な石壁とプロのセキュリティを眺め、手元の住所と、自分が提げている選び抜いたスイーツの箱を交互に見た。
「こんなマンションを買えるなんて……彩靜はバイトしてる側なの? それとも人を雇ってる側なの?」浅野は生唾を飲み込み、彼女の「謎のバイト」に対する認識をまた一段階更新した。
【彩靜の部屋:20:00】
浅野がチャイムを鳴らした時、心臓の鼓動は胸を突き破りそうだった。
「ピンポーン!」
ドアがゆっくりと開き、彩靜が昨日のあのオフホワイトの柔らかいセーター姿で現れた。髪は無造作に肩に散らされている。
「ハイ、浅野君。入って。」
浅野にとって、これが初めて踏み入る女の子の部屋だった。インテリアは簡素ながら質感が良く、部屋の隅には見覚えのある長い楽器ケースが置かれ、デスクの上は塵一つなく整頓されていた。空気には、浅野を虜にしているあの彩靜の淡い香りが満ちていた。
「お、お邪魔します……。」浅野は硬直した動作で靴を脱ぎ、ぎこちなく部屋へと入った。
彩靜はベッド脇のソファを指差した。「適当に座って。」そう言うと、彼女自身はベッドの端にそっと腰掛けた。
今の彩靜は、自分のプライベートな空間にいるせいか、外でいつも張っている「冷たい防空線」が完全に消えていた。
彼女はベッドの上で膝を抱えて座り、両手を膝の上で重ねて浅野を見つめていた。その瞳は春の泉のように柔らかく、恥ずかしそうに足の指先を微かに揺らしていた。
この無防備な姿は、浅野にとって核爆弾級の衝撃だった。
(……ち、近すぎる。)
(彩靜がベッドに座ってて……僕はそこから1メートルもない場所に座ってる……。)
(彼女のあの表情は何? なんであんなに可愛いの……。)
浅野は膝の上のズボンをぎゅっと掴み、極度のドキドキでオーバーヒート寸前だった。顔から火が出そうだった。どこを見ていいのか分からない。彼女の顔を見れば優しい眼差しに溺れ死にそうだし、脚を見れば自分が下衆な男のように思えてしまう。
「浅野君?」浅野が石化しているのを見て、彩靜は思わず小さく笑った。「どうしたの? 顔、すごく赤くなってるよ。」
「な、なんでもない! ただ……彩靜の部屋、すごく綺麗だと思って。君にぴったりだ!」浅野は慌てて大声で答え、動揺を隠そうとした。
彩靜はその不器用な様子を、愛おしくも可笑しく感じた。彼女は少しだけ前に身を乗り出し、二人の距離を縮めて小声で言った。
「昨日、急に帰っちゃって……本当にごめんね。だから今日は……たくさん補償してあげたいと思ってるの。浅野君、したいこと……ある?」
「補償」という言葉、そしてベッドの端で少し首を傾げて自分を見つめる彩靜の姿に、浅野の理性の糸が最後の一本で繋がっているのを感じた。
甘美さで沸騰しそうだった空気が、スマホの画面が光った瞬間に凍りついた。彩靜の視界の端に、暗号化されたメッセージが走る。
――『青、隣の高台に刺客あり。』
それはAI・零からの冷酷な予警だった。
彩靜の瞳は0.1秒もかからずに、恍惚としたものから鋭利な刃のような「狙撃手の眼」へと変貌した。だが、目の前には自分を優しく見つめる浅野がいる。彼にこの世界の血なまぐさい部分を見せるわけにはいかない。絶対に。
「浅野君、ゲームをしない?」彩靜は乱れる呼吸を抑え込み、誘惑と神秘を湛えた微笑を無理やり作った。
「いいよ、どんなゲーム?」浅野は不思議に思ったが、至近距離にある彩靜の顔を見て断れるはずもなかった。
「目を閉じて、耳を塞いで20秒数えてくれる? 数え終わるまで、絶対に覗いちゃダメだよ。」
「20秒だね? わかった、数えるよ!」浅野は純粋な笑顔を浮かべ、素直に目を閉じ、両手でしっかりと耳を塞いだ。
【カウント開始:01... 02...】
浅野が目を閉じた瞬間、彩靜は残像のような速さで跳ね起きた。ベッドから音もなく滑り出し、部屋の隅にある長い楽器ケースへと向かう。
カチッ!
それは楽器ケースのロックが弾ける音。中に入っていたのはバイオリンでもチェロでもなく、冷たい黒光りを放つセミオート・スナイパーライフル。彩靜の指はこの瞬間、神業とも言えるリズムを見せ、組み立て、ボルトを引き、照準を合わせる――その一連の動作に淀みは一切なかった。
【カウント:04... 05...】
彼女は窓を一筋だけ開け、夜の冷気が流れ込んだ。高倍率スコープ越しに、向かいのビル屋上でライフルを構える黒い影を瞬時にロックオンする。
風速、湿度、弾道補正――脳内で演算が瞬時に完了する。
パシュッ!
サイレンサーが巨大な爆発音をくぐもった音へと変えた。向かいの影は声もなく倒れ、闇の深淵へと転落していった。
空気にはサイレンサー越しの「パシュッ」という音が微かに残っていた。極めて小さな音だったが、静かな部屋の中で彩靜の心臓は激しく跳ねた。
彩靜の動作は稲妻のようだった。指先で微かな硝煙の匂いが漂うライフルのパーツを解体し、「カチッ」と楽器ケースに戻してベッドの下へと押し込んだ。全工程、わずか3秒。
(落ち着いて、後藤彩靜……心拍数を戻して!)
彼女は椅子に座り、両手で耳を塞いで目を閉じ、大声でカウントダウンを続けている浅野を見た。
「……12、13、14……」
あまりに素直で、どこか不器用なその姿を見て、彩靜の心には罪悪感と愛しさが交錯した。残りの10数秒の間に、今の「ゲーム」の意味を説明するに足る驚きを与えなければならない。さもなければ、カメラマンである浅野の直感は、空気中のわずかな異変に気づいてしまうだろう。
彩靜は深く息を吸った。緊張と、これからしようとすることへの羞恥心で、顔が真っ赤になった。彼女はベッドに戻る代わりに、音を立てずに浅野の前まで歩み寄り、彼の膝の上に跨るように座った。
「……19、20。彩靜、数え終わったよ!」
浅野は興奮気味に目を開けた。耳から手を離す間もなく、彼は完全に硬直した。
至近距離。
白いセーターに包まれた彩靜の小さな体が、彼の胸にぴったりと密着している。彼女の両手は彼の首に回され、長い髪が彼の肩に垂れていた。あの馴染みのある香りが、今は濃厚に彼の脳をオーバーロードさせていた。
「彩靜……?」浅野の声が震え、手のやり場を失って宙を彷徨った。
「これが……ゲームのご褒美。」
彩靜は彼の首筋に顔を埋め、蚊の鳴くような、それでいて振り絞るような勇気を込めた声で言った。「さっき、外ですごくうるさい花火の音がしたから……私が怖がってる姿を見せたくなくて、目を閉じさせたの。」
言い終えるやいなや、彩靜は少しだけ顔を上げ、目を閉じた。その柔らかい唇が、まるで羽毛が舞い降りるように、優しく浅野の頬に触れた。
その瞬間、時間は静止した。
浅野はキスされた場所が火がついたように熱くなり、灼熱感が全身を駆け巡った。窓の外の新宿の夜景も、先ほど幻想した花火も消え、彼の世界は目の前の赤くなった少女一人だけに凝縮された。
彩靜はゆっくりと少しだけ身を引き、手は浅野の腕に置いたまま、俯いて鼻にかかった小さな声で囁いた。
「これで……私のわがまま、許してくれるかな?」
浅野は呆然と座っていた。この20秒の間に、彩靜が彼の「平凡」を守るために高台の脅威を正確に排除したことなど知る由もない。彼はただ、目の前の少女がこの世で最も愛おしく、守るべき宝物だと思った。
「許すなんて……僕、怒ってなんてないよ。」
浅野は逆に彩靜の手を握り返した。その声は興奮のあまり、少し低く掠れていた。
「むしろ……驚きが凄すぎて、心臓を落ち着かせるのにもう20秒必要なくらいだ。」
浅野の誠実で(少し不器用な)答えを聞き、彩靜の心の中の罪悪感はようやく消え、代わりに濃密な甘さが広がった。彼女はそのまま浅野の腕の中に寄り添い、彼の広い胸から伝わる激しい鼓動を感じた。
(ごめんね、浅野君。あなたの世界では、これはただの20秒のゲームだけど……)
(私の世界では、この20秒は、私があなたの傍に居続けるためにできる、精一杯の努力なの。)
浅野は体を横に向け、自分に完全に心を開いている少女を見つめた。彩靜の柔らかな長い髪が白いシーツの上に散らばり、まるで精緻なシルクの絵のようだ。彼女の頬にはまだ動じない紅潮が残り、胸は激しい鼓動のために上下している。
浅野には分かっていた。今の彩靜は「絶対防衛」が崩壊した状態にある。
カメラマンとしての鋭い直感で、彼は彩靜のブラウンの瞳の奥に隠された従順と愛を見抜いていた。今ここで手を伸ばせば、全身の肌にキスをしようと、あるいはこの繊細な肉体をさらに深く手に入れようと、目の前の少女は恥ずかしそうに頷き、彼の望むままに応えるだろう。
しかし、浅野の手は毛布の下でぎゅっと拳を握りしめた。
(ダメだ……こんなに衝動的になっちゃ。)
責任感の強い(そして極めて純情な)大学生である彼の脳裏に、最も現実的な問題が浮かんだ。――今、何の避妊具も持っていない。 彼はこの神聖な初恋を、一時的な衝動で台無しにしたくなかったし、彩靜にリスクを負わせたくもなかった。彼は深呼吸をし、下半身から突き上げる熱い渇望を抑え込み、その想いを究極の優しさへと変えた。
「彩靜……」浅野の声はひどく掠れていた。彼は手を伸ばし、彼女の頬にかかる髪をそっと払った。「今、本当に君を抱きたい。でも、完璧な初めては、ちゃんと準備ができた時にしたいんだ。」
彩靜は一瞬呆然としたが、やがて浅野の言葉に込められた思いやりに気づき、強張っていた体がふっと解けた。瞳には感動の色さえ浮かんでいた。彼女は自ら少しだけ前へ寄り、浅野の胸に頭を預けた。
「うん……浅野君、ありがとう。」
最後の一線は越えないと決めたものの、浅野はそのまま彼女を「放免」するつもりはなかった。彼は大胆に彩靜の服の隙間に手を差し入れ、細いけれど驚くほどの熱を帯びた腰へと滑らせた。指先が薄い下着越しに、彼を狂わせるような柔らかさを捉える。
「最後まではダメだけど……もう少し触ったり、見たりするのはいいよね?」浅野は彩靜の耳元で意地悪く囁いた。
「ん……浅野君……」
彩靜は艶めかしい声を漏らし、触れられた刺激で再び体を微かに震わせた。彼女は目を閉じ、浅野のシャツの裾をぎゅっと掴んで、禁忌の境界線上での「予習」を黙認した。
部屋の中の空気は耐え難いほど濃密になり、暖房が効きすぎているのか、二人の呼吸は焼けるように熱かった。
浅野の手は、もはや服越しの接触では満足できなくなっていた。掌がシルクのように細やかで、温かく弾力のある肌を直接捉えた瞬間、彼の脳内のヒューズが音を立てて焼き切れた。その柔らかな感触は神経の末端を直撃し、今までカメラで捉えてきたどんな景色よりも衝撃的だった。
「ああ……これが、女の子の……」
浅野は満足感に満ちた、感嘆のため息を漏らした。普段は冷静で強大な彩靜が、ここでは信じられないほど柔らかいことに気づいたのだ。
「彩靜……もっと見たい。」浅野の瞳には、カメラマンとしての「美」への究極の渇望と、男としての原始的な衝動が燃えていた。
「うん……いいよ。」
彩靜の顔は血が出るほど真っ赤になり、彼女の脳は完全に防御を放棄した。震える手でゆっくりと上着を脱ぎ、自分の中で最も秘められた、純潔な部分を、浅野の前に露わにした。
浅野の手は貪欲になった。ただ触れるだけでなく、その温もりを刻み込むように力強く揉み、捏ねた。同時に、彼は彩靜の首筋に深く顔を埋め、少女の体香と、先ほどの恐怖の後に残る微かな汗の芳香を狂ったように吸い込んだ。
「彩靜……いい匂いだ……本当、気持ちいい……」
「ん……浅野君、力が強すぎるよ……はぁ……っ」
彩靜は溺れる者が唯一の浮木に縋りつくような心地だった。両手で浅野のシャツを必死に掴み、指先は力のために白くなっていた。浅野の手の動きが激しくなるにつれ、彼女の喘ぎ声は静かな部屋の中でより鮮明に響いた。それは普段、天才狙撃手「青」として決して見せることのない、最も脆く、最も心動かされる声だった。
この瞬間、彼女は冷酷な執行官ではなかった。ただ愛する者の腕の中で、究極の快感に身を委ねる20歳の少女だった。
浅野は、彩靜の溶けてしまいそうな喘ぎ声の中でようやく理性を少しだけ取り戻した。衣服を乱し、目を潤ませて自分を見つめる彩靜を見て、欲望以上に愛しさが勝った。
「彩靜……」浅野は動きを止め、彼女を強く抱きしめた。声は掠れ、優しさに満ちていた。「ごめん、少し理性を失ってた。君が……本当に綺麗だから。」
彩靜は彼の胸に顔を埋め、小さな声で応えた。「浅野君なら……いいよ。私も……こういうの、嫌いじゃない。」
部屋の温度は極限まで高まり、空気は羞恥と興奮で溢れていた。
浅野は並んで横たわるだけでは満足できず、彩靜の上に跨った。圧迫感のある雄としての気配を纏い、大胆に彼女の体の上を支配した。
彩靜は柔らかいマットレスに押し付けられ、長い髪を散らしていた。普段の冷静な面影はなく、顔には情欲に満ちた恍惚が刻まれている。浅野の片手は依然として貪欲に彼女の誇らしい胸を揉み、指先から伝わる驚異的な弾力を楽しんでいた。そしてもう一方の手は、侵略的に、ゆっくりと下へと滑り落ち、ついに誰も足を踏み入れたことのない神秘の深淵へと辿り着いた。
「あ……はぁっ……」
浅野の指先がその湿り気と熱に触れた瞬間、彼は思わず低く感嘆の声を漏らした。
「ああ……指が彩靜に包まれてる……すごく締まってて、熱い……」
彩靜は体内に侵入された瞬間、小さな体を猛然と反らし、長い脚を無意識に閉じようとした。浅野の指を挟み込もうとしながら、同時により深い刺激を求めていた。
浅野の指は、その温かい包囲の中で絶え間なくかき回し、探索を始めた。出し入れと回転が繰り返されるたび、静かな部屋に耳を貸すのも恥ずかしいような、微かな粘り気のある水音が響いた。
「ん……浅野君……ダメ……そこ……あぁっ!」
彩靜の喘ぎ声は完全に制御を失った。この天才狙撃手にとって、これは敵陣に孤立し弾薬も尽きた時よりも恐ろしく、それでいて狂おしいほどに溺れてしまう感覚だった。自分の魂が、浅野の指のリズムに合わせて、一滴一滴抜き取られ、かき混ぜられていくのを感じた。
「彩靜、君の中……本当に温かいよ。」浅野は彼女の汗ばんだ首筋にキスを落としながら、指の動きを早めた。「もっと欲しくなる……」
「あ! あぁっ……ダメ……はぁ、壊れちゃう……っ!」
彩靜は両手で浅野の腕を必死に掴み、彼の逞しい肌に爪を立てて幾筋もの赤い跡を残した。絶え間なくかき回される快感の波の中で、体内の奥深くから破滅的な悸動が湧き上がるのを感じていた。彼女の人生で初めて、自分は単なる「銃」ではなく、愛する男に徹底的に弄ばれ、愛される女であることを自覚した。
彩靜は身の下のシーツを必死に掴み、指先は力が入りすぎて白くなっていた。普段は引き金を引くために絶対の安定と精密さを保っているその手が、今は激しく震えている。浅野の侵略的な愛撫は、終わりのない津波のように押し寄せ、彼女の執行官としての最後の理性を完全に押し流した。
「あ……浅野君……はぁ……う、ん……もうダメ……い、いっちゃう……っ!」
それは彩靜がこれまでの人生で出したことのない、掠れた悲鳴だった。極限の快感のために瞳孔は開き、体は無意識に弓なりになり、白く長い脚はシーツの上で擦れ、丸まった。体内で狂暴な熱流が狂ったように渦巻き、どんな狙撃任務よりも衝撃的な爆発を迎えようとしていた。
浅野は耳元で響く、夢か幻のような、かつて空想の中でしか聞いたことのない喘ぎ声を聞き、内なる野性に完全に火がついた。快感のためにピンク色に染まり、震え続ける肉体を見つめ、その眼差しはどこまでも深くなった。
彼は指を伸ばし、すでに真珠のように屹立した乳頭を強く摘まんだ。独占の喜びと、優しい残酷さを込めて。
「いっちゃえよ。」
浅野の手のひらに力が込められた瞬間、その最後の一押しが、理性を完全に叩き潰した。
「あぁっ! ああああ……!!」
彩靜は長く、震えるような叫び声を上げた。彼女の体はその瞬間激しく強張り、次の瞬間にはすべての支えを失ったかのように激しく跳ね、痙攣した。脳内は一瞬で真っ白になり、すべての戦術演算、すべての防備、すべての冷徹さは灰燼に帰した。後に残ったのは、紅蓮のように咲き誇る、純粋な快感だけだった。
数分後、彩靜は力なくベッドに横たわり、大きく肩で息をしていた。普段の清廉なブラウンの瞳は今、水の膜に覆われ、焦点が合わず虚ろに見える。白い胸は激しく上下し、汗がこめかみの長い髪を濡らしていた。
浅野は優しく身を乗り出し、今まさに「洗礼」を終えたばかりの少女を強く抱きしめ、汗の浮いた彼女の首筋に何度も口づけをした。
「彩靜、君は本当に最高だよ。」浅野は達成感を湛えた声で、低く彼女を讃えた。
彩靜には、もう言葉を返す力すら残っていなかった。彼女はただ本能的に浅野の腕の中に潜り込み、港を求める小舟のように寄り添った。先ほどの一瞬の崩壊は、彼女に思い知らせた。自分はこの先、一生この男から離れることはできないのだと。




