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ZERO-DELAY  作者: WE/9
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53/102

隠された男

『RA-TIO:生存比率』の動画が公開され、爆発的なヒットを記録してからというもの、ネット上の世論は極めて奇妙で、制御不能な方向へと突き進んでいた。


本来注目されるべきRちゃんと小Aは、いつの間にかネットユーザーたちの妄想の中で「あの謎のカメラマン」とセットで語られるようになっていた。それはライブ配信中の消音された気遣いだけでなく、数十分にも及ぶ解説動画の中で、彼の青っぽく、時にわずかに震える声が、少女たちの彼に対する無防備で、時に強引なまでの「親密な関係」と強烈なコントラストを成していたからだ。


• 男性視聴者: 怒りを込めて彼を「世界で最も幸せな男の一人」と呼んだ。Rちゃんの戦闘中の雄姿を間近で撮影し、彼女の息が上がっている時に肩を叩ける彼に嫉妬したのだ。


• 女性視聴者: 彼女たちは別のロジックを持っていた。「あのプライドの高いツンデレ女王のRちゃんと、清廉な天才の小Aが、同時に認め、傍に置いている男。それは厳格に選別されたハイスペックな良い男に違いない」


瞬く間に、ネット上にはあらゆるパロディや創作が広まった。当事者たちを最も悶絶させたのは、掲示板で拡散された高度なコラ画像だった。画面中央に寝転ぶカメラマン(相変わらず下半分と首筋だけ)が、左右の手でそれぞれRちゃんの頭を撫で、もう片方の手でライフルを抱いて眠る小Aと手を繋いでいる。タイトルは――


『生存比率100%:カメラマンのベッド争奪戦』。


【ZERO-DELAY 東京本部:戦術討論室】


パシッ!


鋭い音が響き、凛がスマホの画面を金属のデスクに叩きつけた。デスクの上のコーヒーが跳ねるほどの勢いだった。彼女の表情はもはや「不機嫌」では済まされない。それは殺意と極度の羞恥が混ざり合った歪みだった。


「通行人先輩……ちょっとこっち来なさい」凛は声を低めた。嵐の前の静けさのような、重苦しくゆっくりとしたリズム。


「ぼ、僕、本当に何もしてないよ! それはネットの人が作ったコラ画像だって! 君と手を繋いだことさえないのに!」今田は降伏するように両手を上げ、壁に張り付いて冷や汗を流した。


「手を繋いだこと……あんた、繋ぎたいと思ってたわけ?」凛はゆっくりと立ち上がり、手に持っていた爆発物処理用のカッターがチキリと音を立てた。


隣に座る彩静は、スマホ画面の「左手に花、右手に花」状態のコラ画像を見つめていた。無表情な顔の下で、耳たぶはすでに血が滲むほど赤くなっている。彼女は画像の中でライフルを抱き、カメラマンに寄り添う「自分」を見つめながら、数日前に大阪で通りすがりの人から「君が動画の小Aちゃん?」と探るような視線を向けられたことを思い出していた。


『ビッグデータ分析によれば、この画像の拡散率は解説動画そのものを超えています』ハリーの空気を読まない声が響き、親切にもモニターに画像を拡大表示した。『ちなみに今田さん、あなたの「首筋のライン」は現在、日本全国が選ぶ「埋もれたい部位」第3位ですよ』


「ハリー! 黙ってて!」今田と凛が同時に叫んだ。


コラ画像の騒動を鎮めつつ、組織上層部の「チャンネルの影響力を拡大し続ける」という要求に応えるため、ハリーは「番組ディレクター」として動画の冒頭に正式に出演することを決めた。


スクリーンにはパーカーを着た少年のシルエット(ハリー)が現れた。声は幼いが、すべてを把握しているような落ち着いた口調だ。


「『RA-TIO』のフォロワーの皆さん、こんにちは。私がこの番組のディレクターです」ハリーは両手を広げ、背景には演算データが流れる。「最近ネットで噂されているコラ画像について、ディレクターとして釈明する義務があると感じました。Rちゃん、小A、そしてカメラマンの関係が非常に親密であることは確かですが、皆さんが想像しているような乱れた関係ではありません。彼らは死線を共にするパートナーであり、互いに深い信頼で結ばれています」


説得力を強めるため(あるいは単に面白がるため)、ハリーは動画の最後に**〈ニューヨーク任務後のプライベート記録〉**というタイトルの映像を付け加えた。


【サイド映像:ニューヨークの庶民的なレストラン】


それは以前、ニューヨークでのクリーニング任務を終えた後、小さなレストランで夕食をとっていた時の隠し撮り映像だった。演出のない、リアルな生活感が漂っている。


映像の中で、凛は料理が出てくるのが遅いことにイライラしてテーブルを叩き、「この店のテンポはどうなってんの? 15分待ってもデザートすら出てこないなんて……」とぼやいていた。


その時、画面の端から一本の手が伸びた――今田の手だ。彼は凛の機嫌の悪さに慣れきっているようで、怖がるどころか極めて自然な動作で指を伸ばし、凛の頭をポンポンと二回叩いた。


「いい加減にしなよ。ここは東京じゃないんだから、少しは我慢して」


今田の少年らしい、青い声が背景に響く。


猛り狂う小獅子のようだった凛は、頭を叩かれた瞬間に体が明らかに硬直した。しかし、怒り出すどころか、鼻を鳴らしてプイと横を向き、帽子のつばを下げて赤くなった頬を隠した。


続いてカメラが切り替わる。今田は手を引くと、テーブルのピッチャーを手に取り、自分のグラスに注いだ後、向かい側でメニューを見つめたままぼーっとしている彩静のグラスにも、丁寧に水を注いであげた。


**彩静(小A)**は顔を上げ、茶色のポニーテールが揺れる。彼女はその水を見つめ、極めてわずかだが、心から安心したような笑みを浮かべて「……ありがとう」と呟いた。


ハリーはこの「温かい仲間との絆」が騒動を鎮めると思っていたが、動画が公開されるや否や、風波は指数関数的に爆発した。


【コメント欄が10万件を突破】:


• 「これが『仲が良い』だと? 『想像しているような関係じゃない』? ディレクター、ちょっと表に出ろ!」


• 「頭を叩かれたRちゃんの反応見たか? あれは『絶対服従』だろ! 俺のツンデレ女王が頭ポンポンされて落ちてるぞ!」


• 「カメラマンが小Aに水を注ぐ手つき、慣れすぎだろ。『世話を焼くのが当たり前』みたいな空気感、何なんだよ!」


• 「確信した。これはコラじゃない、動かぬ証拠ガチだ。カメラマン、万能すぎるだろ!」


• 「もはや一姫二太郎(一王二后)の日常録画じゃないか。助けてくれ、カメラマンが余計に羨ましくなった!」


休憩室で、凛はタブレットに映る「絶対服従」というコメントを見つめ、羞恥心で激しく震えていた。


「ハ……リー……」凛の地獄の底から響くような声。「あんたのマザーボード、引っこ抜いて野良猫の餌にしてやるわ……」


「だ、だからあの動画は出すなって言ったのに!」今田はネットからの「決闘状」を何通も受け取り、隅っこで悲鳴を上げた。「今や日本中の男が僕を暗殺しようとしてるよ!」


彩静は黙ってその水を飲み干し、モニターの中で今田に微笑む自分を見つめ、深い沈黙に沈んでいた。彼女は、この動画が出されたことを決して嫌だと思っていない自分に気づき、その罪悪感から今田の顔を見ることさえできなかった。


その時、ミナトが面白そうな笑みを浮かべてドアを開けた。


「いい数字だね。再生数がまた倍増したよ」彼はスマホを振った。「でも、この動画のせいで君たちは今や『国民的三角関係』と呼ばれてる。ハリー曰く、みんな君たちの交流を楽しみにしてるから、次回のテーマはもう決めたそうだ」


「……何よ?」凛が冷たく尋ねる。


「〈カメラマンの受難日:二人の教官による体力特訓〉だ」ミナトは眉を上げた。「Rちゃんと小Aがどうやってこの『幸せなカメラマン』を鍛えるか、生配信するんだ。今田、幸運を祈るよ。保険金の手続きは俺がしてあげるから」


【動画冒頭:RA-TIO専用BGM、流れるコメントのスクリーンショット】


最近、チャンネルのコメント欄にはAIシステムを困惑させる奇妙なトレンドが現れていた。ハリーの幼くもプロフェッショナルな声のせいで、ユーザーたちの妄想は銀河の彼方まで広がっていた。


カメラ: 仮想のディレクタースタジオ。野球帽にパーカー姿の少年ハリーが再び現れる。


ハリー(ディレクター): 「皆さん、温かいコメントありがとうございます。ですが、ここでいくつか釈明させてください。まず、私はカメラマンとRちゃんの子ではありません」


画面: 最も「いいね」の多いコメントが表示される――「ディレクターは何歳?」


ハリー(ディレクター): (指を唇に当て、ミステリアスな微笑を浮かべる)「秘密です。 皆さんがそれほどカメラマンに興味があるのなら、今日はハードな内容で行きましょう。今週のエピソード:体力強化の方法について」


【場所:ZERO-DELAY 秘密訓練場】


カメラ: 一人称視点(今田のカメラ)。重い機材を背負い、目の前に広がる障害物コースが映る。


このエピソードでは、二人の少女は厚手の外勤ジャケットを脱ぎ、黒のトレーニングタンクトップ姿になっていた。


R(凛): タンクトップが、小柄ながらも爆発的なエネルギーを秘めたラインを描き出している。細い二の腕が露わになり、肌は発光しているかのように白い。右手の戦術用リストガードが、彼女の殺傷能力を視聴者に思い出させる。彼女は冷徹な表情でストレッチをしていた。


小A(彩静): 同じくタイトなタンクトップ姿で、長いポニーテールをいつもより高く結んでいる。普段のゆったりした服に隠されていたスタイルが、スナイパー特有のしなやかさとバランス感覚を露わにしていた。


【ライブ配信コメント欄が瞬間的に埋め尽くされる】:


• 「なんて肌の白さだ……発光してるだろこれ!」


• 「この腕のライン……俺より細く見えるのに、あんな重火器を扱えるのか?」


• 「この華奢さと戦闘力のギャップ、たまらん……」


R: (カメラに向き直り、鋭い眼差しを向ける)「おい、通行人カメラマン。皆にあんたが『幸せな男』だって言われてるんだから、今日はその幸せの代償をたっぷり味わわせてあげるわ。私たちのリズムについてこれないなら、泥沼に置いていくからね」


今田(カメラ越し): 「は、はい……(すでに息が上がりそうな声)」


R: 「出発!」


Rの号令とともに、二つの黒い影が弾け飛ぶように飛び出した。Rの動きは豹のように猛々しく、障害物を跳び越える姿は一切の無駄がない。対して彩静は猫のように、音もなく正確な足取りで進んでいく。


カメラ(今田視点): 激しく揺れ、重苦しい喘ぎ声が混ざる。今田は走りながら、太陽の下で汗を流す二人の姿を必死に捉えようとしていた。


小A: (走りながら振り返り、遅れているカメラを見て、心配そうでありながら困惑した表情を浮かべる)「カメラマンさん……呼吸して……リズムを整えて……じゃないと倒れちゃいます……」


R: (急停止し、カメラの前に戻ってきて怒鳴りつける)「誰が止まっていいって言ったのよ! 前を見なさい! もしそのスタビライザーが1度でも傾いたら、あと5キロ追加よ!」


そう言って、Rは今田を鼓舞(脅迫)するように彼のすぐ脇を並走した。至近距離から、少女特有の体温と汗の香りが伝わってくる。


【特写:限界状態の美】


特訓の半ば、二人は足を止めて水を飲んだ。カメラが特写アップを捉える。


汗が凛の首筋を伝ってタンクトップへと流れ落ちる。彼女はうっとうしそうに濡れた前髪を払い、眼差しは依然として険しいが、そこには驚くべき生命力が宿っていた。


一方の彩静は、小さな口で水を飲んでいる。白い頬は運動のせいで淡いピンク色に染まり、カメラに向かってわずかに会釈した。その清らかさと運動後の高揚が混ざり合い、言葉にできない美しさを放っていた。


【コメント欄】:


• 「前言撤回、彼女たちは細いんじゃない、極限まで鍛え抜かれてるんだ!」


• 「Rちゃんに怒鳴られてるのを見て、なぜかやる気が出てきた……」


• 「カメラマン、マジでお疲れ様。この『一人称視点』の臨場感、半端ないわ」


カメラ: 一人称視点(今田)。激しく揺れた後、今田が崩れ落ちるとともに画面は雑草と野花に向けられたまま静止した。風袋のような荒い呼吸音だけが響く。


「プロのカメラ機材を背負ってトップ執行官のクロスカントリーについていく」など、一般人にとっては自殺行為に等しい。


「おい! カメラマン、水分補給しなさい。じゃないと番組が制作の死亡で永久に終わっちゃうでしょ」


鈴を転がすような、それでいて毒舌を含んだ声とともに、黒いタクティカルブーツが画面の端に現れた。カメラがゆっくりと上へパンすると、日焼けでわずかに赤らんだ**R(凛)**の顔が映し出された。彼女はカメラを見下ろし、汗で少し濡れたタンクトップ姿で、冷えたミネラルウォーターを差し出してきた。


「……あ、ありがとう」


今田は震える手で受け取ろうとしたが、疲労のせいで視界が二重になり、ボトルを掴もうとした手が「パシッ」と凛がボトルを握っている手の上に重なってしまった。


冷たく、少しマメのある凛の手と、今田の熱を持った掌が強烈なコントラストを成す。


R(凛): (体が硬直した。瞳から鋭さが消え、代わりに驚きと恥じらいが混ざった困惑が浮かぶ)「あんた……!」


彼女はすぐには手を引かなかった。二秒ほど今田の手に重ねられたままにさせていたが、最後は不承不承といった様子でボトルを彼の胸元に「押し付けた」。彼女は直立し、羞恥に満ちた瞳でカメラを睨みつけた。「またどさくさに紛れてセクハラしてるわね」という赤らみが、首筋から耳の付け根まで一気に広がっていた。


「……ほら、持っていきなさい! 次に変な触り方したら、指を切り落としてやるから!」


言葉は相変わらず乱暴だが、無意識にカメラの視線を避ける彼女の狼狽ぶりは、配信ルームの空気を一瞬でピンク色に変えた。


小A(彩静): 彼女も傍らに歩み寄ってきた。今田の頭の横でそっと屈み込む。ポニーテールが肩にかかり、茶色の瞳には純粋な心配の色が浮かんでいた。ゴーグルやマスクのない彼女の清純で内気な美しさは、視聴者の息を止めるほどだった。


「カメラマンさん、大丈夫ですか?」小Aが優しく問いかけ、清潔なタオルを差し出した。「鼓動がすごく速いです……ゆっくり、呼吸してください……」


【ライブ配信コメント欄:全滅】


• 「これ体力強化動画じゃないだろ! **『二人の教官に優しくされる没入型体験映像』**だろ!」


• 「カメラマン! あの二秒間、その手で何を感じたんだ!? Rちゃんの手の甲だぞ!」


• 「凛のあの恥ずかしそうな目……助けてくれ、俺の心拍数の方がカメラマンより速い!」


• 「小Aが屈んで声をかけてくれるシーン、スクリーンショットしてデスクトップにした。天使かよ」


【バックグラウンド:ハリーのデータ総括】


『データによれば、最後の5分間の「サービスタイム」の視聴率は、これまでのどの訓練シーンをも上回りました』


ハリーの仮想アバターが再び現れ、今田の「介抱」をしている二人の少女をモニター越しに見つめ、意味深な微笑を浮かべた。



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