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ZERO-DELAY  作者: WE/9
歩み続ける理由

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11/46

銃弾と花火

東京本部の夜明けは、いつも電子機器の微かな電子音とともにやってくる。ブラインドの隙間から差し込む陽光が、床の上に斜めの光の帯を描き、その光柱の中で小さな塵がゆっくりと舞っている。


ミナトはすでに起きていた。昨日のボロボロになった装甲を脱ぎ捨て、シンプルな黒のコットンTシャツとパンツに着替え、ベッドの縁を背にして冷たい床に座り込んでいた。目の前には、とっくに冷めきったブラックコーヒー。指先には、ミッチェルが遺したあの書き置きが挟まれている。その表情は、どこか虚ろだった。


彼はゆっくりと首を巡らせ、自分のシングルベッドに視線を向けた。


アキラはまだ深い眠りの中にいた。普段は深い紺色の長髪を凛々しくポニーテールにまとめ、刃のように鋭い眼差しを見せる彼女だが、今は髪が枕の上に乱れ散っている。彼女はまだ服を着ておらず、白い肩と整った横顔が半分だけ覗いていた。冷徹なタクティカルバイザーのない彼女の睫毛は、夢の中で微かに震え、呼吸は穏やかで静かだ。人を寄せ付けないあのツンデレな雰囲気は、朝の光の中で完全に消え去っていた。


湊は彼女を見つめながら、昨夜の二人の体温、激しい息遣い、そして彼女が耳元で囁いた「私に任せて」という言葉を反芻していた。


彼の部屋は狭い。一つのベッドの他には、窮屈な布製のソファがあるだけだ。


「ソファ、寝心地悪りぃな……」


湊は小さく呟き、自嘲気味に首を振った。肩はバキバキに凝っているが、その顔にはここ数日で最もリラックスした、彼本来の雅派がはな笑みが浮かんでいた。それは、「帰る場所」を見つけた者だけが持つ温もりだった。


【二時間後・兵装整備エリア】


暁が再び廊下に姿を現した時、彼女はいつもの厳格な姿に戻っていた。黒の作戦服は一番上のボタンまで留められ、赤と白のバイザーが再び装着されている。その歩みは正確で力強く、まるで昨夜の出来事がすべてシミュレーション戦だったかのように。


しかし、湊が二つのホットコーヒーを手に彼女へ歩み寄ると、暁の「防壁」は一瞬で崩壊した。


「おはよう。昨夜はよく眠れ……」


「こ、こっちに来ないで!」


暁は感電したかのように飛び退き、石碑のように硬直した。バイザー越しに視線は見えないが、覗いている耳の先は血が滲みそうなほど真っ赤に染まっている。


湊は心外だと言わんばかりに立ち止まった。「コーヒーを渡そうとしただけなんだけどな」


「必要ないわ! わ、私はタクティカル栄養剤を定時に摂取してるもの!」


暁はしどろもどろに叫び、視線を泳がせながら、後ずさりして撤退しようとした拍子に、パトロール中の清掃ロボットにぶつかりそうになった。


『エグゼクティブ・新堂暁の心拍数が異常上昇、148 bpmを記録』 ゼロの、あの人を食ったような平坦な声がロビーのスピーカーから響き渡った。


『タクティカルマニュアルによれば、過度の緊張はリズム感に0.5秒の誤差を生じさせます。神楽エグゼクティブは、彼女から1.5メートル以上の安全距離を維持することを推奨します。部隊の重要戦力が「オーバーヒート」で損傷するのを避けるためです。なお、神楽エグゼクティブ、昨夜のソファでの睡眠データによれば、あなたの脊椎に過度な負担がかかっています。ダブルベッドへの変更申請が必要ですか?』


「零! 黙りなさい! 昨夜の記録はすべて、完全に削除してっ!」


暁はバーチャル端末に向かって発狂せんばかりに叫び、そのままうつむき、彼女の持つ最高の瞬発力を発揮して廊下の彼方へと消え去った。


湊は逃げていく彼女の背中を見送り、零のブラックジョークを聴きながら、仕方のないやつだとコーヒーを啜った。


「あいつ……やっぱり変わってねぇな」


【一週間後・12月31日 朝】


司令は巨大な東京の地図を前に、険しい表情で宣言した。


「大晦日は無差別襲撃事件のピークだ。本部からの指示により、ZERO-DELAY全メンバーは12月31日から1月1日までの48時間、フル稼働体制を維持する。これはバカンスではない、門番だ」


「市街地の各駅に、少なくとも一つのユニットが警察と連携してパトロールにあたれ」


年末の東京には、年越し蕎麦の香りと群衆の浮き足立った喧騒が満ちていた。市民を驚かせないよう、司令は私服での巡邏じゅんらを命じていた。


湊はダークグレーのウールコートを羽織り、両手をポケットに入れ、襟元を少し崩して、どこか野性味と落ち着きを併せ持った雰囲気を纏っていた。隣の暁は、スマートな黒のショートダウンとハイウエストのパンツを穿き、長い髪をシンプルにまとめている。耳の後ろで微かな光を放つ通信モジュールがなければ、二人は年越しを祝うごく普通のカップルに見えただろう。


人波は押し合いへし合い、二人の肩が時折触れ合う。湊が横を向くと、暁が緊張した様子で周囲を警戒し、手で存在しないバイザーの位置を何度も直しているのが見えた。


「リラックスしろよ。今はエグゼクティブじゃなく、ただの『暁』だろ」


湊は微笑み、ポケットの中で指を広げ、彼女の手を握ろうと試みた。


その指先が触れようとした、まさにその瞬間——。


『神楽、カップル気分を邪魔して悪いが』 零の声が氷水のように降り注いだ。


『三時の方向、路地の入り口。ターゲットが30センチの直刃を所持、心理ストレス係数88、「無差別襲撃」のクリティカルポイントに到達。クリーンアップ・プログラムを起動します』


空気が一瞬で凍りついた。二人の瞳は0.01秒で切り替わり、優しさは消え、代わってハンターのような鋭さが宿る。


言葉はいらなかった。湊と暁は同時に加速した。顔を歪めた男がコートの下から鋭利な刃物を引き抜き、最初の悲鳴を上げる間もなく、湊のリズム感はすでに相手の重心を捉えていた。


湊の鮮やかな手刀が男の手首を叩き、そのまま壁へと組み伏せる。膝蹴り、武装解除、手錠。その一連の動作は、幾度もリハーサルを重ねたかのように流麗だった。


「警察だ。動くな」 暁が冷徹に言い放ち、赤く光る銃口を男の頭部へ向けた。そしてそのまま、駆けつけた外周警察に犯人を引き渡す。


湊はコートの埃を払い、何も知らずに歓喜し続ける遠くの群衆を見つめ、白いため息をついた。


「これが俺たちのデートか。全ったく、心温まるぜ」


二人は喧騒を避け、東京の夜景を一望できる高層ビルの屋上へとやってきた。冷たい夜風が暁の髪を乱し、遠くの東京タワーのカウントダウン表示が点滅を始めていた。


「湊、これに替えて」暁は腰のタクティカルポーチから二つの特製マガジンを取り出した。弾丸の先端は金属ではなく、透明な感応結晶体だった。


「これはZERO-DELAYの伝統よ。私たちはこの街を守るけれど、街の人たちは私たちの存在を知る必要はないわ」


湊はマガジンを受け取り、薬室へ送り込んだ。彼はゆっくりと、自分専用のグリーンのタクティカルバイザーを装着した。暁も同時に、深紅のバイザーを下ろす。


【00:00・年越しの瞬間】


遠くの街頭から「ハッピーニューイヤー」の巨大な歓声が上がった時、二人は視線を交わし、同時に漆黒の夜空に向かって引き金を引いた。


——プッ。


爆発的な銃声はない。微かな電磁激発音だけが響いた。しかし、彼らのバイザーの視界の中では、漆黒の虚空が一瞬にして神話のような祝祭へと点火された。


それは、一般人の肉眼では決して見ることのできない高周波の蛍光軌跡だった。


• 東京の空は、湊が放った蒼い旋律と、暁が放った深紫の光束に貫かれ、二つの軌跡は雲の上で絡み合い、回転し、まるで街を守る二頭の龍のように舞った。


• 遥か遠くの横浜港からは、白鷺零次の白い軌跡が孤高の剣のように放たれ、極速で長空を切り裂き、いつまでも消えずに残っていた。


• 大阪、福岡、札幌。日本中の数千の場所から、あらゆる色の光束が同時に昇っていった。赤、黄緑、黄金、インディゴ。無数の光が成層圏の縁で集い、日本列島の星空を色鮮やかな絹糸で細密に縫い合わせていく。


それは「極静の煙火」。繁華街の灯りの下で、数千人の隠れた守護者たちがこの瞬間、この方法で同胞たちに確認し合っていたのだ。「俺たちはまだここにいる。俺たちが守り続けている」と。


「綺麗……」 暁は赤いバイザー越しに、その壮麗な光景を見つめ、浮き足立っていた心は完全に静まり返った。


「ミッチェルさん、見てるか?」 湊は静かに呟き、寒風の中でそっと暁の指を握りしめた。


二人が長い勤務とパトロールを終え、宿舎エリアに戻った時には、すでに深夜となっていた。


湊の顔には疲労が滲んでいた。自室のドアを開けようとした時、暁がずっと黙って後ろをついてきていることに気づいた。廊下の時計が深夜12時を回ったその瞬間、暁が突然彼の服の裾を掴んだ。


「あの……」


暁は深く息を吸い込み、背中から丁寧に作られた、微かな香りのするハンドメイドのバースデーカードを取り出し、湊の手に押し付けた。彼女はうつむき、長い髪で赤くなった頬を隠しながら、蚊の鳴くような、それでいてはっきりとした声で言った。


「誕生日おめでとう! 湊」


湊はその場に呆然と立ち尽くした。1月2日が自分の誕生日だなんて、とっくに忘れていた。彼はカードを見つめ、そして目の前にいる、武装を解いて優しい眼差しを向けている少女を見つめた。心の中にあった自責と疲労が、一気に溶け去っていった。


「ありがとう、暁。今までで最高のプレゼントだ」


彼は彼女を自分の方へと引き寄せた。二人の影が、廊下の柔らかな灯りの下で重なり合う。時計は今も進み続けている。だがこの瞬間だけ、リズムは二人だけのものだった。


画面は切り替わり、司令室へ。司令は独りで、窓の外のすでに消え去った蛍光軌跡を見つめていた。彼のデスクには、ミッチェルと自分、そしてまだ子供だった頃の零次が写った古い写真が置かれていた。


「時計は、今も進み続けているぞ、ミッチェル」



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