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【連載版】竜の器と囚われの贄姫 ~竜にされた家族を助けるため、貴族の家を飛び出し世界最強の男と傭兵になります~  作者: 神崎右京
第五章

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第50話 再会① (Side:カルロ)

 俺は、人通りが増えて来た王都の通りを全力で駆ける。


「嘘だろ……! 急がないと――シャロンが――!」


 人の波を縫って走っているのは、理由がある。


 今朝、俺はまず、学園に出かけた。目当ての女教師からの手紙が来ていないかを確認するためだ。

 シャロンは今日も特別資料館で調べ物の続きをするというので、くれぐれも変な男からの声掛けには返事をしないように念押しして送り出した。俺も、学園で手紙の有無を確認したら、すぐに資料館に行ってシャロンと合流するつもりだった。

 すると幸いなことに、女教師から手紙が返って来ていた。俺はその場ですぐに開封して中身を確認し――


 衝撃を受けて、すぐに駆け出した。


 目的地は、当然――特別資料館。

 一刻も早く、シャロンのもとへ行かなければならない。


「シャロン――!」


 人波をかき分け進むうちに、歴史を感じさせる石造りの建物が見えてきた。

 特別資料館は、王立図書館の別館として百年以上前に建てられた由緒正しい施設だ。重厚な扉を押し開けて中に駆け込むと、高い天井から降り注ぐ朝の光が、磨き上げられた床を白く照らしている。静謐な空気の中、数人の利用者が書架の間を行き来していた。


 あんな美少女、どこにいたって絶対に目を引く。すぐに見つけられる自信があった。

 息を切らせながら、きょろきょろと辺りを見回す。


 ――いた。


 窓際の閲覧席の近く。朝日を受けて輝くハニーブロンドが、遠目にもはっきりと見える。

 男装していても隠しきれない高位貴族としての気品。すらりとした立ち姿。凛とした横顔は、息を呑むほど美しい。

 見る者すべてを虜にしてしまう、絶世の美少女。世界一愛しい、俺の天使。


 ――その隣に、男が立っていた。


「っ――!」


 職員らしき服装の、ひょろりとした体格の男。妙に馴れ馴れしい距離感で、しきりにシャロンに話しかけている。

 十中八九、昨夜話していた、ナンパ職員だろう。


 シャロンは美しい顔に少し迷惑そうな色を滲ませて、毅然とした態度で無視を決め込んでいるようだが、男は微塵も懲りていないらしい。軽薄で歯が浮くような口説き文句が、静かな館内で漏れ聞こえた。


 その瞬間、俺の中で何かが切れた。

 資料館の中だということも忘れて、一瞬で距離を詰めるために駆け出し、床を蹴る。


 俺は躊躇することなく、軟派男の背中目掛けて全力で飛び蹴りを放った。


「ぐぇっ!?」


 鈍い音と共に、男が床に突っ伏す。

 その声には、案の定――聞き覚えがありすぎた。

 予想を確信に変え、俺は感情のままに怒声を張り上げる。


「てめぇこのクソ教師!!! 五年以上経っても相変わらずか、女たらし野郎が!!!」

「カっ――カルロ!?」


 シャロンの驚いた声が響き、俄かに周囲が騒がしくなる。

 だが俺は気にすることなく、床に突っ伏した男の襟首を捕まえ、引きずり起こす。


「いい年してくだらねーことしてんじゃねぇぞ、アーノルド!!!」

「っ、ぇえええ!?」


 俺の一喝に、シャロンが心から驚いた声を出す。

 引き起こされた軟派男――リオネル・アーノルドは、倒れた衝撃でズレた眼鏡をかけ直して、ヘラリと笑った。


「なんだ。随分懐かしい顔じゃないか。こんなところで何をしてるんだ? 魔道具発明の天才児、カルロ・ファレス」


 しゃあしゃあと言ってのける男に、ふつふつと怒りが湧き上がる。

 禁忌とされていた禁術の研究に手を出して魔塔を追われ、王都からも更迭された、危険思想の持ち主。

 飄々としてつかみどころがなく、研究以外に興味はないと言わんばかりに、責任ある大人とは思えないほど気ままな振る舞いをする男。


 ――こいつは本当に昔から変わらない。

 美女を見たら声を掛けずにいられない軽薄なところまで、本当に。

 

「ふっざけんな!! あの頃、てめぇがやらかしたせいでどんだけ苦労したと――いや、今はそんなことじゃなくてだな――!」


 たっぷり五年分の恨みつらみを浴びせかけそうになって、ぐっと口を噤む。今はそんなことを言っている場合ではない。


「お前の研究について、こっちはたっっぷりと聞きたいことが――」


 何せ、時間が足りないのだ。社交シーズン開幕まで、あと二週間を切っている。すぐにでも本題に入りたい。

 俺は血走った眼で、かつての後見人に本気で凄んだところで――


「……あのう。恐れ入りますが、一度、警備員室までお越し頂けますか?」

「――……ぁ?」


 アーノルドに跨り胸倉をつかんでいる俺の肩に手を置いて、騒ぎを聞きつけてやって来た警備員が、至極当然の主張をした。


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