第1話 - 転生したと思ったら元の世界にだった
日本のどこかに、とある20代の会社員女性がいました。
その女性はブラック企業で働き、毎日毎日大変な生活を送っていましたが、本人はそれが普通だと思っていました。
ある日、いつも通り朝5時に起き、大急ぎで準備し、5時半には会社へ向かいます。
「今日も仕事...」
しかし通勤中、彼女は事故に遭い、そのまま命を落としてしまいました。
気がつくと、真っ白な空間に立っていました。
「はじめまして、私は神様です」
「神様...? ああ...私、死んじゃったんですね...」
可愛らしい神様と出会い、自分が死んだことを悟ります。
「はい。あなたは若くして、過労死してしまいました」
思い返せば、ずっと社畜だった人生。
悲しいような、でもどこか当たり前のような、不思議な気分でした。
「私はこれからどうなるんですか?」
「別の世界へ転生することになりますね」
「転生...ですか。アニメの中だけでしか聞いたことありませんけど...」
本当に、こんなことがあるんですね。
「あなたは次の世界で、どんな人生を送りたいですか?」
「そうですね...ゆっくり、ゆったり旅をしながら、自由気ままに暮らしたいです」
正直、わがままです。
でも、神様はそんな風には思っていないようで——
「なるほど! 他には?」
細かいところまで言いたい気持ちを抑えて、私は質問に答えます。
「可愛い顔で、若いまま...不老不死とか? まぁ、さすがに無理でしょうけど...」
「なるほどなるほど...他にもありますか?」
恐ろしいほどに心の広い神様。さすがですね。
さすがにこれ以上お願いするのもどうかと思ったので、
「これくらいで大丈夫です...」
と答えました。
「わかりました!」
その言葉とともに、まるで転生するかのように白い光に包まれ、私は眠りにつきました。
...まぁ、実際に転生するんですけど。
そう思いながら目を覚ますと——
「...あれ?」
なぜか、見慣れた元の世界が目の前に広がっていました。
けれど、体は大学生くらいの若さになっていて、顔立ちも可愛らしくなっていました。
そして、傍らには魔法を使うための棒状の道具と、ほうき、そして魔導書。
そう——
神様は能力や道具をしっかり付与したあと、うっかり元の世界に送り返してしまったのです。
「てへッ☆」
あの人、本当に神様なんでしょうか...?
つづく...かも?