新たな旅立ち
「さて、俺の話はこのくらいにして、これからの事を考えよう」
「そうだった!あの声の人に、魔物はもう怖くない、って伝えないと!」
「なら、今度は俺と一緒に旅に出ないか?」
「セトさんと…?」
「俺も現魔王として、その誤解をとく役目がある。次の魔王の為にも、だ」
「王様の仕事は?」
「安心しろ、信頼できる時期魔王候補が既にいるから」
「それって、カナリさん?」
「あの男なら、信用できる。何よりリリカの息子だからな」
カナリさんか。
彼なら、セトさんが信頼するのも分かる。
「明日、カナリに掛け合ってみよう」
でも、急にそんな事言われたら、多分カナリさん困るだろうな。
そう思って僕は、こっそりと心の中でカナリさんに謝った。
「…そういう事なら、仕方ないですけど」
カナリさんは、溜め息混じりにそう言った。
「そうか、カナリならそう言ってくれると思った」
「セトさんの為じゃないですよ、ミーナの為です」
「え、僕の…?」
「俺のひいじいちゃんは、帰る方法を見つけられなかったから」
「あ…」
「母さんが言ってた。ひいじいちゃんは本当は元の世界に帰りたがってたんだって」
だから、とカナリさんは僕の頭を撫でながら言った。
「帰りたい、と少しでも思うなら、帰るべきだと俺は思う」
まあ、方法が見つかればだけど、とカナリさんは笑った。
「とりあえず、街の事は任されました」
「ありがとう、助かる」
カナリさんへの引き継ぎが終わり、街を出たのはそれから三ヶ月後のことだった。