セトさんの過去
魔王は、かつてこの世界で意味嫌われる存在だった。
魔物を従えて、それは沢山の魔物以外の種族を虐殺していたらしい。
でも、それはもう100年以上前の話だ。
「俺の父は、そんな魔王だった。恐怖であらゆる存在を支配して、沢山罪のない者を殺していた。殺されても、仕方のない存在だったと思う」
セトさんは、泣き止んだ僕を部屋に入れてくれた。
「でも、父の部下…魔王の手下は、本当はそんな事はしたくなかったんだ」
「だから…みんなは他の種族を殺さないの?」
剣闘士として共に切磋琢磨する仲間も、知り合った人も、誰も彼も。
人間の僕を珍しがりはしても、殺すなんて事はしなかった。
「そうだ。父が勇者…リリカさんのお祖父さんに殺された後、その勇者が色々と取り合ってくれたんだ」
最初は、当然世間は許してくれなかった。
セトさんも、最初の頃は散々ひどい事を言われたようだ。
しかし、セトさんや魔王の部下達の事情を知った時、間に入ってくれた種族がいた。
「それが、ドラゴンだった。かつて彼らの先祖も、魔王に脅されていた過去があった」
ドラゴン達が間に入ってくれたお陰で、魔物達は少しずつだが世間に受け入れられるようになった。
そして、前魔王の死から100年がたった今。
魔物は、この魔物の街で、他の種族と同じように生活している。